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算数を反転授業でしたら、先生が楽をして子どもが伸びた話

算数は反転授業をすることで、先生が楽して子どもが伸びる。
今回は、その方法を紹介します。

反転授業(反転学習)とは、『家で予習し学校で復習する』という授業のスタイルです。

通常、学校で新しいことを学び、家庭で復習をしますが、それを反転し、家庭で新しいことを学び、学校で復習するというのが反転授業です。アメリカを中心に新しい授業の形として近年注目されている授業スタイルです。

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「家で予習なんて、子どもには無理でしょ?」
きっとそう思われる方もいるでしょう。私も以前は、そう思っていました。

学校で初めて学ぶことに価値があるとも。

しかし算数は、どうしても話し合い活動に時間がかかり、練習問題を解く時間が足りない…そんな悩みを長年抱えてきました。

また、散々時間をとって話し合い、数学的な学びにまで踏み込んだにもかかわらず、なかなか学力が定着しない。

そんな状況に、何とかしなくてはと改善策を探していたとろ、出会ったのが反転授業です。

今、私と同じような状況で悩んでいる方や、算数が苦手という子どもがいたら、ぜひ最後まで読んでいってください。

反転授業のメリット

それでは、まず予習させるメリットについてお話します。
メリットは5つあります。

1. 個々の学習ペースに合わせられる
2 . 授業が自分ごとに変わる
3 . 授業のモチベーションが高まる
4 . 学力が上がる
5 . 子どもと先生の負担を減らせる

①個々の学習ペースに合わせられる。

算数の授業の最大の悩みは、問題を解くスピードの個人差です。
速い子に合わせたら、遅い子はただ聞くだけの授業になり、遅い子に合わせたら浅い内容で終わってしまいます。

反転授業では、家で問題を解くので、じっくり時間を使って納得するまで問題と向き合うことができ、個々の学習ペースに合わせることができます。

②授業が自分ごとに変わる

予習をすることで、どこが分からないかが明確になります。

分からないことが明確になれば、自然と知りたい学びたいという意欲が湧き、授業が自分ごとに変わります。

③授業のモチベーションが高まる

一般的な授業では、先生が「今日の授業のめあては…」と進めることが多いと思いますが、反転授業では、分からなかった子の疑問がみんなの問いになります。

そうすることで、与えられた課題ではなく、自分たちで作った課題になり、学びの出発点が変わります。また、予習で分からなかった子は、自分の疑問が課題になるので、授業に貢献した気持ちになり、他の子は、仲間を助けるために意欲的に発表をするようになります。

分からない子を分かるようにさせよう。そのために授業をしようと、学びは自分たちで創るという意識に変わり、授業のモチベーショが向上します。

④学力が上がる

算数の学力を上げるためには、振り返りや反復練習が大事だと言われています。
学んだことを思い出し、類似問題を解くことで学力が向上します。
学んだことを思い出すことは『検索学習』と言われていますが、これをすることで、学んだことを脳が整理し、理解を深めます。
そしてその学びを使って、問題を練習することで、知識や考え方が定着します。

反転授業をすれば、この振り返りや練習時間を授業内にしっかりと確保してあげることができます。

⑤子どもと先生の負担を減らせる

宿題は、「計算ドリルの何ページ」というような課題を出すことが多いと思います。しかし、これは平等ではありません。なぜならできる子はすぐ終わるし、できない子は時間がかかるからです。できない子は考えても分からないし、時間がかかる。その結果、答えを見て宿題を済まして、ただ分からないを積み重ねるだけの結果になってしまうのではないでしょうか。

しかし、反転授業では、できる子もできない子も宿題にかける時間に大きな差は生まれません。できる子は伝わるようにまとめ、できない子はどこが分からないかを見つけます。そこに大きな時間の差はないのです。

そして、その両者が授業で活躍することが約束されているので、宿題をやってこないという児童も、答えを丸写しする児童もいなくなります。

また、復習問題を学校でするので、もし分からなければ、すぐに友だちに聞くことができ、先生が個別にフォローすることもできます。

一方、教師の負担も減ります。授業中は、子どもたちの教え合いがベースで授業が進み、ドリル課題は授業中にするので、宿題ノートを集めて点検したり、○つけをする必要もありません。

以上が予習をさせる5つのメリットです。

具体的な方法

ここからは、具体的な方法をお伝えします。

1.学習計画を立てる。

まず分数の筆算で知っていることを出し合い、既存知識を確認します。
次に教科書をパラパラッと見て、どんなことを学ぶのか見通しを持たせます。
そして、この単元で知りたいことをあげ、単元の計画を立てます。
計画を立てるのは、見通しを持たせるためです。
「先生、次の授業は何するの?」
こんな風に聞いてくる子どもをなくすためです。
行き当たりばったりで学ぶよりも、学びのルートを確認し、自分で現在地を確認できるようにすると、学びが自分ごとに変わっていきます。

