MBS189高橋さん2

「子供のシュタイナー学園入学に伴い藤野へ移住し、地域活性化の活動を推進」後編 アーキタイプ株式会社 代表取締役 高橋靖典さん


前編より続く


●自分の子供をシュタイナー学園に入園させた理由

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三木:高橋さんはシュタイナー学園の理事長もされているということで、この間シュタイナー学園の定期的に行われる発表会に私は参加させていただいたんですけど、相当な驚きを持ってお子さん達の発表を聞いておりました。

特に感じたのは音に対してすごい敏感な子達が多いなと思って。基本的にマイクとかも使わないんですよね。だからすごい先生の言葉をマインドフルに集中して聞こうとする姿勢が高いなと思って。後ろのほうで子供がぐずったりするとそっちのほうを向いて、普通の小学校だとそういうのに反応しないと思うんですけど、感性がすごい高いお子さん達が多いことに気づいたりして。たぶん人間の感覚が、AIとか色んなコンピュータシステムがどんどん発達していく中だからこそ逆に重要になってくると思っていて。今日本の教育ってITを導入して1人パソコン1台みたいな、そっちの方向じゃないんじゃないかなっていう気もしているんですね。それも重要なんだけど感性的な部分、自分の内側をもっと見るのが重要かなと思っていて。高橋さんのお子さんは3人いらっしゃいますけど、この間たまたま食事も一緒にさせていただいてすごい地に足が付いていながら感性が豊かな感じがして、どういうお考えでシュタイナーの学校にお子さんを通わせているのか、親としての観点をお聞かせいただければと思います。

高橋:今期、理事長をしていますが、親と先生方が作ってきた学校という経緯もあって、今でも学校法人の理事は基本的に教員と保護者が順になっていく形で、そういった感じの学校ではあるんです。自分の子供を何故入学させたかというのは、まさに今お話しいただいたようなところだと思うんです。これからの時代、色んなことを知っていることとか覚えていることよりも、自分がそれをどう考えたりどう判断できるかってという自分で考える力とか自分で感じる力が重要になるんじゃないかなと思っています。いわゆる詰め込みで色々たくさん、知ってることとか早期教育で早く目覚めて社会に適応できるより、人間としての元々持ってる本質をキチンと培っていってくれるほうがいいんじゃないかなって感じた部分もあります。大人ができる子ども達への未来のプレゼントで、一番大きいのは教育かなと思いまして。

三木:お子さん達に最大のプレゼントをされているのかなっていう気がしますね。


●現代におけるシュタイナー教育の必要性

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三木:僕もシュタイナー学園のありったけの本を買って色々勉強して、もう100年以上前にそういうことを予見されていたのがシュタイナーさんなのかなっていう。

シュタイナー学園

高橋:当時は工業化が進む時代で、国家が教育でいわゆる政府に柔軟な国民を育てようっていうのがヨーロッパの中で起きている時代ですね。そういう視点ではなく、ちゃんと自分を持った子供を育てようっていうところもあり、100年前の教育でありながら今の時代にも非常に必要なものを提供してるんじゃないかなと感じますね。

三木:それと同時に今の特に都会で働いてる大人達が欠けているところをすごい持っている子供達だなと思って。そういったものが本当に今の現代の大人達にも必要だから大人向けのシュタイナー教育みたいなのが絶対必要だなと思っていて、そこのところもzenschoolは一部やってるのかなって何となく勝手に思い込んでるんですけど。

感性的な部分、自分の内側を見てその中から取り出すっていうところがすごい重要じゃないかなと思っていて。大人向けのクラスみたいなのはあるんですか?

高橋:大人向けに体験授業としてあるのと、教員養成の講座みたいなものがあります。それは基本的には学校の先生になりたい人向けに提供しているカリキュラムではあるんですけども、受講生は大人の方が多いので、教員にならない方でも受けられている方はいらっしゃってます。

三木:すごい興味があって。シュタイナー学園の教員にならないと思うんですけど、内側を見る色んなワークがあると思うので、そういうのを身につけてみたいなと思ってるんです。最近zenschool的ないわゆる知識詰め込み型とは違う新しいビジネスを考えるとかアート思考とか哲学とか増えてきてると思うんですけど、そういうものの源流がシュタイナーさんが考えたものにあるのかなっていうところがあって、先見性がすごいなと思いますね。シュタイナーのことについて勉強し合うっていう大人達の間で何かあったりするんですか?

高橋:親も学ぶ機会がありますので、勉強会があったりとか、子供達の教育の様子を見ながら大人達が改めて発見することもありますね。

三木:通ってる子供達はシュタイナーのことを直接は知らない?

