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マイルス・デイヴィスのAtoZ「H」「Hannibal」

「Live Around The World」に収められた「Hannibal」は、1991年8月25日、ロサンゼルスでのライヴ音源。マイルスが人生の最後に演奏したナンバー。コンサート終了後に倒れ、翌月亡くなりました。というわけで良し悪しは別として、これを選びました。選ばざるを得ない。

実を言うと1980年代中盤から、結婚して音楽を聴く環境がガラリと変わってしまったため、晩年のマイルスはそれほど熱心に聴いていなかった。内容的にも音楽シーンの最前線を突っ走る、というものでもなかったし、全体のプロデュースを他人に任せて自分はちょっと吹くだけ、というふうにも感じ取れた。今、改めて聴くと、そんな中にもマイルスならではの光る演奏が確かにある。ごめんね、マイルス。

話を戻して、「Hannibal」のオリジナルは、アルバム「Amandla」に収録されていた、マーカス・ミラーが作曲したナンバー。しかし、前述の理由で、このライヴ音源を選びました。

ミディアム・テンポの曲で、最初と最後、マイルスはミュートでプレイする。軽快な曲調のせいか、悲壮感はない。途中、ケニー・ギャレット(sax)とのソロ応酬ではミュートを外してオープンで対戦し、まだまだソロイスト、表現者として一流であることを証明する。マイルスとギャレット、ステージでは、いつも向かい合わせでお互い下を向いてソロの応酬していました。この後、突然倒れるなんて誰も想像できないよなあ。おそらく本人さえも。元気な様子、聴いてください。

https://www.youtube.com/watch?v=XIOZHH8rtZ0

「Live Around The World」は1988年から91年までのライヴ音源を集めた盤。くだんのラストライヴの音源はこれ一曲だけしか入っていません。内容がバラバラかというと、そういうことはなく、この時期のマイルスのライヴ定番曲が収められていて、通して聴けば一夜のコンサート追体験ができます。

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