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【解説】早稲田大学理工数学2024[I]

問題

円$${C : x^2+(y-1)^2=1}$$に接する直線で,$${x}$$切片,$${y}$$切片がともに正であるものを$${l}$$とする。$${C}$$と$${l}$$で囲まれた部分の面積を$${S}$$,$${C}$$と$${l}$$と$${y}$$軸により囲まれた部分の面積を$${T}$$とする。$${S+T}$$が最小となるとき,$${S-T}$$の値を求めよ。

解説

まずは図を書いて状況を整理しましょう。接点を$${\rm{P}}$$、$${l}$$と$${x}$$軸の交点を$${\rm{Q}}$$、$${l}$$と$${y}$$軸の交点を$${\rm{R}}$$とおくと、$${S, T}$$は以下の図で示した部分になります。「接線$${l}$$の両切片が正」という条件から、$${\rm{P}}$$が動ける範囲は図の赤線上となります。また、図のように角度$${\theta}$$を導入すると$${\rm{P}}$$の座標を1変数のみで$${(\cos\theta, \sin\theta+1)}$$と表すことができ、$${\theta}$$の取りうる値の範囲は$${0<\theta<\pi/2}$$となります。

さて、求めるものは$${S+T}$$が最小となるときの$${S-T}$$です。以下のステップで計算していけば求められるはずです。

  1. $${S+T}$$を$${\theta}$$の関数で表す

  2. $${S+T}$$が最小となる$${\theta}$$を求める

  3. 求めた$${\theta}$$における$${S-T}$$を求める

$${S+T}$$は三角形$${\rm{OQR}}$$の面積から円$${C}$$の面積の半分(一定値)を引いたものと等しいです。三角形$${\rm{OQR}}$$の面積は$${l}$$の両切片が分かれば求められます。接線$${l}$$の方程式は、円の接線の公式より

$$
(\cos\theta)x + (\sin\theta+1-1)(y-1) = 1
$$

と書けるから、$${x}$$切片は$${(1+\sin\theta)/\cos\theta}$$、$${y}$$切片は$${1+1/\sin\theta}$$となります。したがって

$$
S+T = \frac{1}{2}\cdot\frac{(1+\sin\theta)}{\cos\theta}\cdot\frac{1+\sin\theta}{\sin\theta} - \frac{\pi}{2}\ (=f(\theta)とおく)
$$

となります。

次に$${0<\theta<\pi/2}$$の範囲で$${f(\theta)}$$が最小となる$${\theta}$$を求めます。$${f(\theta)}$$を微分すると

$$
\begin{array}{lll}
f'(\theta) &=& \cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{2(1+\sin\theta)\cos\theta\cdot\cos\theta\sin\theta - (1+\sin\theta)^2(\cos^2\theta-\sin^2\theta)}{(\cos\theta\sin\theta)^2}\\
&=& \cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{(1+\sin\theta)\{2(1-\sin^2\theta)\sin\theta - (1+\sin\theta)(1-2\sin^2\theta)\}}{(\cos\theta\sin\theta)^2}\\
&=& \cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{(1+\sin\theta)(2\sin^2\theta + \sin\theta - 1)}{(\cos\theta\sin\theta)^2}\\
&=& \cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{(1+\sin\theta)^2(2\sin\theta - 1)}{(\cos\theta\sin\theta)^2}
\end{array}
$$

となり、増減表から、$${f(\theta)}$$が最小となるのは$${\theta=\pi/6}$$であることが分かります。

最後に、$${\theta=\pi/6}$$のときの$${S-T}$$を求めます。$${S+T}$$が既知なので、$${S, T}$$の一方のみが分かればよいです($${\because S-T=S+T-2T=-(S+T)+2S}$$)。計算しやすい$${T}$$を求めると、図より

$$
T = \frac{1}{2}\cdot1\cdot\sqrt{3} - \frac{\pi/3}{2\pi}\cdot\pi = \frac{\sqrt{3}}{2} - \frac{\pi}{6}
$$

となります。

以上より、求める値は

$$
S-T = (S+T) - 2T = \frac{3\sqrt{3}}{2}-\frac{\pi}{2} - 2\left(\frac{\sqrt{3}}{2} - \frac{\pi}{6}\right) = \bm{\frac{\sqrt{3}}{2} -\frac{\pi}{6}}
$$

となります。

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