ブルブル

 　私のケータイは、ブルブルが弱い。

　基本的にケータイは尻のポケットに入れているのだが、先ほどもブルブルが弱いせいで着信に気がつかなかった。前に使っていたNokiaのケータイなら気付いたのだが、シャープのケータイは上品すぎるのである。

　私は、こちらから電話するのが嫌いだから、これはちょっと困るのだ。

　こちらから電話して、相手がオシッコの途中で「うわっ」となってズボンが尿まみれになるのではないか。彼氏とキスをする間際で私の電話がきっかけでキスが流れてしまい、そのまま別れることになってしまうのではないか。

　などと考えると、こちらから電話などかけられないのだ。配慮しすぎる男のランキング7位である。

　尻のポケットだからいけないのかな。確かに尻は鈍感だからな。

　そう考えて、ジーンズの前ポケットに入れることにした。女性の方はご存じないだろうが、ジーンズの前部奥深くにはチンコという器官が隠されている。尻よりも敏感な男性独自の器官である。

　試しにブルブルさせてみると、確かに、尻よりかは感じ取りやすいようだ。やはりチンコの方が敏感なことは間違いない。うーむ、なんか、ムズムズしてきたぞ。もう一度、ブルブルさせてみるか。

　5回ほど続けてブルブルさせたあと、私は、おもむろにズボンを脱ぎ、続いてパンツも脱ぎ捨てた。そして、もう一度ズボンをはく。つまりパンツははいていない状態だ。

　ブルブルさせてみると、パンツの生地がない分、余計にブルブルを感じ取ることができた。これなら、外で着信しても気がつくにちがいない。

　しかし、困ったな。これでは、パンツがはけないではないか。尿漏れが直接ジーンズに付着することになるぞ。「なんか、あの人、最近オシッコくさいよね」などと言われそうな気がする。

　あっ、そうか。

　ふいにひらめいて、もう一度、ズボンを脱いで、パンツをはき直した。ズボンをはき、中に手を突っ込んで、パンツのスリットからチンコを取り出す。ズボンの中でチンコがはみ出している状態だ。

　ブルブルを試してみると、しっかりとチンコに届く。オシッコをした直後は、きちんと収納しておけばいいのだ。尿漏れの心配がなくなった時点で、またチンコをはみ出させればいい。これにて一件落着。

　早く誰か電話をかけてこないかな、と私は考えたのだが、ふと、いつもいちゃもんを付けてくるメーカーの担当者を思い浮かべてしまい、いやいやいやと首を激しく振る。

　あんなオッサンがかけてきた電話で、私のチンコがブルブルされると想像しただけで、背筋がブルブルと震えた。こちらは、悪寒である。これは、バッドアイデアだった。史上最低のアイデアだったと言っても過言ではない。

　私は、ズボンの中に手を突っ込み、チンコをしっかりとパンツの中に納めた。同時にケータイを前ポケットから取り出し、いつもの尻ポケットに突っ込む。

　下手の考え休むに似たり、Poor thinking is futile。

　ブルブルの強い機種に替えるべし、と私は強く思った。