見出し画像

”副業活用"は企業競争力|副業3.0 -森本千賀子氏×石原健一朗氏 対談/交流会-

“副業元年”と言われた2018年から約3年が経過した現在、各社の副業に対する考え方や働く価値観は大きな変化をみせています。
一言で"副業"といってもいくつかの側面が存在し、人事担当者が対応すべき事項も多様化しています。

7月26日(月)に開催された本セミナーは、ITトレンドEXPO2021Summer での講演のスピンオフ企画として参加者様と共に「副業活用」を考える場として実施しました。

スピーカーは、2,000名以上の転職に携わり、自身も多方面でのパラレルキャリアを体現、副業支援にも注力している森本千賀子氏、
京セラ、ダイドードリンコで人財戦略の構築と変革を推進し、自身も副業を行うダイドードリンコ石原健一朗氏をお招きし
副業制度の構築や浸透、副業人材の受け入れ、労働観の変化など多様な視点から「副業3.0」について語って頂きました。

【登壇者プロフィール】

画像2

株式会社morich
代表取締役All Rounder Agent 森本 千賀子 氏

1993年リクルート人材センター(現リクルートキャリア)に入社。転職エージェントとしてCxOクラスの採用支援を中心に、3万名超の求職者と接点を持ち、2,000名超の転職に携わる。リクルートキャリアでは累計売上実績は歴代トップで全社MVPなど受賞歴は30回超。
2012年には、カリスマ転職エージェントとしてNHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。
2017年3月株式会社morich設立。HRソリューションに限定せず外部パートナー企業とのアライアンス推進などのミッションを遂行し、活動領域も広げている。
『成功する転職』『無敵の転職』など著書多数、日経電子版の連載など各種メディアにも執筆。
プライベートでは家族との時間を大事にする「妻」「母」の顔も持ち、「ビジネスパーソン」としての充実も含め“トライアングルハッピー=パラレルキャリア”を大事にする。また、ソーシャルインベストメントパートナーズ(SIP)理事や、社外取締役・顧問など「複業=パラレルキャリア」を意識した多様な働き方を自ら体現。2男の母の顔ももち希望と期待あふれる未来を背中を通じて子供たちに伝えている。

画像2

ダイドードリンコ株式会社
人事総務部 人事グループ シニアマネージャー 石原 健一朗 氏
大学卒業後、京セラ株式会社に入社し、在職中は一貫して人材開発、組織開発に従事。教育研修の全社統括部門において、階層別教育や役職別教育を新規で立ち上げ、教育体系の再構築を実施。企画部門の責任者として階層別教育の内製化、各種研修の企画・運営・講師を担当。また、多角化企業の同社において、各事業のさまざまな部門の組織開発を行った経験を踏まえ、複数の階層向けのリーダーシップ教育プログラムを新規に自前で開発し全社展開を実施。2015年にダイドードリンコ株式会社に入社後は、次世代リーダーの育成選抜プログラムを主軸に据えた教育体系の構築に従事しながら、採用、人材開発、組織開発、人事企画まで幅広く従事。
(資格)
国家資格キャリアコンサルタント、Gallup認定ストレングスコーチ、
DDIラーニングシステム認定ファシリテーター
(副業)人財・組織KAIHATSUオフィス 代表

副業3.0とは?

近年、働き方改革やパラレルワークなどが注目を浴びており、副業を解禁する企業が増えてきました。主に副収入を得ることを目的とされていた「副業1.0」は、本業にシナジーや相乗効果を見込みみ、スキルを磨ける副業を選択する「副業2.0」へ。

更にそこから、「本業ではできないような経験をし、様々な活動を通して自己実現を目指す」ことができる副業をすることが「副業3.0」です。近年、この「副業3.0」が注目されています。

副業社員を受け入れるメリットと注意点

清水:初めに、副業社員の受け入れについてお伺いしたいです。正社員としてではなく、副業社員を受け入れるそのメリットや注意点について教えて下さい。

石原 氏:例えば転職で人を雇うとなると、任せたい業務と専門知識がマッチしそうでも、それ以外の部分についてのマッチングがどうしても求められるため、受け入れることが難しい方々がいます。副業であれば、そういった条件もなく、契約もしやすいので、ジョインしやすくなります。

森本 氏:もう一つメリットとしては、既存社員の抵抗勢力と戦う必要がないところですね。正社員として受け入れ、新しい取り組みをしようとすると、中には既存の仕組みや施策を否定することになるので、反感を持たれる可能性があります。「外部」からの参加だとコンサルっぽく指摘しやすくなり、社員も「外からの意見」として受け入れやすくなるようです。