高橋:そうですね。よく誤解される部分はシュタイナー教育という名前が付いいてるので、シュタイナーの思想を教えるようなイメージをお持ちいただくこともあるんですけど、子供達はシュタイナーの考え方に触れないというか、単純にシュタイナーが考えた子供にとってどういう教育がベストなのかっていうものを実践しているだけで、シュタイナーの考えそのものには触れないですね。思想というのはある程度大人になってから触れるべきだっていう考え方もあります。

三木:元々シュタイナー学校ということじゃなかったんですよね。

高橋:日本だと分かりやすさとかも含めて(シュタイナーと)名前を付けているケースがあるんですけど、ヴァルドルフ工場っていうタバコ工場の横に作った学校が一番最初で、シュタイナー自身は自分が宗教的に教祖みたいに信仰されるような形になってはいけないって思っていたこともあって、自分の名前は付けず、ヴァルドルフ学校って付けたので、ヨーロッパではヴァルドルフ教育って呼ばれていますね。

三木:世界では1,000校近くあると?

高橋:そうですね。1,000校近くあって、今、中国でも40校ぐらいあります。

三木:中国でそんなに多いのはすごいですね。何かイメージとしては逆の感じなんだけど。

高橋:やっぱり同じなんだと思います。人口が増えていって教育が過熱化する中で本当の教育はこれでいいのかっていうことを考える方達もいて、その中でシュタイナー教育に出会った方達が自分達で立ち上げてやってらっしゃるというケースが多いと思います。

三木:シュタイナー学園の卒業生さんはどういう道に皆さん進んでいるんですか?

高橋:日本の場合はまだ卒業して大人になった方の数がそんなに多くないので、統計的にどうかっていうのはちょっと言いづらいところもあるんですけど、ドイツのデータだと大学の進学としては教育学部と芸術学部と工学部が多いということと、あとは自分のやりたい仕事に就く。それは社会的にどうこうとかお金が儲かるとかじゃなくて自分が興味のある仕事に就く。興味があって転職したいって思った時に躊躇しないで転職するみたいなデータはあるみたいですね。

三木:鎌倉にも1人起業しているシュタイナー学園出身の方がいたりするんです。

高橋:みんな、卒業生はうちの親達より「根拠のない自信」があるっていうんですけど。

三木:徹底的に自己肯定感が…

高橋:自己肯定感が高い子供が多いですよね。平均的に見るとですけど。

三木:日本の普通の学校は相当自己肯定感が低い感じ。怒られるっていうか叱られてきてるから。

高橋:やればできるようになるんだっていう認識だったり、小さいうちから色んなことをやらせるので、田んぼもやるし、家を一軒建てたりもするので、色んな教育を通じてやれば何でもできるようになるんだみたいなことが、自己肯定感につながってるのかなという気はします。

三木:あと自分で手を動かしたりとか家を作ったりとか農業体験とかそういう地に足が付いてる感がすごい伝わってきたので、そういうところからきてるのかなと。

高橋:先日当校が30周年で卒業生に来てもらい、座談会をしてたんです。親御さんが質問して「社会に出て大変じゃなかったか?」って聞くんですよ。守られ過ぎて育っていると社会に対して、急に音がうるさかったり対応できないんじゃないかって心配する親御さんが多いと。彼らは「本当に親御さんはそのことばっかり気にするけども、全然そんなことはない」みたいな話をしていて、「正直、手仕事もできるし、畑もやってるし、家も建てたし、衣食住のことは何でもやってきたからむしろ何をやっても死なないっていう自信があって、だから何でそれを心配するのかが不思議でしょうがない。」っていう話をされて。

三木:子供達が?

高橋:卒業生ですね。なるほどなと思ったんですけど。

三木:ベースができるわけですね。生きていくベースを作っていく。だからあとはアプリケーションを自分でどんどん開発するみたいな感じですよね。そこがすごいいいなって。

高橋:生活上困るのは唯一「最初の頃、敬語が使えない」っていう話だったんです。

三木:そうなんだ(笑)。

高橋:(各学年)1クラスずつなので、先輩後輩でも、隣のクラスみたいな感じなんですよね。だから先輩に対しても敬語を使わない感じが文化として多くて、「最初それがちょっと困るけど、それは別に慣れればすぐ何とかなるからそんなに困ることでもないし」みたいな感じで話をしていましたね。

三木:1年~12年まであるんですよね?

高橋:そうですね。

三木:8年間は同じ先生が教えるんでしたっけ?

