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メリクリって言えなくて・・・第4話(全5話)

初執筆、ラス前です。熱がこもり少し拡大版です。まだ読んでいない方は今すぐ!
第1話はこちらから→https://note.com/zinjya_reinbow_/n/nc2353d1ca322
第2話はこちらから→https://note.com/zinjya_reinbow_/n/n12222baecf94
第3話はこちらから→https://note.com/zinjya_reinbow_/n/na713bcd8f50e

それでは。※この物語はフィクションです。


第4話 っぽくないクリスマス


彼は、露天風呂に浸かりながら考えていた。

このあと、何すべき?ご飯?それともまったり?
交際経験ゼロのパーフェクト童貞の彼にとっては大きなバグを引き起こしていた。
何が正解なのか。頭の回線が切れてしまいそうだった。

場所を変えよう。そう思いサウナへ向かった。
クリスマスなのにガッチリ体型のおじさまが多く、なんとむさ苦しいことか。
そんななかでじっと耐えること10分は過ぎただろうか。
水風呂に入ってボーッとし、いわゆる[ととのう]と呼ばれる極限リラックスモードに突入した。
頭で何も考えずにいたら、彼は何でもできる気がした。
まずは、食べながらだ。
話はそれからだ。
そう思い、浴場をあとにした。

風呂上がりの彼女と合流し、食事処へ向かった。
彼は、親子丼とイチゴパフェ。彼女は生ジョッキに焼き鳥と天丼を発注した。
「メリークリスマス!」ツイてない二人は、彼はウーロン茶で、彼女は生ビールで乾杯した。

いい飲みっぷりだ。普段飲まない彼だがそのぐらいはわかる。
それからというもの色々話すことが尽きず、結局1時間半ほどたっていた。
学生時代の行事や先生、生活のコトだけでなく、これまでのこと。今日あったことも速報のように愚痴あったりした。

少し酔った彼女は顔が赤く、色気があり、正直なんかエロい。
そして、不思議と彼女の魅力に改めて吸い込まれていきそうになる。
まるで、クリスマスツリーの中でも煌々と輝くオーナメントボールのように夢中になっていた。
このまま飲むとあの話が聞けなくなる。そう思った彼は、
「少し酔い覚ましのために外で歩かないか?」と聞いた。
彼女は、「え~めんどくさい」とまだ泥酔モードではないだが、少しテンションが上がっているようだ。
「あんなことになってクリスマスツリーやイルミネーションをしっかりとは見られてないだろ。」
「まぁ、それは~。でも寒いし・・・」
らちが明かなくなりそうだった。
しかし彼女は、「だったら屋上の足湯行かない?それだったらわざわざ出なくてもいいし。温泉あるし。それならいいけど?」といった。
折衷案を受けなきゃたぶん連れ出せない。そう考えた彼は「わかった。そうしよう。」と受け入れた。本当は、出たかったが。

屋上の足湯に向かうとカップルが多く、いちゃつきが厳しく見えるカップルも多くいた。
そのカップルは無視すると、みなとみらいの夜景や大観覧車の光の演出がきらめき、少し幻想的だった。
彼女とともに足湯につかると、足先から染み渡る感じがした。
「ふぅー」二人そろって声が出た。お互いに少し笑った。

楽しみつつ、ついに彼は覚悟を決めた。
「あのさ・・・一つ聞いてもいい?」
この言葉に彼女は、「いいよ~。どした。」と聞いてきた。
彼は一拍おいて「学生時代、ド陰キャだった自分に優しくしてくれたの?あと、やばい雰囲気が出てたかもしれないのに、どうしてファストフード店で声かけてくれたの?」と神妙に聞いた。
彼女は、彼の真剣な目に少し驚きつつもこう答えた。
「そりゃあ、幼馴染だもん。」
この言葉に続き、「正直、変わってるとは思ってたよ。だけど、幼稚園から知ってたし、たまに遊んだり中学でも同じ班で活動することもあったし。どういう性格かぐらいわかってるよ~」と彼女は酔いながらもしっかりとした口調で言った。
彼は、そう思ってたんだと思いながら、話を聞き続けた。
「それに、優しいじゃん。彼氏さ。ミスすることは多いけど何かに取り組むとか誰かを支えるとか、代わりに辱めを受けるとかさ。先陣を切る切り込み隊長になったり周りのためにいろんな事してくれるじゃない。でも、話や感情表現が下手でそういう風に見られっちゃってることもあるから~。一見さんにはなんだあいつ。とかパシれるって見られてるかもしんないねぇ。」
彼女の思いは伝わった。泣きそうになった。

彼は、少しこらえてモヤモヤしていたことをもう一つ問いかけようと思ったが、しつこく見られたらいやだしやめることにした。

そんな中、彼女が口を開いた。
「まだ話したりないなぁ。そうだ!彼って明日クリスマス本番って空いてる?もし空いてたら1日付き合ってくれない?質問に答えたお礼がてらに。」
「ちょっと待って。」女子からの声掛けに動揺する彼は冷静を装い予定を調べた。空いてる。
意を決して「空いてるからいいよ。」といった。
心中では、ぜひお願いしますと言わんばかりに土下座するほどだった。
「じゃあ決まりね!」とニーっと笑った。
あの高校時代の女神のようにハツラツな笑顔だった。
そして、館内に戻り、二人とも休憩室のリクライニングソファーで横になった。

余談だが、彼は、ドキドキして一睡もできずに夜を明けたそうだ。


最終話に続く・・・

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