石原 氏:そうですね。一方で注意点として、正式に入社されるわけではないので、周りからの理解がなかなか得られない可能性があります。副業人材を支援してくれるようなフォロワーが社内にいないと、孤立してしまう可能性があります。また、その方にも人間関係構築能力が必要になるのでは、と思います。

森本 氏:社内や社外の方々とのプロジェクトワークに慣れている企業様や組織は問題ないと思いますね。第三者を含めたプロジェクトワークをあまりしたことがない企業様だと少しチャレンジングになるかもしれないですね。

副業制度の導入が困難な企業様へ

清水:副業制度がなかなか受け入れられないことがある企業様もいるようです。副業制度がない会社で、副業を始めたい社員さんはどんなことを始めたらいいのでしょうか。

森本 氏:副業が解禁されていない企業様にお勤めだと、報酬が発生するような副業はNGになってしまいますが、ボランティアやNPOの支援などはいかがでしょう。報酬は発生しませんが、とても勉強になるはずです。ボランティア団体の存在意義は、会社のように収益を上げることではなく、社会への貢献になります。活動したことに対する対価も報酬ではなく、目の前で困っている人を助けることによって「ありがとう」と言われることがインセンティブになります。そういった現場ではまさに、「働く」ことの原点を体感することができます。

他にも、母校の部活の監督としてボランティアされている方もいるのですが、戦略作りや、チームビルディングの学びになるとのことです。また、練習や試合を通じて心が震えるほど感動して泣く、ということは社会人ではなかなか経験できないので、そういった価値も大いにあると感じます。

報酬を得なくても、別の形で対価を得られる副業があると捉えると、可能性は広がりますよね。

清水:確かに副業というと、別の会社で時間を過ごすイメージがありますが、NPOや母校の支援をするなど、社会貢献するという側面もあるんですね。

ちなみに、副業制度を導入したい人事担当者も多いと思いますが、大手企業などは新しい取り組みの導入や組織を変えていくことって難しいかなと思います。こういう場合、どのような行動を取るのがいいのでしょうか。

石原 氏:大手企業に限った話しではないですが、会社の中で一番プレゼンスがあるのは社長だと思います。ただ、社長の周りには会長や相談役や、役員の方々、変革好きな社員など、プレゼンスを持っている方がいると思います。そういった方々にどう接点を持って仲間を作り、意見を伝えるなどして働きかけることが重要だと思います。

森本 氏:あとは人事や経営陣が自ら進んで副業していくことをオススメします。たまに経営陣が副業をNGにしている企業様がいることを伺いますが、経営陣こそ副業したほうがいいと思います。今後会社としてもガバナンスも厳しくなり社外役員を増やしていく方向性です。そういう意味でも、経営陣自ら他社の経営に携わる機会は広がっており、必ず価値ある経験値になると思います。

副業制度をどう運用するといいのか

清水:次に、副業制度はあるが、うまく運用できておらず、なかなか浸透しないといったこともあるようです。どのように対応すればいいのでしょうか。

石原 氏:社内で浸透させるために、例えば当社では申請のハードルを下げるために、「こういう副業ならいいよ」といったホワイトリストではなく、「最低限こういう副業はNGです」といったブラックリストのみ提示しています。現在のところは狙いどおり、副業解禁直後から多くの申請が来ています。

清水:ホワイトリスト方式で副業制度を作っている企業様は多いのでしょうか。

石原 氏:ホワイトリスト方式である、というよりは、副業を申請したのに通らない、というケースが多いようです。時間管理の観点や、安全面の問題など、色んなリスクが考えられるからですね。
例えばUberEatsで副業される方が多いと思いますが、事故を起こしてしまい、本業に支障をきたすことも想定されますよね。そういう観点で申請が断られてしまうようです。
ただそれを言い始めると、何もできなくなってしまうんですよね。

会社がオープンな状態であり、副業内容を「チェックする」のではなく、「歓迎する」スタンスでいるほうがいいと思います。

清水:視聴者様からの質問です。社員の方が副業をする際、就業後や土日を使うイメージがあるのですが、実際どういうときに副業に充てられているのでしょうか。

石原 氏:当社では、多くの人が定時後にされていますね。副業制度導入前は、定時後に残業されている方が多かったですが、残業せずに副業に充てられる方も増えました。また、当社ではフレックスタイムを導入しているので、コアタイム以外の時間で副業されています。配達業務や地方の農業に携わる方は朝に副業されたり、就業後に旦那様や両親の会社を手伝うなど、内容に応じて好きな時間に取り組んでもらっています。

どんな副業がいいのか?