高橋:そうですね。実際には途中で変わるケースもあるんですけども、先生方みんなが、子供のことを本当によく見てくださってるんですね。私なんかはそれだけですごい価値があるなと思ってるんですけど、ちょっとした子供の変化に気づいてご連絡いただいたりとかアドバイスをいただいたりとかしてくださる。

三木:うちは子供がいないんですけど、もし子供がいたらぜひ通わせたいな。そしたらこっちに移住しなきゃいけない。

高橋:そうですね。

三木:移住してくる人も多いと思います。


●藤野倶楽部について

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三木:今こちらの藤野倶楽部というところにお邪魔してますけど、元々は農業法人?

高橋:そうですね。農業法人ですね。

三木:シュタイナーも農業体験をすごい大切にしていると思うんですけど、ご自身でも農業法人の経営に参画されてるんですよね?

高橋:そうですね。先ほどお話しした中村と桑原というのがここの役員も一緒にやっていたみたいなところもあって、移住して2年目ぐらいから経営のお手伝いをさせていただいていて、事業の少し幅を広げて、元々ここ自体も先にレストランがあってそこの食べ物を作るっていうところから…

三木:すごいおいしいんですよね。参鶏湯(サムゲタン)が。

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高橋:農業ってなかなか作ったものを販売するだけだとすぐに成り立ちづらいので、逆に消費を先に作って始めたんですけど、そこからさらに広げて今はバーベキュー場をやったりとか、あとは簡易宿泊所ですね。農業の分野でも加工の2次産業とかサービスの3次産業まで広げて6次産業化っていうのが農水省のほうでもプッシュしているところもあって、その文脈に乗っかって事業をしています。

三木:この間2ヵ所ほど企業研修でご案内いただいたんですけども、すごい大きなストーブがあったりとか囲炉裏があったりとかして、景色もすごい山が一望できるっていうことですごいあそこで研修してみたいと思いましたね。

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高橋:ありがとうございます。

三木:結構研修する方も増えてるんじゃないですか?

高橋:そうですね。古民家を改修して眺めのいい場所で、東京から1時間とか1時間半で来れる場所なので、企業さんの研修への呼びかけとかをさせていただいたりとか、あと先ほどお話ししたみたいに藤野のシュタイナー関係とかでも移住者が多い中で、コーチングをやってらっしゃる方とかそういった企業研修をお仕事にされている方もいるので、そういった方達にご活用いただいて実際にフィールドワークで農業体験もするような形での企業研修をしたりとか、眺めがいいので瞑想したりするような研修とかやるにはすごく…

三木:高橋さんのzenschoolでの企画もそういう企業研修を…

高橋:そうですね。

三木:素晴らしいフィールドがあるので、ぜひ企業研修をお考えの方は高橋さんにご相談いただければ色々プログラムを組んでもらえると思いますので。

高橋:はい。講師もたくさんいるので色んなプログラムができると思います。

三木:講師といえばコーチングの第一人者の方も藤野にいらっしゃるんですか?

高橋:CTIジャパンというのを創業された榎本さんっていう方もちょうど子供が同級生なんですけども、うちの無形の家という1つの古民家を使って定期的にプログラムを自分の会社さんでやってらっしゃいますね。

三木:本当に人の多様性がすごいなと思って。

高橋:そうですね。色んなスキルがある方がいらっしゃいます。

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●藤野の地域通貨よろづ屋について

よろづ屋

三木:そういえば地域通貨が結構有名なんですか?

高橋:そうですね。トランジションタウン活動という中で2009年からもう10年ぐらいになりますけど、地域通貨よろづ屋というのもスタートしていて。

三木:それはデジタル的なものでないっていうことですか?

高橋:アナログというか通帳型の。

三木:通帳型の手で記入するみたいな。

高橋:記入するタイプのやつなんですけど、それとメーリングリストというデジタルとアナログを併用しながら地域の物のやり取りとか情報の交換とか活性化とかしていて、それは非常に円滑に回っていて色んな新しい方と知り合えたりとか困ったことを助け合えたりとかそういったことにつながっている役割を果たしていますね。

三木:メーリングリストで流すんですか?

高橋:メーリングリストで情報が流れたりとか、それ以外の色々なつながりができてることで別のグループも立ち上がってどんどん色んな取り組みがされていったりしています。

三木:別に仮想通貨とかじゃなくて、通帳とメーリングリストなんですね?

