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『罪の声』

◆あらすじ◆
35年前に起きた食品会社を標的とした脅迫事件は、警察やマスコミを翻弄し続け、日本中を巻き込んだ衝撃的な日本犯罪史上初の劇場型犯罪となった。しかし犯人グループは忽然と姿を消し、事件は解決することなくそのまま時効を迎えた。大日新聞記者の阿久津英士は文化部記者ながら、この"ギンガ・萬堂事件"を取り上げた特別企画班に入れられ、戸惑いつつも取材を重ねていく。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也は、父の遺品の中に古いカセットテープを発見し、自分の声が"ギン萬事件"で使われた脅迫テープの声と同じことに気づく。知らないうちに事件に関わってしまったことに罪悪感を抱きながらも、なぜ自分の声が使われたのか、その謎を解き明かすべく自ら事件を調べ始める曽根だったが…。




邦画で久しぶりに唸ったわ!(笑)
監督・土井裕泰×脚本・野木亜紀子はさすがだった。


全編を通し途切れることの無い緊張感と奥深いストーリー展開、更に厚みを加える役者陣の顔ぶれ。監督と同年代だからか昭和の怪道を作って来た様なキャスティングの渋さに嬉しさを感じた。

塩見省三、沼田獏、佐藤蛾次郎、木場勝己、橋本じゅん・・・・
そんでもって堀内正美が登場と来ちゃあもう体内の血が沸騰するわっ!声、渋過ぎ!
大好き過ぎるよ~~~ⓛⓞ(´♡ω♡`)ⓥⓔ

塩見省三もあの話し方…ゆっくり淡々とした中に迫力が満点!

いやもちろんね、この面子別に他のドラマや映画にも出てるよ、でもマジで嵌り過ぎなのよ役がさ!

この面子だけじゃない、細部に渡ってまで手抜き無しの顔ぶれ。
これ、監督相当拘ったんじゃないのか?と思わせるんだよね。

でさ、仕舞いにゃ梶芽衣子と宇崎竜童って・・・・・
何?曽根家だからなの?そうなの?だから『曽根崎心中』の2人なの?ってマジツッコんだよ内心ね。
その上、梶芽衣子はまるで大好きな『女囚サソリ』のイメージそのままっつーね・・・
絶対にそこ意識してるよね監督ちゃん。
夫の兄とのエピソードを話す姿なんて静かな中に確実に【青春時代の余熱】みたいなものを感じて人間の根底にある本質は歳を重ねても変わらないんだなって思わされたね。

監督完全に同じ時代を歩んで来てるから生きてきた背景が一緒いっしょ!
観てる映画やドラマも一緒じゃ~~~ん・・・ねっ。
だからこの面子に首ったけになっちまうのさ。
素敵❤︎

キャスティングで言えば今作で最も衝撃且つ息を呑んだのはこのストーリーの最も重要な主人公と言ってもイイ生島聡一郎を演じた宇野祥平じゃないかな?

この事件の陰で一番影響を受け人生を狂わされた少年の成長した姿・・・登場した瞬間、彼の人生が如何に絶望的だったかが理解出来る。10kg減量しこの役に挑んだというそのヴィジュアルは彼が演じて来た様々な過去作にも増して説得力が凄かった。
「2時間のパズルの重要な最終ピースがこれかっ!」ともう脳内の電光掲示板に何度も流れたね、うんマジで。

彼の登場でこのストーリーの全貌が明らかになるんだが彼の姉の人生の無慈悲さや惨さ、それでも自分の人生を生きようとした純粋な少女の悲哀を絶妙に演じた原菜乃華も素晴らしかったな。

で、モデルとなる『グリコ・森永事件』もハッキリと記憶している自分にとってこの解釈は非常に興味深く面白かったわけ。

反体制、バブル期前夜・・・熱が充満してたあの時代背景がこの物語の中心を担ってて、今の30代(主人公の2人)には分らない色彩や匂いがスクリーンから感じられる。

正直、検挙率の高い日本で身代金誘拐なんてあまり成立しない犯罪だったと思う。
犯人グループはそんな事百も承知であの事件の何処か人を小馬鹿にしたような様子を別の大金入手手段の【カモフラージュ】だったのでは?と疑問視する想定がオモシロイ。

