Onward/2分の1の魔法に浄化された話

年始に母と映画館に行ったとき、予告編で流れてた「2分の1の魔法」が気になってたので観に行きました。

(予告編→https://youtu.be/tvDExzpfNSo)

感想を一言にまとめるとしたら、魂が浄化されたような心地。

本編を見てる途中も涙がほろっと流れたけど、エンドロール中もアイスティー飲みながら泣きました。

「2分の1の魔法」が泣けるよって話ではなく、気持ちが良い意味で荒ぶったので、映画を見て思ったことをまとめます。

ネタバレはしないようにしたいけど、内容的にどうしてもしてしまうので、ネタバレ嫌な人はこのページ閉じていただけると幸いです。

前置き

今社会人になって2年めなんですが、社会人1年めの6月に父を癌で亡くしました。

母に言わせると似たもの同士とのことですが、モラハラと亭主関白が凄かった父のことが嫌いだったので、情けないですが、最後ににこやかに話したのはいつかも、どんな話をしたのかも覚えてません。

父が亡くなったのは新入社員研修中だったんですが、その後東京へ配属になったので、死後の手続きを母と協力してやりつつ、地元や学生生活を過ごした関西を離れて1人東京で踏ん張ってきました。

社会人として働くようになって、はじめて父の凄さとか、そういうものを実感として得られるようになってきたアホな娘なんですが、そういう経緯で予告編を見たときからずっと気になってたんですよね。

観てみた(※ネタバレします)

ざっくりあらすじを書いておくと、気弱な弟と豪快な兄が、死んでしまったお父さんを復活させようとしたら下半身しか復活しなかったので、頑張ってお父さんを全身復活させようとする話です。

気弱な弟・イアンは自分が生まれる前にお父さんが亡くなっているので思い出がないことをさみしく思ってます。この子、気弱だけど本当に良い子なんだな…

途中、この子が立派過ぎてわたしは泣きました。

で、イアンの兄で豪快なバーリー。映画中のコミカルパートは大体彼なんですが、この子はお父さんの最期に、病室でたくさんの管に繋がれたお父さんを見て、自分が知ってるお父さんじゃないみたいで、怖くてお別れを言えなかったという後悔があるんですよね。

それまでは、あまりにも明るいので何かあるキャラだなと思いつつ、バーリーにイライラしてたんですが、このエピソードが来たときに一気に感情移入しました。

父ではないんですが、父が亡くなる数年前に、父方の祖母が亡くなったとき、棺に入れてあげる前に親族で体を拭いてあげる機会があったんですよね。

そのとき、冷たくなった祖母を触ってしまうと、生前よく触っていた祖母のほっぺの感触とか、祖母のあったかさが無いのを実感してしまうのが嫌で体を拭けなかったんです。それで父に怒られましたが。

身近な人の死は初めてではなかったけど、初めて身近な人の死が目の前にあるのを感じて、一言でまとめてしまえば、その人の死を理屈じゃなく現実として理解するのが怖かったんですよね。

そんなことを思い出したので、夕暮れ直前のイアンとバーリーの会話にグッと来たし、イアンが立派な子で泣いたし、バーリーはちゃんとお別れができて良かったなって思ってまた泣きました。

あと、もうひとつこの映画でぐっときたのは、作中でみんなが本来の自分を見つけていくところ〜エンドロールで流れるスキマスイッチの全力少年への流れです。

さっきあらすじに入れ忘れてしまったんですが、この話は、かつては魔法が使われていたけど、科学の力に頼る方が楽だから今はほとんど魔法が使われてない世界で展開していきます。

かつては有名な戦士?として知られたコーリーも、今や税金の支払いのために伝説の剣を質屋にいれたりしていて、魔法や冒険譚を信じている人なんてそれこそ変わり者という感じ。

本来はすごい速さで走れるケンタウロスも自分の足じゃなくて車の方が早いって言っちゃう世の中なんですが、兄弟がしっちゃかめっちゃか頑張る中で、徐々にみんな自分を取り戻していく描写があります。

主人公なのでイアンの変化が1番丁寧に描かれてますが、ついつい自分に重ねてしまってその変化にぐっときました。

イアンは、まだまだお子様(16歳だからしゃーない)なところもあるけど、現実を見て、無茶なことはそもそも選択肢として考えないし、挑戦してみようと思い立っても無謀だと思ったらすぐに辞めてしまうような、大人になるにつれて諦めを覚えて、「自分にできるわけがない」というフィルターをかけて物事を見ている感じのキャラクターです。

そんなん言ってる私も、まだまだ精神的にはお子様ですが、社会人になって父を亡くして、社会的にも心理的にも大人にならなきゃって精一杯で、夢とか挑戦とかそんなこと言ってらんないと思って肩肘張って過ごしてきました。子どものときは妖精やネバーランドの存在を信じてた夢見る夢子ちゃんだったのに。

そうして働く中で、同い年で院生の元彼がやたら夢みがちなことや能天気なことを言うのに疲れて別れたりもしつつ(今思えば彼なりに支えてくれようとしてたんだろうと思いますが)、自分のことを仕事しかしてないのに仕事もできないつまんない奴だなぁと思ってました。

でも、イアンが魔法を徐々に習得していく中で自信を身につけていく様子や、新しいことへ挑戦する様子を見ていたら、久しぶりに冷えてた気持ちが温度を持って、子どものときみたいな前向きな気持ちになれました。(影響されやすくて自分でも笑いますが前向きになれるのはきっと良いこと)

この出来事がなかったら、イアンは何か別のことが起こるまでずっと自信を身につけることなくおどおどして高校生活を過ごしていたんだろうなぁと思うと、この出来事はお父さんからのすごく素敵な誕生日プレゼントだったなぁ、なんてことも思ったりして。よかったなぁイアン。

そんなことを考えてたら、エンドロールの全力少年が流れてきて、歌詞を見た瞬間ビビッときました。

はじめて全力少年の曲の歌詞を認識したんですが、

1番の最初で

躓いて、転んでたら置いてかれんだ

のところが、2番は

遊ぶこと忘れてたら老いて枯れんだ

に変わってるんですね。

このままでいたら歌詞通り枯れてしまうと、はっとさせられると同時に、歌詞が思ってた以上にこの映画に合ってて、この曲を選んでくれてありがとう!と心の中で拝みました。

終わりに

自分語りも入れてたら長くなってしまいましたが、この映画観に行ってよかったです。

父が亡くなって1年と2ヶ月が過ぎようとしていますが、正直、父への感情にまだ整理がついてませんでした。

父のこと嫌いで、甘えたい気持ちや頼りたい気持ちもあるけど、似てるって言われるのも嫌で…という感じで、いろんな感情がぐちゃぐちゃになってさみしいとか悲しいとか言えなかった。

自分も働くようになって、こういうとき父だったらどうしてたんだろうとか、相談したいと思うことが多々あったので、生きてくれてたら歩み寄れたのかなぁなんて思う日もあったんですが、忙しなく過ごしてたら父のことを改めて考える機会も無くて。

けど、この映画を見てエンドロールが流れる中で父に対してのこんがらがった感情が多少整理された気がします。

多分次に父に会えるのは私が死んだときだけど、もし会えたらとりあえず小さいときみたいに抱きつきたいし、いろいろ話したいなぁとか考えて、凪いだ気持ちになりました。

良い休日でした。

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