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マイルス・デイヴィスのAtoZ 「E」 「E.S.P.」

「E」で始まる曲のベスト1は「E.S.P.」です。同名アルバムのオープニング・チューン。「Agitation」の項で少し触れた、60年代黄金クインテット初めてのスタジオ録音盤。

黄金クインテットは、1963年にハービー・ハンコック(pf)、ロン・カーター(b)、当時若干18歳の若き天才トニー・ウィリアムス(ds)が加入してリズムセクションが整い、翌年ウェイン・ショーター(ts)が加わって完成しました。このアルバム録音前にヨーロッパツアーがあり、5人のチームワークは既に出来上がっていました。新しい顔ぶれで、満を持して完成させた(ある意味)ファーストアルバムということになるでしょうか。

実は、このアルバムを聴く前に、ヨーロッパツアーでのライヴ盤「Miles In Berlin」を先に聴いていたのでした。そこでは超高速でぶっ飛ばす「So What」や「Walkin'」など、相当に熱い演奏が繰り広げられておりまして、このアルバムはてっきりその延長かと思っていたら違いました。

マイルス全般に言えることなんですが、スタジオ盤ではクールに抑制された演奏をし、ライヴでは激しくブロウする、というのが通例なんですね。というわけで、この「E.S.P.」も爽やかな演奏に終始し、意気込んで聴くと肩透かしをくらいます。かといって、手を抜いているわけではなく、意図的にクールに、抑制した演奏に努めているわけです。めちゃカッコイイわけです。マイルスのソロにしても、結構速いフレーズを吹いている箇所がありますが、どこまでもクール。「昨日、飲み屋のねーちゃんのケツ触ったら、ぶっ飛ばされちゃってよ〜。ガハハハ。」みたいな明るさや下品さは一切ありません。
というわけで、まずはものの試しに聴いてみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=faW5IXgkMBQ

アルバム「E.S.P.」の2曲目が「Eighty-One」という曲で、これもいいんですよねえ。なんでも、初めて取り入れた8ビートの曲だそうで。3年後、マイルスは初めてエレキピアノとエレキベースを導入し、「Miles In The Sky」というアルバムを発表します。もしこの曲のピアノとベースのフレーズをそのままエレキに差し替えて「Miles In The Sky」に収録しても不自然ではないように思います。まったくもう、マイルスはいつでも未来だけを見ているのだなあ。

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