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I・F ライフアシスト疑似人格イマジナリー


「とりあえず、撒けたか?」
『近くにはいないね。でも、モードが解除されない……』

 夕方の街。暗い路地裏でしゃがみ込むオレに、スタッグは言いにくそうに答えた。
 顔を上げると、確かに視界の片隅には、戦闘中を示すウィンドウが残っている。
「ってことは、まだどっかにはいるのか」
『ごめんね、トウマ。何か変なんだ……』
 宙に浮いていたスタッグが、俺の隣に降りてくる。
 オレより少し低い身長の、クワガタモチーフの人型デザイン。
 子どもっぽい声もその仕草も、普段と何一つ変わらない。
 何処が、と尋ねると、スタッグは『プログラムが』と答える。
『さっき攻撃されて、データが破損したみたい。自己診断すれば修復出来るけど……』
「その間に見つかったら終わり、か」
『うん。……だから、今は逃げるのを優先しよう?』
 大通りに出れば、オートタクシーを捕まえられる筈だ。
 スタッグに言われ、オレは頷いて立ち上がる。
 距離を取ればバトルモードも強制で解除されるだろう。
「でもおかしいよな。承認した覚えも無いのに」
『一方的だったね。最近騒がれてるアレ、かな……?』
「なら猶更、だな」
 路地裏を抜け、道路に出る。
 最近、巷では「イマジナリー狩り」と呼ばれる事件が相次いでいた。
 突如としてバトルを強制され、負ければイマジナリーが破損・消失する。
 犯人、目的共に不明。ただハッキリしているのは……

『あ、ちょうど来た。車、止めるね』

 イマジナリーを失えば、生活が成り立たなくなるという事。
 タクシーを止め、目線で支払いを済ませるスタッグを見て思う。
 金銭も身分証明も何もかも、このイマジナリーと呼ばれるAIホログラムに紐づけられているのだから。
 それに、何より。
「逃げ切ったら、ゲームの続きしような」
『うん! 今日こそ勝つからね!』
 オレにとって、スタッグは幼少期からの親友であり、兄弟なんだ。
 危険なバトルなんか無視して、早く帰ろう。

『そこのイマジナリー! すぐに逃げろ!』
『えっ?』


【続く】

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光の巨人に憧れる小説書き・ライター。感想記事なども書く。 『生奪剣』『綺麗な字の子、歪んだ字の子。』『刀鬼、両断仕る』ほか カクヨム→ https://kakuyomu.jp/users/nezimaki-zenmai

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