高橋:そうですね。通貨の役割って本来感謝のしるしだったりしたものが、貨幣が貨幣を稼ぐようになる中でちょっと変化していっちゃったものが法定通貨としてはありますけどね。もうちょっと元々の人のつながりに軸を置いて使っている通貨ですね。通常この地域通貨はLETS方式って呼ばれていて、ローカルエクスチェンジトレーディングシステムっていうことなので、カレンシー(通貨)ではないんですよね。だからあくまでも人と人をつなげる仕組みとして取り入れてるものですね。実際に中山間地域なので人と人の付き合いがあるけど、例えば移住してくるといきなり付き合いがバーッとできるわけじゃないので、それの間をつなぐような仕組みですよね。

三木:どちらかと言うと通貨というよりは人のつながりのきっかけになる…

高橋:そうですね。きっかけを可視化するような仕組みですね。

三木:今そのよろづ屋のコミュニティは何名ぐらいいるんですか?

高橋:登録者が400名ですけど、1世帯で入ってもらってるので400世帯になりますので、子供とかご夫婦とか入れると1,000人近くにはなるんじゃないかなと思います。

三木:それがお困り事を流す感じですか?

高橋:そうですね。「洗濯機が壊れたから誰か持ってる?」とか「車がちょっとエンストしたけど誰か乗っけてくんない?」とか。私は子供の法事の時の靴が足りないので「誰か貸してくれるかな?」って投げると、30分以内に2人ぐらい手を挙げてくださって1人は貸してくれて、1人はくれるっていうのでそれをピックアップして法事に向かうとか、そういう感じで色んな形で生活の中でも活用してるし、困った時はよろづ屋のメンバーに相談すれば何とか解決するだろうっていう安心感も一緒に持てるっていうのが1つ大きな特徴かなと思いますね。

三木:貸し借りがそこで発生した時は(通帳に)付ける感じですか?

高橋:そうですね。それは自分で決められるんですけど、1,000萬なら1,000萬、2,000萬なら2,000萬。値段は自分で決めるっていうことですね。(※注:萬が単位)

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三木:平均値みたいなのが出てくるんですか?大体こんな感じだろうみたいなのがあるんですか?

高橋:値付けをするっていうのも事務局のやらないことなので、自分で自分の値付けをしてもらうっていう意味で決めてないんですよ。だから同じ作業に対して2,000円萬払う人もいれば6,000萬払う人もいればみたいな感じで、それはそれで別に構わないっていう考え方をしてるので。

三木:誰が誰に対していくら払ったかはそのリスト上で共有されるんですか?

高橋:されてないですね。

三木:それは相対の?

高橋:通帳の相対でしか持ってないので、通帳の相対を見ると「この人、あの人からベーコン買ってる」みたいなことが分かったりとかもあるんですけど。

三木:通帳はお互いに見せる感じですか?

高橋:交換する時に見せるので。

三木:交換する時に…?

高橋:交換してお互いにサインしてもらうんですね。その時に1回交換して通帳を見ることになるので。

三木:そっか。相対でその中で分かる感じ?

高橋:そうですね。

三木:だから完全にオープンっていう感じじゃなくて所々で情報が共有されるみたいな?

高橋:そうですね。デジタル化すれば全部見えたりとかそういうことに進むと思うんですけど、年配の方も入っていただいてて、メーリングリストだとメールを打ったら見られるので、メールで投げかけの時だけは見えるような感じになっているんですね。メーリングリストのルールとしては困ったことを投げかけをするのと解決をしたかどうかだけもう1回投げるっていうルールになってるので、解決しないと皆さん気になるんですよね。

三木:「こういう人とつながりたいんだけど」みたいなのもあるんですか?

高橋:そうですね。例えば「こんなことができるのでワークでこれを教えるからどうでしょうか?」って投げることがあったりもしますし、逆に成立しない場合は成立しない場合でみんな気にかけてそれについてどうできるかねっていうのが盛り上がることもあったりとか。1回子供が病気になった時に自分も調子が悪くて預けたいって時に見つからなかったことがあって、「知らない人に子供を預けるのは、つながっててもちょっと心配かもね」とか色んな話があって、逆に「お母さん達同士が少しつながろうか?」っていう話になったりとか、あるお医者さんがよろづも現金も払えないけど「話を聞いてほしいおばあさんがいる」と。そしたら「ちょっとボランティアでやりますよ」っていう方が何人も出てきて、それが集まって傾聴のサークルになってお話を聞くような活動が立ち上がったりとか、色々つながっていってる。

三木:今デジタルの仮想通貨みたいなのが色々できてますけど、そのお手本になるような形ですよね。デジタルよりはむしろこっちのほうがいいのかもしれない。紙を使うもののほうがね。

高橋:アナログと合わさったところでうまく温かみを残しながら運用ができてるのかなっていう気はします。もちろん僕らぐらいの世代が年寄りになって全員デジタルでも抵抗がなくなったらもっとデジタルに吸収できる部分もあると思うんですけど、顔が見える距離での取引っていうことで一応エリアを限定してやってるツールではあるんですね。

