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ペルソナ設定を授業に取り入れたらこうなった

今回は、ビジネスの世界でよく使われるペルソナ設定を授業で使ったらどうなるのかについて、実際に行った実践と共に紹介します。実際に使用したワークシートのダウンロードもつけていますので、よければ使ってください。

ペルソナとは、

ペルソナ(persona)とは、直訳すると「人格」という意味。商品やサービスを利用する典型的な顧客モデルのことで、マーケティングにおける概念です。

ペルソナとは、見込み客がどんな人なのか、架空の人間像を具体化していく作業です。たとえば、どんな悩みを持つ人なのか、好きなものは何か、友達は多いのか、性格や嗜好はどういうものかなど、具体的に個人像を描き出していきます。
(出典:同文館出版 「社員をホンキにさせるブランド構築法」)

この言葉は、スープ専門店「Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)」の成功によって一般の方にも広く知れ渡りました。
有名な話ですが、スープストックトーキョーは、秋野つゆという架空の人物を設定し、スープを作る時に、この秋野つゆさんが気にいるかどうかを社内で検討するそうです。そうすることで、ブレないブランドコンセプトが出来上がり、結果として多くの人に愛される店へと成長を遂げました。

出典:http://ikigoto.com/digitalmarketing/blog/post-6/

なぜ学校でペルソナ設定なのか

私は、これまでペルソナという言葉を全く知りませんでした。しかしTwitterを始めて、この言葉と出会って調べていくうちに、授業でも使えるんじゃないだろうかと考えるようになりました。その理由は、授業でもパフォーマンス課題など、ビジネスと同じように発信する課題を設定することがあるからです。また、グループでの共同作業の時に論点がずれたり、方向性がバラバラになったりすることがあるので、ペルソナを設定すれば、グループ全員のベクトルが同じ方向に向かい、より相手意識を持った成果物ができるのではないか、そう考え実践してみることにしました。

設定した場面

今回実践したのは、新聞づくりと動画づくりです。
新聞づくりは、国語の「新聞をつくろう」という単元、動画作りは、社会科の「県のPR動画をつくろう」という単元の中でペルソナ設定の時間を作りました。これ以外にも相手意識を持たせたい活動であれば、応用できると思います。

ここでは、新聞作りの実践を例に、ご紹介します。
まず、大まかな単元構成は以下の通りです。
1.  新聞の工夫を知る。学習計画を立てる。
2. 伝えたい内容を決める
(学校のこと、クラスで流行っていること、授業のこと、お手伝いのこと)など
3. ペルソナを設定する (その記事を読んで欲しい人を細かく設定する)
4. 記事の内容やレイアウトを考える
5. 資料を集める
6. 記事を書く
7. 別の班と読み合い、クリティカルな交流をする
8. 調整、清書、完成

多いように思いますが、全部で12時間で収まりました。

次にペルソナの設定の仕方ですが、

ペルソナ設定の仕方

ペルソナ設定について調べたところ、以下の方法で行うことが一般的のようです。

名前、年齢、性別、職業、家族構成、居住地域や、性格、価値観など、ペルソナのプロフィールを具体的に記述する
・プロフィールの印象から想像される、ペルソナの「好きなこと」「嫌いなこと」「不満、不安、不便に思うこと」「幸せを感じること」なども記述する
・プロフィールから想像されるペルソナの「典型的な平日」「典型的な休日」などのライフスタイルを記述しておくと、「ブランド体験」を作るときに、顧客との接点を設計しやすくなる
・プロフィールから想像されるペルソナの外見(身長、体型、髪型、服装など)も記述する。ペルソナのイメージに近いイラストや写真などを用意する(出典:同文館出版 「社員をホンキにさせるブランド構築法」)

そこで、これを児童にも分かりやすくするため次のようなワークシートを作成しました。
※ダウンロードファイル(パワポ)できますので、ご自由に使ってください。

今回の新聞のケースでは、架空というのが児童には難しさがあったので、知っている誰かをイメージして書かせました。一部の例ですが、

Aグループは
・2年生の山田太郎くん。
・性格はいつも元気でやんちゃ。
・釣りとゲームが好き。
・休日は近所の池で釣りをする。

Bグループは
・花子さんのお母さん
・性格は優しい。でも勉強のことになると厳しい。
・好きなものは、読書とお菓子。
・休日は、ドラマを見て過ごす。

と設定が出来あがりました。

ペルソナ設定の効果

ペルソナの効果は想像以上でした。その効果は大きく3つありました。

①成果物の出来
②話し合い活動の充実
③活動時間の短縮

まず①と②についてご説明します。
先ほどのAグループは、クラスの流行っていることを伝えたいというグループでした。記事の内容は、山田君に合わせて、釣りやゲームのことを中心に記事を構成しました。クラスで釣りが好きな子にインタビューをとり、よく釣れるスポットを紹介したり、おすすめの餌をランキング形式でまとめたりしていました。またゲームのアンケートをとり、クラスの人気のゲームを紹介するコーナーを作りました。ペルソナに合わせて、記事の内容やレイアウトを構成しました。また、山田くんは2年生なので難しい漢字にはルビをふったり簡単な言葉に置き換えたりする工夫も見られました。ペルソナ設定をすることで山田君が喜ぶ新聞を作り上げることができたのです。

次にBグループは学校のことを伝えたいというグループでした。学校のことといっても幅が広く、何をテーマにしたらいいか難しさがありますが、こちらの班もペルソナに合わせてどんなテーマにするのかの意見を交流していました。途中、ドッジボールのことを伝えたいという意見が出ましたが、ペルソナにとって必要な情報かどうかを吟味し、話し合いの結果、みんなの好きな教科や嫌いな教科。また嫌いな教科を好きにするコツ、おすすめのお菓子のコーナーや小学生がおすすめするドラマなどの内容を書くことに決まりました。こちらの班はお母さん向けの新聞なので、新聞のタイトルは『主婦が絶対に読むべき新聞』という面白いタイトルもつけていました。

このようにペルソナを設定することで、伝えたい相手が明らかになり、どのような内容にするのか、どのような言葉で表すのか、そのアプローチも明確になります。
また、グループ活動では、意見がバラバラになりやすく論点を失いがちですが、ペルソナという指標があることで、話し合いも建設的になります。
そして、新聞が完成した時の考察やクリティカルな交流の際にも、ペルソナの立場に立って、読んでみることで、より具体的な改善点を出し合うことができました。

そしてもう一つの効果の③時間の活動時間の短縮ですが、
こういう調べ学習とパフォーマンス課題がセットになった単元で、一番時間がかかるのは調べる時間です。必要な情報を素早く集めるという作業は子どもには難しく、インターネットを使うと無限に情報が出てくるので、どれが必要な情報かの判断するのは非常に困難なのです。今回はその時間も短縮できたと思います。それは、資料を探す際に、「これはペルソナに刺さる記事かな」そういう視点で資料を探すことで、必要のない情報は省くことができました。調べる際にも短時間で必要な情報を探すことができたのです。またグループでもペルソナという伝えたい相手のイメージが共有化されているので、持ち寄った記事のテーマがバラバラということも少なくなります。つまりグループでの”ズレ”がなくなるのです。そうすることで資料集めの時間を短縮できる。そういう効果もペルソナ設定にはありました。

終わりに

以上が、私がペルソナ設定を授業に取り入れて感じた効果です。
ビジネスで通用することは、教育にも通用する。またこういう経験を授業の中で行なっておくことで、子どもたちがビジネスの社会でチャレンジするときのアイデアや力になることと思います。今後も実践を重ねて、別のシーンでの活用の仕方などをまたご紹介できればと思っています。


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