そして「もう時効だからいいか」と徐々に口を開いていく当時の関係者たち。

真実が明確になっていく中、身勝手な大人に人生を翻弄された子供達の哀しみが見えて来る演出は胸が締め付けられる内容だ。

その全貌が明らかになった時、自分達の欲望だけにしか目を向けずその行為が何を招きどんな風に人の人生を狂わせるか?多角的な視野を持たない人間の犯罪の裏に隠された悲劇に衝撃を受ける。

それに加え報道の在り方への問題提起でもある内容に仕上がってるのがこの作品のもう一つの奥深さだろうな。一度は社会部で記者をしていた男が取材のやり方に疑問を抱き社会部を去る、しかし今回の取材をきっかけに社会の裏側や理不尽さ、そして事件に巻き込まれた弱者(被害者)が生き難い世間に対して疑問を持ち再び記者としての自分を見つめ直し事件記事への熱を取り戻すと言う伏線がまた興味深さを誘う。

時代、思想、犯罪に巻き込まれた悲劇、そして今を生きる関係者達の証言がまるで精巧なパズルの様に描かれる"見応え200%"のサスペンスだった。


小栗旬と星野源のちょっとだけブロマンス風なシーンも有り、二人のファンである腐BBAには監督のサービスじゃねーかと歓喜の舞が心中でザワったわ。

ハイ、そーです川沿いのシーンですよ。缶コーヒーもってね。タメ口出た~~~!って思わず心中叫んだわ!

初めは相入れなかった二人が段々と接点を持ち想いを同じくし、どんどん関係性が濃くなっていく展開が堪らんのよ。(だって二人でドライブ出かけて遅くまで帰らないんだもの・・・←完全に意味はき違えてるww)

で?何?社会部に出戻った阿久津(小栗旬)のオーダースーツは何割引きなんじゃ~~??
あっ?まさかあのおっちゃんと同じ3割って事無いよな。まぁ少なくとも半額?いや、もう愛ラブ値引きでマックのスマイル並に¥0とか?
キャ―――――!やるなぁ曽根ちゃん!

阿「いや、それは悪いよ曽根さん」
曽「いいんだよアクツさん、今回運転もして貰っちゃったしさ・・・気持ち気持ち」
阿「だって、それは俺が付き合わせちゃった感じあるじゃん?曽根さ・・」
曽「俊也でいい。あれは僕が一緒に行きたくて勝手に着いて行ったんだし」(えっ?そーなの?)
阿「じゃあ次の時は俺が驕るから・・・」
曽「つ、次・・・?また一緒に?阿久津さ・・・」
阿「英士だろ」
曽「え、えいじ・・・」
阿「俊也」
曽「・・・・さ、採寸しましょう・・・」
阿「よし!俺カッコ良くなっちゃうぞ」
曽「僕が日本一の記者のスーツ作るなんて・・・感激だな」
阿「出来上がったら、先ずは仕事より俊也とデートだな❤」

・・・・・二人の採寸タイムは続く・・・・。


上記の様にこの2人の衣装の違いも見どころよん!
テーラー役の源ちゃんは素材も仕立ても良いセットアップにコートで一般記者の旬君は吊るしのヨレヨレスーツに安いコート・・・服屋としてはこの辺見逃せない!と思ったら最後にちゃんとオチ付けてくれました。さすが土井監督ちゃん。

このね、曽根さんがコツコツだけど立派なテーラーを営んでるってのもかなりな伏線なんだよね。
ラスト聡一郎と対峙するシーンに繋がるんだ。

色々、考えさせられるなぁ。



【追記】
今、監督のインタヴュー読んだら宇崎竜童と梶芽衣子のキャスティングは狙いじゃなく偶然で監督自身後から気づいたようだ。
そっちの方がマジかよ!?って思うわ(笑)


2020/11/05


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