宇都宮:エリアが離れるとちょっと…

高橋:基本的には取引をすぐしたいと思った時にできる距離の人だけ入っていただくという形で、それ以外の方がご興味あった時には入っても構わないけど、先々は自分のエリアで立ち上げる前提で情報共有として入ってくださいっていう感じにしてることが多いですね。

三木:鎌倉もこれをやれば…メーリングリストと通帳だけでいいわけだから、特に何かシステムを入れなくてもできますもんね。

高橋:さっきお話ししたみたいに全員の通帳を1回集めてコピーをしたりとかすると取引が全部見える化とかもできるんですけど、事務局はそういうことを極力しないようにしてるんです。楽に続けられるように。一時2000年代にNHKの番組で『エンデの遺言』っていうのが放送された後、地域通貨がすごく流行ったんですよ。ただ、みんな1年か2年で潰れちゃうところが多くて、事務局が頑張り過ぎて色々やろうとしたり、取引の間に挟まって仲介したりとかして、そうすると事務局が疲弊しちゃうんですね。そういうのは結構過去のケースで分かっていたので、極力事務局が仕事をしないことを売りにしてるというかポイントにしている通貨ですね。

三木:今導入されて何年目ぐらいですか?

高橋:今10年ぐらいですね。でもそういうのじゃない地域通貨をやりたいみたいなこともあって、紙幣型のゆーるっていう地域通貨もあったりとか、シュタイナー学園で廻(めぐり)っていう学園内の通貨もあったりとか、あとここで月に2回ビオ市・野菜市っていうイベントをやってるんですけども、ビオコインっていうお手伝いとかしたらもらえるコインが地域通貨で最近スタートしたりとか。

三木:色んな通貨があっていいっていうことですよね。一社がドミネート(支配)しなくても…

高橋:そうですね。お金の設計の自由度というか。

三木:そうなんですね。多重なコミュニティがあって、その流通として多重な通貨があるっていう。多重性が1つ壊れにくい社会というか…

高橋:そうですね。柔軟なレジリエンスがある気がします。この間の台風の時ももちろん消防団は消防団で活動し、行政は行政で活動するんですけど、それがつながってなかったりこぼれたりするケースもありますし、逆にそこだとできないようなこととかもあったり、そういう色んなセーフティネットがあると1つだけだと弱いところが複数あることでフォローし合えるっていうのはあるかなと思って。1つにまとめないっていうのもポイントなんじゃないかなという感じはします。


●高橋さんの考える「日本の○○の未来」に対する想いについて

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三木:最後にいつも皆さんにしてる質問があって、「○○の未来」という感じで○○は自分で入れていただく感じなんですけど、藤野でもいいですし、シュタイナー学園でもいいですし。

高橋:子供ですかね。

三木:子供の未来。子供達にどんな未来があるといいですか?

高橋:子供達が自分らしく生きられて、かつ自分らしくっていうのは自分勝手にっていうことではなく、周りとバランスを見ながら自分のやりたいことが実現できるような社会であり世界であってほしいなって感じますね。

三木:今年に入って新しいコロナウイルスが流行したりとか戦争になりそうになったりとか本当に先の見えない社会ですが、その中で基礎としての自分の内側を見るっていう、1人でも生きていけるっていうそのベースを作っているシュタイナーの教育って素晴らしいなって。まさにこういう時代に本当に必要なものなんだなと改めて…大人達が戦々恐々としてる中でたぶん子供達はかなりグラウンディングしているんじゃないかと思います。いかがですか?お子さん達。

高橋:そうですね。みんなでつながって助け合いながらっていう部分ももちろんあると思うんですけど、でも1人でもいられる強さがあるというかそのバランスを両方持っている子供達に育っていってもらって。教育って世界を良い方向に変える1つの方法ではあると思うので。

三木:最も重要だと思います。

高橋:大人に対してもそうでしょうし、子供に対してもそうですから。

三木:子供達から逆に何か影響を受けて大人達は変わっていくっていうのもあると思うんですね。

高橋:そうですね。そういった部分も非常にあると思います。教育の力も信頼しながらやるべきだなと思っています。

三木:有機的な町、藤野から今日はお届けしました。マインドフルシティ鎌倉も色々藤野の叡智を取り入れて学ばせていただいてより豊かで多重なコミュニティを作っていきたいと思っています。本当に今日はどうもありがとうございます。

高橋:ありがとうございました。


対談動画


高橋靖典さん


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