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マイルス・デイヴィスのAtoZ「F」 「Fast Track」

「F」は激戦区です。「The Man With The Horn」のオープニング「Fat Time」、ロン・カーターのベースラインが特徴的な「Footprints」、50年代ライヴの定番だった「Four」などなど。それらの強敵を蹴落として選ばれたのが二枚組ライヴアルバム「We Want Miles」に収められた「Fast Track」です。

メンバーは「C」でご紹介した「Come Get It」と同じ。アレと同じくらいカッコイイ演奏。マイルスがとにかく元気の一言に尽きます。テーマ部分、最初のソロからハイノートを連発。ギターのマイク・スターンにソロを譲ったかと思うと、またもやソロを奪って吹きまくる。2回目、3回目のソロなんて、こめかみの血管が数本切れちゃってると思います。約15分間、この連続。このグループの特徴とも言える、アル・フォスター(ds)のシンバルをジャンジャン鳴らしっぱなしの演奏もここから始まった。ちなみに中盤でソロを取るミノ・シネル(per)は、矢野アッコちゃんのお気に入りで何度か共演しています。サックスのビル・エヴァンス(ピアニストとは別人)はなぜか出番なし。編集でソロをカットされたのかな?

ところで、今改めて演奏を聴いてみると、確かにカッコ良くてマイルスが元気で結構尽くめではあるものの、心にしみじみ染み入るような演奏ではないかも。普通のジャズファンが選べば前述の別な曲がランクインしそう。ただ、個人的にはリアルタイムでこのアルバムが出た時の感動、衝撃が今でも忘れられないのだ。

私がマイルスを聴き始めたのが1970年代中頃で、マイルスが来日公演のライヴアルバム「アガルタ」「パンゲア」をリリースし、長い休養に入った時でした。そこから復活するまでの5〜6年間に、過去のマイルスの作品にどっぷり浸かり、大ファンになっていたのでした。そして待望の復活作「The Man With The Horn」が出て、いい曲もあるものの、イマイチ内容に納得できずにいたのでした。そもそもタイトル曲が軟弱な歌モノだったし。
そんな時にリリースされたのが「We Want Miles」で、完全復活に驚き、感激したのでした。その筆頭の演奏が「Fast Track」というわけですね。

この曲は「The Man With The Horn」に収められた「Aida」という曲なんだけれど、演奏のテンポを早めているので「Fast Trck」というわけですね。それなら「So What」も「Walkin’」も「All Blues」も全部「ファスト・トラック」という名前になりそうだけど・・・。

ともあれ、御一聴ください。

https://www.youtube.com/watch?v=aiIusd-_sw8

ちなみにこのアルバムで完全復活を遂げたと思ったら、その後の来日公演は体調不良でボロボロでした。FMラジオで生放送されましたけど、なんか変だな〜って感じでした。






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