贪得无厌ーーお金の使い道を見失った時点で、人は死ぬ
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【贪得无厌】
ピンイン：tān dé wú yàn
意味：欲深く、貪欲で飽くことを知らない様。
『お金の使い道を見失った時点で、人は死ぬ』
社員の中で、私ほどずけずけと上司に「もっと給料アップして下さい」と言う者は他にいないのではと思う。
もちろん、ただで給料を上げて欲しいなんて言わない。
「昇給にふさわしい能力や仕事ぶりがあれば教えて下さい、頑張って満たしますので」
と、意気込みをも添えての条件交渉だ。
ここまで大胆に昇給の要望を伝える部下は初めてのようで、面白いと思ったのか、失笑しつつも「なぜそこまで給料アップにこだわるんだい」と聞く上司。
私も答えには迷わない。
「お金が好きなので」と真っ直ぐ上司の目を見て返事をした。
自己実現や夢を叶える為に働く人もいると思うが、私が働く理由はほぼ「お金」一択だ。
なんて俗人な考えだと思われるかもしれないが、今、これを読んでいるほとんどの読者も私と同じように「金好き」なのではないだろうか。
自給自足を徹底した生活で無い限り、現代社会においては何をするにも金、金、金である。
食料品・日用品を手に入れるのも、
雨風をしのげる部屋で暮らすのも、
交通機関を利用するのも、
水・電気・ガスを使うのも。
……
強いて言うなら、自己実現するにも夢を叶えるのにも、結局はある程度のお金があってこその話だ。
故に、何がともあれお金は少しでも増やしたい、というのがほとんどの人の願いなのではないだろうか。
お金の為に、私たちは奮闘する。
汗水垂らして働く。
お偉いさんの前で惨めにヘコヘコし、理不尽な扱いを受けることもある。
そうでありながらも、
「もう少し頑張れば給料日だ」
「今我慢すれば昇格出来る、そうすれば昇給だ」
「良い業績をだして、ボーナスをたくさんもらいたい」
と、対価を得られる希望を胸に、必死に日々を過ごしている。
生きていく為に、家族を養う為に。
そして、十分なお金さえあれば、手に入れられるもの・叶えられる願いの為に。
中国語の諺にも、「钱不是万能的，但没有钱是万万不能的」という言葉がある。
金は万能ではないが、同時に無くてはならない存在でもある、という意味だ。
冒頭の話に戻ろう。
ともかく私は是非とも給料を上げて欲しいと上司に訴え、且つその理由は「お金が好きだから」と正直に（正直過ぎる程に）伝えた。
「なるほど、分かった」と頷く上司。
「どんな理由であれ、それがもっと上を目指せる動力となるのなら、別に俺からあーじゃこーじゃ言うことはない。お前が昇給昇格出来るよう工面しよう。だがこれだけは言っておくーー」
上司はぐっと姿勢を正し、力を込めて私に言った。
「『金の亡者』だけにはなるなよ」
「『金の亡者』……ですか」
単語自体は聞いたことがある。
お金というものは不可欠であると同時に、人生をめちゃくちゃにしてしまう程怖い威力を持っていることも知っている。
ただ、それが実際にどのような状態を指しているのか、これについての認識は曖昧だ。
なんとなく法を犯してまでもお金を追い続けてしまった人達をニュースで見かけたりするが、手段を選ばずにお金を欲することが「亡者」になったということだろうか。
「『金の亡者』とは、『お金』そのものしか見えない人のことだ」
私の戸惑いを見抜いたのか、上司が続けて説明を加えた。
「つまり、金を得ることによって実現したかった本来の目的を忘れてしまうこと。『お金』のその先が見えなくなってしまうことだ。
世の中にはそういう人がいっぱいいる。
お金を手に入れた、莫大な財産を手に入れた。けれども、もう二度と純粋な幸せを感じられなくなった、そんな人がな。
そういう人達のことを『金の亡者』と呼ぶのだ。
金好きでいて良い。けれど、その金で何を得たいのか、それを一度見直すことだ」
心が大きく揺さぶられ、私はしばらく口を開けなかった。
頭の中でぐるぐると考えるーー
「私が本当に手に入れたいものは何なのか」と。
見栄？
安定？
家族の幸せ？
贅沢な暮らし？
欲しいモノを買う為？
自分磨きに使う資金？
それとも……やはり「金」自体だったのか？
結局のところ、お金は「人に仕える」だけの存在に過ぎなかったのだ。
勘違いしてはいけない。
立場を逆転させた時点で、お金の使い道を見失った時点で、人は死ぬ。
📚「金の亡者」になりたくなければ、まずは自分にとっての本当の幸せを見つけること
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