#45.視床神経膠腫におけるH3K27M変異

脳腫瘍には大きく「原発性脳腫瘍」「転移性脳腫瘍」と分かれる。

<原発性脳腫瘍>種類別発症は以下の通り。

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また<転移性脳腫瘍>については以下の通り。

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「原発性脳腫瘍」患者は脊髄以外への「転移」は聞かないが、「転移性脳腫瘍」でいうと、特に「肺がん」患者は「脳」への転移の可能性がある。またこれは始めて聞いたのだが、意外にも「乳がん」や「大腸がん」なども「脳」への転移の可能性があるようだ。

また脳腫瘍は小児にも発生する。

<主な小児脳腫瘍>
・神経膠腫(しんけいこうしゅ)…神経膠細胞(しんけいこうさいぼう:脳神経細胞を結合し支える役割を持つ細胞)で発生する腫瘍
・胚細胞腫瘍(はいさいぼうしゅよう)…脳内の原始胚細胞(胎児期のときに内臓に分化することのできる能力を持つ細胞)から発生する腫瘍
・髄芽腫(ずいがしゅ)…小脳の中央部に発生する腫瘍
・頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)…下垂体と視神経近くに発生する腫瘍
・上衣腫(じょういしゅ)…上衣細胞(脳室の壁を形成している細胞)から発生する腫瘍

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私の妻の場合、診断内容が「びまん性正中グリオーマ(diffuse midline glioma)H3K27M変異あり)」、原発性脳腫瘍で病変部位が視床下部。

脳幹部に発生する方も多いそうだが、視床や脊髄といった中枢神経系の正中部に発生した神経膠腫は、少なからずH3K27M変異があるようだ。

発症年齢は、脳幹部はDIPGに代表されるように小児に多いのに対し、視床神経膠腫は若年成人に変異が多く認められる。

視床神経膠腫の中でもH3K27M変異を持つものは、H3K27M 変異をもつDIPGと性質が似通っている。ただ視床神経膠腫の症例数がそもそも少なく、まだ十分な統計的な検討が出来ていないことで、そもそもH3K27M変異が予後にどういった影響を与えるのかが分からない。

ちなみに毛様細胞性星細胞腫などの低悪性度の脳腫瘍にもH3K27M変異が認められた事もあり、びまん性神経膠腫以外の広い範囲の脳腫瘍にも、この変異を認めうることがあるようだ。

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神経膠腫(グリオーマ)と診断され、病変部位によって摘出手術ができない方も多いと思う。

そういった方の治療の選択肢としては

(1)放射線治療
(2)化学療法

を検討すると思う。

放射線治療は1番効果の期待できる治療法ではないだろうか。腫瘍の縮小や進行が止まるなどの一定の効果が出る人がいると思う。但し照射できる絶対量は決まっているので「同じ箇所に何度も照射はできない」。

となると中長期的には化学療法を行っていくと思う。ただ「がん細胞」が中長期的な抗がん剤治療によって「治療抵抗性」がついてくると効果が期待できなくなってくる。

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今は様々な遺伝子変異に併せた、治療薬の開発が進んでいる

「H3K27M変異あり」ということが治療のキーワードとなり、「ONC201」の様な遺伝子標的薬が開発されてくることを期待している。



記事を通じて、少しでも誰かのお役に立てればと思っています。