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初めてボードゲームをつくる時の、クイック&クオリティなテクニック

ボードゲームがテレビで連日紹介されたり、小売店さんでの扱いが増えるようになったりして、遊ぶ人が増えてきたように思います。

そしてボードゲームの特徴なのですが、遊ぶ人が増えるのに伴い、作りたい人も増えているようです。

たとえば2年くらい前に国内のボードゲームのクラウドファンディングの状況を調べたことがあるのですが、当時はまったく状況が違いました。今は特にkickstarterの伸びがすさまじいですね。比較すると合計金額はざっくり3〜4倍にはなっているんじゃないでしょうか。

ただ、クラファンにまで漕ぎ着けているような人は問題ないと思うのですが、ボードゲームをつくろうかなと考えた人の中には途中でプロジェクトが凍結するか、延々と終わらないようになっている方もいるようです。

多くの理由はおそらく、初めてコンテンツをつくるときにありがちな「いきなり大作を作りたくなる病」ではないでしょうか。

僕も最初にボードゲームを作りあげるまでに1年くらいかかってしまったのですが、そんなに時間かける必要は絶対になかったです。「ボードゲームが好き」から始まっているだけに、色々とこだわりを入れたくなっちゃうんですよね。でもボードゲームに限らないですが、さっさと完成させて、そこで得た教訓を次のプロダクトに生かす方が結果的にいいと思います。

なので本noteでは、それに対する処方箋として、初めてボードゲームを作る人のための、クイック&クオリティなテクニックをご紹介します。

「得意」×「パクリ」でつくろう

結論から言うと、自分が得意なことの知識や経験をテーマにし、既存ゲームのパクリと掛け合わせてゲームをつくります。これがクイックに作れてクオリティも担保され、ついでにローコストなゲーム開発のテクニックです。

なぜ得意なことがいいのか。得意なことなら調査するコストが低いですし、勘所もつかめています。ゲーム作りは論文を書くのに似ていますが、いわば参考文献探しからやらなくて済みます。

また、得意なことなら、それについて他の人に話したり伝えたい気持ちも自然ともてると思います。ボードゲームはメディアですから、つくるからにはメッセージを込めるもの。それが見つけやすいのは自分が慣れ親しんでいるジャンルでしょう。

そして、なぜパクリがいいのか。

あ、ちなみにパクリと言っても著作権を侵害したり、仁義に反するようなアイデアの盗用を推奨しているわけではありません。インスパイア、オマージュ、四字熟語なら「換骨奪胎」です。

例を言うなら『人生ゲーム』ですね。あれを「すごろくのシステムの盗用だ!」って言う人はいないと思います。誰もがあの作品を、すごろくのシステムにスパイスを加えたれっきとしたオリジナルなゲームだと認識していることでしょう。それをやろうぜっていうことです。

話を戻しましょう。パクリが良いのは検証コストが低いことです。たとえば、すごろくのシステムがゲームとして成立するかを検証する必要はありません。そのままで誰もが楽しめるかどうかはともかくとして、穴の少なさは保証されています。ゲーム開発のスタート地点としては圧倒的なアドバンテージです。

加えて、遊び手の学習コストが低いのも良いところ。大抵の人とすごろくを遊ぶときに、長々とルール説明をする必要はありません。ボードを見せて、コマを決めたら、サイコロを手渡すだけでよいはずです。独自の説明を要するゲームは、作り手にとっても工夫した説明書をつくる必要のあるゲームになるので、最初は大変だと思います。

あと、検証コストの低さとも似ていますが、先行研究が見つけやすいのもメリットです。完全に新しいものを作ろうとすると足場の設計を作るところからやらないといけませんが、他の人がどういう風に足場を作っているかを見てから足場をつくれるのはクオリティに直結します。巨人の肩に乗るべきは、投資でもゲーム作りでも同じなのです。

「得意」と言っても、専門家でなくてもいい

本当に大丈夫かよって思うかもしれませんが、僕がバンソウから出版したゲームである『トポロメモリー』はこの方法で作りました。

『トポロメモリー』は科学雑誌の『Newton』を読んで、数学のトポロジーについて知ったのがきっかけで作り始めたゲームです。だから僕は別にトポロジーの専門家でもないし、なんなら理系ですらありません。

でもトポロジーって、一般的にはほぼ知られていない概念なんですよね。なので『Newton』をちゃんと読むだけで、おそらく国内で100万番目くらいには詳しくなったんじゃないでしょうか。100万番目というと全然得意じゃないみたいですが、日本ランキングを作ったら下に1億人以上いる計算になります。これなら「得意」と言ってもいいような気がしませんか?

「パクリ」でも、あとから自動でオリジナリティはついてくる

そして「得意」になったトポロジーの概念と、昔からある神経衰弱やカルタを「パクって」合わせて作ったのが『トポロメモリー』です。ちなみに発売から3年近く経ちましたが、誰にも「カルタのパクリだ!」とかお叱りを受けたことはないまま、好評発売中です。

なぜパクったのにパクリと言われないかについては、新しい体験を提供できているからだと思います。既存のゲームにトポロジーが足されて化学反応が起こり、オリジナルなまったく別の体験ができるゲームになっています。

ちなみにこれは特別なことではなく、得意なテーマを十分に深掘りし、パクろうとしたゲームに敬意を払って換骨奪胎すれば自動発生する現象です。逆に、それらが足りないと化学反応が起こらず、よくてパクリ、悪くて参照元の劣化コピーなゲームになってしまいます。料理でも、美味しい+美味しいならすごく美味しいはずだという雑な考えで、ステーキの上にショートケーキを乗せたら美味しくないですよね。味の研究が必要なのです。

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以上です。よきスタートダッシュのきっかけになれば幸いです。やる気になった時の、ゲームのルールの細かい作り方やブラッシュアップ方法はこちらをどうぞ。

そして、これらを踏まえなくても良いんですが、初めてゲームを作るときは、まず「完成」させるのが大事だと思います。いつまでも完成しない大作よりも、完成している小作の方が100億倍立派です。お互い頑張りましょう。

ちなみに、一緒につくってほしい方や法人の方は、下記からご連絡ください。相談だけ〜企画から製造まで、幅広くお手伝いできます。


ナイスプレー!