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家にテレビがある人は『グランメゾン東京』を観た方がいい

『まだ結婚できない男』『同期のサクラ』『孤独のグルメSeason8』など今クールの連続ドラマは良作が多く、生きるのが楽しい今日この頃ですが、中でも群を抜いて観るべきドラマがこちら、『グランメゾン東京』です。

なぜ今、このドラマを観るべきなのか。ただのドラマ大好きな理学療法士の私ですが、僭越ながら詳しく解説させていただきます。

ーー目次ーー
1、あらすじ
2、入り口は「キムタク」でいい
3、麦わらの海賊団的なチームの力
4、実は社会派なメッセージを発信している
5、作品がフルコース

1、あらすじ

詳しくは以下をどうぞ。

ざっくり言うと、キムタク演じる訳アリなカリスマシェフが、鈴木京香とか沢村一樹とかと、東京で「グランメゾン東京」というレストランを開いてミシュランで三つ星をとれるように頑張るお話です。とてもよくある設定です。でも、それだけではないのです。

具体的にどこがすごいか、ここから解説していきます。

2、入り口は「キムタク」でいい

よく彼の演技力について「何をやってもキムタク」と表現する方がいます。賛否両論ありますが、あそこまで顔立ちが整うと貧乏でも金持ちでも、モテてもモテなくても、どんな役柄を演じても全て同じ人に見えてしまうのは仕方のないことのように思えます。

ちなみに名バイプレーヤーと呼ばれる方々は言わずもがな、これには該当しません。だから“演技力”を評価されるのです。

ただ、キムタクぐらいに突き抜けると、もうそんなことは気にならないのではないでしょうか。男も女も、社長も総合職も、阪神ファンも巨人ファンもみんな「キムタク」を楽しむのです。だってそうでしょ?『ビューティフルライフ』も『HERO』もとりあえずキムタクが出てたから観てたでしょ?その辺りの世代の方々であれば他の理由は要らないでしょう。

3、“麦わらの海賊団”的なチーム力

“チーム”という言葉は、これからの日本社会をより良くする上で欠かせないキーワードとなりつつあります。ラグビー日本代表のスローガンは「ONE TEAM」だし、『THE TEAM 5つの法則』という本も流行りました。

『グランメゾン東京』はチームで三つ星を目指します。いろんな才能を秘めたメンバーがぶつかり合いながら、でも肩を寄せ合いながら奮闘します。しかし、ここで大切なポイントが一つ。そのチームの中心にいるのは、実はキムタクではなく鈴木京香なのです。

彼女は他のメンバーに比べると、あまりパッとしません。鳴かず飛ばずのまま結構な年齢までシェフで居続けたアラフィフ独身女性です。

でも、『グランメゾン東京』のモンキー・D・ルフィは彼女です。

彼女は“立ち上がった凡人”です。才能あるメンバーは、悲しいかなそれぞれの才能を持て余し行き詰まります。そんな彼らを一同に介して束ね、同じ方向を向かせる凡人が、鈴木京香演じる早見倫子なのです。

彼女を中心としたチームは驚くべきテンポのよさで幾つもの困難を乗り越えます。まだ3話なのに、おそらく20個くらいの苦難を乗り越えています(精査曖昧)。

また“麦わらの海賊団”と同様に、構成員もじわりじわりと増えていきます。すでにご覧になった方ならお分かりでしょうが、玉森くんはまだ鈴木京香率いる“麦わらの海賊団”の一員ではありません。そして伏線かのように、これからチーム鈴木京香で驚くべき才能を発揮しそうなサブキャラたちがちらちら登場しています。そうです、あいつです、あのパティシエです。それはちょうど、ブルペンで肩を温める藤川球児を見たときの気持ちに似たワクワク感を与えてくれます。

兎にも角にも、この“麦わらの海賊団”的なチーム力は、働き方に物申したくて仕方ないビジネスパーソンたちの心を掴んで離さないでしょう。

4、実は社会派なメッセージも発している

日曜9時のTBSドラマといえば、『半沢直樹』に始まって『下町ロケット』や最近では『ノーサイド』など、池井戸潤原作の作品が軒並み高視聴率を獲得しています。

『グランメゾン東京』もそのバイブスをしっかりと受け継ぎ、銀行からの融資が受けれないとか、原価率を下げたい経営者と料理の質にこだわる現場で衝突するなど、所々に“池井戸潤要素”が垣間見えます。

そして、ここでも鈴木京香が一役買います。

3話から新たにチームに加わったシェフ、及川光博演じる相沢瓶人は幼稚園に通う娘を持つシングルファーザーです。しかし、彼が深夜までメニュー開発に精を出すことで、育児に手を掛けられなくなる状況に鈴木京香は心を痛めます。

ここまで言うとこれはよくある”育児と仕事問題”のように見えますが、この状況を普通の連続ドラマで描くには少し質が良すぎるのではないでしょうか?

男性上司がワーキングマザーの働き方に悩むのはとてもよくあるお話です。でも、『グランメゾン東京』では、男女が逆転しているんです。そしてこの“ミッチーの働き方問題”も恐るべきテンポの良さで違和感なく解決されています。そして、ここにもチーム力が働きます。

ここだけで1600文字くらい語れるのですがそれは自粛して、何よりもすごいのはこれをサラリとストーリーに組み込んでくるところ。おそらくこのドラマ自体も多くのスタッフが関わり良き“チーム”で作り込まれているからこそ、成し得る技なのでしょう。

5、作品が“フルコース”

ここまででいくつか挙げてきましたが、『グランメゾン東京』は単なる料理ドラマでは終わりません。挫折から立ち上がる青春ストーリー、権力との闘争、働き方へのアンチテーゼ、社会へのメッセージの発信など、様々な要素が組み込まれています。そして、それらをいろいろな個性を持った登場人物で展開します。

これ、少し離れたところから観察すると、フランス料理と同様に“フルコース”のように見えませんか?

フルコースドラマには、私が名作と信じて疑わない社会派ドラマの『Woman』や漫画原作をあそこまで完璧に仕上げてきた『きのう、何食べた?』などのようなインパクトは残しません。なぜならこれらは一つのイシューにこだわりすぎるが故に“一部の人”しか楽しめないドラマだからです。

しかし、フルコースドラマは“たくさんの人”が楽しめます。作品のメッセージ性や俳優の個性にこだわるドラマは多くありますが、ここまでエンターテイメントにこだわったドラマはここ数年では見かけません。

『グランメゾン東京』は、日曜の夜に家族がひとつの部屋に集まって同じドラマをそれぞれの視点から楽しめる、そんなドラマなのではないでしょうか?







読んでいただきありがとうございます。まだまだ修行中ですが、感想など教えていただけると嬉しいです。