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校正対局

40過ぎてからDTPをデザイン学校で習い、
たまたま近所の人がまちの観光マップを作るプロジェクトの一員で
「デザインを頼んだ人が出来なくなって困っている」と聞き、
勉強になるからと「させてください」と頼み込みこんだ。

それがきっかけで商工会の人から「どんな仕事がしたいの?」と聞かれ
「物語のある、読み応えのあるチラシが作りたい」と述べた。

すると
「うちで印刷して新聞に折りこんであげるから、
そのチラシつくりませんか」と新聞販売所所長さんから声をかけてもらった。

作り続けた結果、チラシを超えてミニコミ紙になっている。

取材と執筆、イラスト、編集とレイアウトを
ひとりでこなすからという理由でありがたいことに
たまに地域のメディアから取材をしてもらうことがあって、
それはテレビのこともあれば、ウェブに紙媒体のこともある。

ただ、たいていは「地域の主婦が…」で始まり、
プロとしては認めてもらってない感が歪めない。

ウェブや紙媒体の場合、たいてい校正原稿を見せてもらえる。
そこで愕然とすることがある。
自分の云ったことがこんなふうに伝わっていたのかと。
いいかげんにお調子者よろしく
しゃべってしまった罰よねと反省する。

ときに原稿を見せてもらうこともなく、
「アップしました!」といきなり連絡が来て
その画面を見ると愕然とすることもあるから
公に出る前に修正できることはひたすらありがたい。

さて、かえって自分が取材する側に立てば…である。
文学部出身でもなければ、出版社に勤務したこともなく
美大を出たわけでもなく、芸術家の師匠についたわけでもなく
こうして振り返れば、やはり「地域の主婦」なのかもしれない私の、
そして3000部ほどの発行部数の小さいミニコミ誌の取材に
地域の方々は、忙しい合間を縫って、時間を割いてくださる。

興味が先走ってまとまりのないバラバラの質問にも付き合ってくださる。
ちょっと言い訳を言わせてもらえば、
プライベートなら自分中心にしゃべりがちな私が、
取材では聴くことに集中出来るし、それが楽しい。
相手の方がどんどんしゃべりだしてくれる姿を見るのがほんと楽しい。
ライターの友人が「どうしてあの人からそんな話まで聞き出せたの??」
と不思議がるけど、きっと、私の楽しそうな顔を見て、
皆さんサービス精神を出してしゃべってくださるんだと思う。

取材が終わると、帰ってテープ起こしである。
私はメモるんだけど、聴くことに集中しだすと
メモ書きの手が止まるので、レコーダーは必須ツール。

テープ起こしをして、文章を起こす。
イラストとセリフの構成を考えて
丸二つで人物とし、セリフを配したラフ原稿を送る。
ここで人によっては〆切5日前とかに送り、
「勝手を言って申し訳ありませんが、
1,2日で校正をお願いします」と無理を言うことは少なからず。

そして、すぐOKということもあれば
真っ赤になって返ってくることもある。

すぐOKだとうれしい反面、「本当に読んでくれたのかな」と不安もちらり。
真っ赤に直され返ってくると
「解釈の仕方が浅かった、勉強不足だった」と反省もするけど、
そこに直してほしい理由もついていることも多く
どれだけの時間をかけて、読んで考え修正を依頼してくれたのかと思うと
また、こんな小さいミニコミ紙の記事にこれだけ真摯に
向き合ってくれたのかとジーンとくる。

あ、ゆっくりジーンときている場合ではなかった。
締切が迫っている。
ここからが校正と修正の応酬。

棋士の対局が頭に浮かんでくる。

打って打ち返されれば、もっといい表現をさがして戻す。
相手の想像以上の表現を返すことができれば
熱いメールが帰ってくる。これがたまらない。
しんどくても、これがあるからやめられない。

このやりとりがメールで1,2日での対局で済むこともあれば
会って再び取材からやり直し、原稿を起こすこともある。

「時間の許す限り、修正し続けます」と書き添える。
これって、あなたも付き合ってくださいと
突き付けているようなものよね

こうして原稿ができてきて、取材した方と
最後の修正をしあう時には、感想戦といったところか。

こんなやり方があってるのかわからないけれど
私にはこれしかできないし、しらない。

今月も、取材した方の完成原稿ができたのが締切1日前。
締め切り10分前まで全体の原稿を校正・修正し続け、
明日、発行を迎える。

大山崎ツム・グ・ハグVol.10 1月23日(木)発行


















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