清水:視聴者様からの質問です。人事としては、社員が成長できるような副業をやってほしいが、現実はUber Eatsなど、本業とは少し離れた仕事を選ばれがちです。これについて、どう捉えますか。

石原 氏:当社はまさにそういうフェーズですね。ただ、現段階において大切なことは、「とにかく副業をしている人数を増やす」ことであると考えています。何でもそうですが、最初の一歩のハードルは高いものです。一度副業を経験していれば、必要に応じて副業の内容をスイッチはしやすいと考えています。

当社では、副業されている方へのインタビュー記事なども発信していますが、コンサルなどされている方に限定するのでなく、「こういう副業もあるんだ!」と気付いてもらえるように、多種多様な副業を取り上げて発信しています。

森本 氏:まさに冒頭の「副業1.0」から「副業3.0」のステップがある、という考え方ですね。最初は「副業1.0」から始めて、できる範囲のことをやり、徐々に2.0や3.0にキャリアを染み出したり、アップデートするなどステップアップできたらいいのではと思います。

清水:ちなみに副業をやってみたいが、どういった副業をすればいいのか分からない方にむ向けて、おすすめの活動ははありますでしょうか。

森本 氏:先程お伝えしたボランティアやNPOに加えて、おすすめは「ふるさと副業」ですね。ご自身の地元や地方に貢献したいと思う方もいると思いますが、なかなか出向くのは難しいかなと思います。「ふるさと副業」は、自分の故郷だけでなく、地方で頑張る経営者や起業家がプロジェクトを組成して、首都圏に住んでいる方々とオンラインを通じてプロジェクトを推進していく形態です。自分なりに地方創生に関してできることをすることによって、ふるさとに貢献できるようになります。
また、社会人の副業先やインターンシップ先をマッチングをしてくれる「サンカク」というサービスもあります。

他にも、メンタルや体力づくりのためにも副業はおすすめです。例えば農業は、収穫時に独特の嬉しさがあるんですよね。自然と触れ合うことは脳科学的にもリフレッシュできたり、サードプレイスで必要とされる実感が持てたり、そういった意味でもメンタルバランスを保つことができます。
地方での就業者や農業従事者の方など、普段接点持てない方々との交わりやネットワーク作りは、結果的に新しい発想が生まれるなどに繋がると思います。

清水:幅広い可能性がありますね。ふるさと副業やボランティアなど、成長の機会が多くありますね。
最後に、視聴者様に向けてお二人からメッセージをお願いできますでしょうか。

石原 氏:副業制度を取り入れたいが難しい方は、まず始めに社内でプレゼンスのある方に向けて働きかけることが大事だと思います。なお、他社も制度を取り入れ始めたら、競争力という観点で、いずれ同じように導入せざるを得ない状態になると思います。そういう意味では、導入後に活用してもらうイメージやデザインが重要になると思います。
既に、導入しているもののなかなか副業が広まらない場合は、ハードルを下げることが重要と考えます。ハードル高いと、副業できる人も多少はいると思いますが、できない人が多く、公平性を失い、一体感がなくなる可能性も考えられますので。
なるべく活用できる人を増やし、副業が当たり前だと思ってもらえるためにどうすうればいいのかを考えてみるといいと思います。

森本 氏:「副業」と聞くと大変そう、と思われたりするかもしれません。ただ、昔からやりたかったことや夢など、現実的に諦めてしまった仕事ってあると思います。教師になりたかったけど、色んな事情があってできなかったなど。ただ、今は教員免許がなくても似た活動ができるNPOなどもあります。そういった夢を叶える一手段として、副業を始めると、そこまで難しい話ではないのではないでしょうか。
やりたいことを諦めるのはもったいないことなので、自分の成長のためだけでなく、人生を楽しむためにも、副業を是非チャレンジしてみていただきたいです。

副業の「副」は「サブ」を意味しますが、2.0は「複数」の「複」、3.0は「幸福」の「福」だと考えています。自分のやっている副業が、自分のライフワークになっていることが理想だと思いますね。

清水:ありがとうございます!森本さん、石原さん、本日はどうもありがとうございました!




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?