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乱入者。

先日部屋の中で、「ぶぅ~ん」という音が突然聞こえてきた。
何の音かは、よくわからない。
ただ、気になる音。
気になってしょうがない音。

音のする方をみてみた。
窓とロールカーテンの間から、音が聞こえてくる。
音から何となく、音の正体が推測できた。
陽の光からみえる影から、音の正体がわかった。

蜂、それもスズメバチのような影。

ロールカーテンを巻くと、そこには一匹の蜂がいた。
蜂がいることを確認して、ロールカーテンを降ろした。
そう、閉じ込めた(つもり)。

蜂は窓とカーテンの狭間で飛んでいる。
どうにかして、外の世界に出そうと悪戦苦闘。
うまく出ていってくれないので、イラッときたので、新聞紙で叩こうと。

殺すほどの強さで叩かなかったので、叩いた後すぐに立ち上がった。
ただし、飛び方は弱っている。
何とかして、逃がしたい。
窓を開けたり閉めたり、新聞紙でつついたりして、
  やっと外の世界に戻っていってくれた。

その翌日、雨戸を閉めた後にまた羽音がした。
照明にぶつかる一匹の蜂がいた。
思わず、昨日の蜂かと思ったが、そんなはずはない。
蜂の恩返しは、少し怖い気がする。

部屋中を飛び回っている。
昨日の蜂の目は怖くはなかったが、今日の蜂の目は何だか怖い。
攻撃的な目をしている。

今回は、逃がすのは難しい。
新聞紙ではなく、クリファイル(中に資料が入っている)を手に取った。
叩いたが、風圧でうまくいなされた。
壁に止まったのでゆっくり近づいて、フルスイング。
見事、第一ラウンドKO勝ち。

それにしてもどこから入ってきたのか、本当に不思議だ。

窓の外を恐る恐るみたが、蜂の巣らしきものはいない。
どこからか、偶然飛んできたのかもしれない。
その後、蜂はやって来ない。

ふと、遠い日のあることを思い出した。
昔、部屋にある動物(?)が乱入してきたがあった。

いつだっただろうか。
仕事から家に帰って部屋に入り、電気をつけると目の前に何か飛ぶ姿が。
それも素早く、部屋を何度もクロスして飛ぶ姿。

止まった姿をみると、蝙蝠だった。

夏場の夕方、空をみると蝙蝠はよく飛んでいた。
最近は飛んでいる姿をあまり見かけない。
実家からほんの少し都会(京都市内)に引っ越しをしたからだろうか。

どこからやってくるかも、だいたいはわかっている。
京都は山に囲まれた盆地。
住んでいる地域は京都の西山に近い場所なので、山からやってくる。

2階の部屋の天井には、外から入ってきて蝙蝠が飛ぶ音が昔からしていた。
どうやって部屋に入ってきたのかもだいたいはわかっている。

今すべきは、部屋で飛び回っている蝙蝠の退治。

飛ぶ姿を観察すると、一定のリズムとコースで飛んでいることに気づいた。
予測しやすい、行動パターン。
部屋にはテニス(軟式)のラケットがある。
スカッシュのラケットもあるのに、テニスの使わなくなったラケットを。
ラケットを持って、スマッシュの格好をして蝙蝠を待った。

そして「ここ!」というところで、スマッシュ一閃。
見事、クリーンヒットして倒した。

恐らく正面だとかわされていたと思う。
横からだったから、ヒットした。

蝙蝠の顔をみると、実はかわいい。
ネズミのような目をしている。
突然やってきた乱入者に対する恐れから、蝙蝠=悪者と思ってしまった。

そんなことはどうでもいい、問題はここから。
倒した蝙蝠をどう処分するかだ。

1階に降りて、親に話をした。
すると、父がおもむろにビニール袋一枚もって部屋に入ってきた。
ビニール手袋の要領で袋の中に手をいれて、何事もなく蝙蝠を掴んだ。
掴んだビニール袋をひっくり返して、そのまま処分した。

ちなみに父は屋根裏で作業している時に見つけた蝙蝠を手掴みしたらしい。
勇ましい父も、もう80歳を超えている。

蝙蝠と蜂、ともに予期せぬ望まない乱入者。

ある世界から別の世界に入ると、乱入者になってしまう。
自然界であれば撃退されることはなかったのに、
  人間界にやってきてしまったばかりに、人間に撃退された。

今世界観は、価値観の世界へと変わった。
価値観が違うだけで、乱入者として撃退される。

因果応報。
明日は我が身。

くれぐれも撃退されないようにしたい。
いやそれよりも、「ようこそ」と迎えられる世界であってほしい。

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