2.予習の方法を伝える。

2時間目は、教科書の大題を予習で考えてくるように伝えます。

この時ポイントは、

①人に伝わるように図や式、考え方を書いてまとめること
②分からない時は、どこから分からないかをはっきりさせること
③自分一人で考え、親に教えてもらわないこと(教えてもらうと分かったつもりになるので…)

この3つです。
最初は、いきなり予習だと混乱するので、授業時間を使って予習をさせ、ノートの書き方の指導をしたり、子どもたちの質問に答えたりするとスムーズにいくと思います。

ノートには、
「めあて」「問題」「図」「式」「考え方」「授業の目標」を書かせています。
「授業の目標」は、自分の学び方についての目標です。
例えば、「分数の筆算の答えは求められるけど、なぜこの方法で求めれるのかをはっきりさせる。」「分からない子がいたら、図を使って分かりやすく伝える。」
などです。

3.自由に交流する

授業のスタートでは、自由交流(席を立って)から始めます。

この交流をする目的は2つあります。
発表の自信を持たせるためと、簡単な間違いに気づかせるためです。

そうすることで、授業のテンポが上がります。

4.みんなの問いをゴールにする

自由交流後は、分からないところを発表します。
ここでは分からない子が発表者として活躍します。

以下のような視点で、分からないをはっきりさせながら発表させます。

・問題の意味が分からない
・図の描き方が分からない
・式の作り方が分からない
・式の求め方が分からない
・式の式の理由や求め方が分からない
・理解できたけど、うまく説明することができない

こうすることで、どこでつまづいているのかがはっきりし、教える側がどこを説明したらいいかが具体的になります。

そして、ここで出された疑問を”みんなの問い”とします。
みんなの問いが複数ある場合は、どの順番で解決したら分かりやすいかを考えて番号をつけます。

※もし、全員が自由交流で理解し、みんなの問いが出ない場合は、全体で話し合うことは省略して、たしかめや復習をします。

5.分かる子が説明する

みんなの問いを出し合ったら、その課題を解決できる子が、家で予習をしてきたことを元に発表をつなげていきます。

分からない子が分かった時点(説明できるようになった時点)がゴールなので、みんなでそのゴールに向かって話し合っていきます。

分かる子は分かるように話し、分からない子は分かろうと聞きます。
つまり全員が自分ごととして授業に参加します。

6.分かった子は立つ

説明の内容が分かった子は立ちます。
立つことで、今の発表で何人に伝わったかが分かりやすくなります。
また、誰が分かっていないかもはっきりします。

7.座っている子に分かるようにつなげる

座っている子がいる場合は、立っている子が発表をつなげたり、座っている子が質問をしたりして進めます。

全員が立つまでこれを続けます。

8.全員立ったらペアで説明し合う

全員立ったら、全員が理解できているか、隣の子と説明しあい、できたら座ります。こうすることで、誰が十分に理解していて、誰がつまづいているのかを把握することもできます。うまく説明できない子には、個別にサポートをしています。

9.分かったことをまとめる

ペアに説明ができたら今日の学習で分かったことをノートやプリントにまとめます。まとめる時は、黒板は隠して、1週間後の自分が思い出せるように、解き方のポイントをまとめたり、授業では分からなかった疑問を書きます。

10.似た問題で確かめる

まとめが書けた後は、問題の数字を変えたり、似た問題にチャレンジします。
学んだことが使えるかを確かめます。

そして、残りの時間は、計算ドリルなどを使って、早くできるように復習します。

教師の支援

反転授業で先生がすることは、
①学習計画を配る
②予習の課題を伝える
③予習の仕方を教える
④みんなの問いの順番を決める
⑤子どもの発表のサポートをする
⑥深く考えてほしい時は、問いかける
⑦2つの考えが出た時は、比較させる
⑧大事な考え方やキーワードを板書して、可視化する
⑨復習でつまづいている子のサポートをする

このようなことを大事にしています。


最後に

反転授業に変えてから、子どもに今までの学習とどちらがいいかをアンケートをとると、毎回多くの子が反転授業を選んでいます。

「自分のペースで学べる」「みんなで解決できるのが楽しい」「分からないことがみんなの役に立つことが分かった」「うまく説明できて、みんなが立ってくれた時は嬉しい!」「答えを求めるだけじゃなくて、深いところまで考えるようになった」

このように算数の面白さや、自分たちで授業を創る楽しさに気づき始めました。
算数がきらいといた子も生き生きと授業に臨み、学力も上がりました。

そして、この反転授業を繰り返すと、授業が自走していきます。
「分からないことは出し合う」「分からないことは質問する」「分かりやすく伝える」このマインドが育つので、子どもたちだけで、問題を解決できるようになります。つまり、先生の出番が減りました。

もちろん、個別のサポートが必要な子はいますが、「教えなくちゃいけない」というプレッシャーや教えるための準備が減り、代わりに「一緒に楽しもう」と思えるようになり、気持ちが楽になりました。

先生が楽をして、子どもが伸びる反転授業
ぜひ、できるところから試してみてください。
きっと、授業の見え方が変わると思います。


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