二十歳のころ 第六十章

日豪センターに行くと日豪センターまで案内をしてくれた女性とよく顔を会わした。彼女も仕事を探していた。僕と彼女は気分転換にお茶でも飲みに行こうと話をした。
僕らはオフィス街にあるカフェに立ち寄った。僕は今までの僕のワーホリの経緯を話した。何でオーストラリアに来たのか。どこの場所が良かったとか一連の旅行会話を始めた。
「私もワーキングホリデーでオーストラリアに来たの。私は最初にシドニーに来た。それで今ボンダイでフラットを借りて、語学学校に通っているわ。オーストラリアに来てまだ私は一ヶ月くらい。」
「仕事はこれから探すのですか?」
「仕事は今もしているわ。」
「それなら完璧ですね。いいなぁ。仕事もフラットも決まっていて。でも何でまた仕事を探しているのですか?」
「私、今、オーストラリアに駐在している日本人相手のスナックに勤めているの。」
「スナックで働いているようには見えないけれど。どうして。また。」
「お金ないのよ。私の場合、日本でお金を貯めてオーストラリアに来たんじゃないの。あなたと違って夢とか希望を持ってオーストラリアに来たんじゃないの。」
「うん。」
「私、日本で色々あって逃げ出すようにオーストラリアに来たの。準備もほとんどしていなかったわ。でも今は日本には帰れないの。帰りたくないのよ。わかる?」
「わかるような気がする。うん。そうか。何はともあれ仕事見つかるといいですね。」
「聞いてくれてありがとう。こんな話しちゃってごめんね。語学学校じゃこんな話出来なくて。」
「気にしなくていいですよ。そうですよね。本当に色々な人がオーストラリアに来ていますよね。」
「あなたもフラットと仕事見つかるといいわね。今日は本当にありがとう。」
僕らはカフェで飲み物を飲み終えるとじゃあまたといって別れた。
ユースホステルの仲間と気分転換にシドニーの繁華街のキングスクロスに飲みに行こうという計画が持ち上がった。みんな息抜きが必要なのだ。誰もが満たされない心を持っている。
男数人と女数人が集まった。夕闇の中キングスクロスを僕らは歩いた。スタイルの良い娼婦が何人か立っている。ワーホリ仲間が一人二百ドルだぜとつぶやいた。高いのか安いのかわからないがへぇーと僕は頷いた。
僕らは一軒のパブに入り、ビールを注文した。パブの後にディスコに行こうというのが僕らの計画であった。ディスコの飲み物は高いので先にパブで飲んで酔っ払おうというのが僕らなりの計算であった。僕らはそれなりに酔っ払いパブを後にした。
ディスコはケアンズのエンド・オブ・ザ・ワールドと比較すると規模が小さかった。それに少し野暮ったかった。エントリーフィーがフリーということもあってディスコは洗練されているとはお世辞にも言えなかった。だが僕らはそれ以上に野暮ったかった。ディスコに来て誰も踊らないのだ。テーブル席に座り、ビールを注文して、誰もその場から動こうとはしない。しばらく時間が経つと退屈に飽きた僕を含めて何人かはフロアに踊りに行く。しかし基本的に僕らは音楽を聞きながらビールをちびちびと飲んだ。
数時間経つ。僕らの仲間ではない日本人女性がオーストラリア人の男性とディープキスをしながら豪快に踊っていた。一人の男性だけなら交際相手かなと僕は思った。しかしよく見続けていると女は複数の男性とディープキスを交わしながら踊っている。僕ら男性は彼女を酒の肴にしてああいう女がいるから日本人は軽いとなめられるのだとこぼした。
するとその女が僕らのテーブルにやってきた。噂話を聞かれてしまったかなと僕らは思った。その女は僕らの仲間の女の子に友だちがあなたと踊りたがっているわと話した。彼良い人だから大丈夫よと話した。僕らの仲間の女の子はその誘いをやんわりと断った。
僕らもディスコを離れる潮時だったのかもしれない。僕らはディスコを離れ、タクシー広場に向かった。そして僕らは通りを歩きながら感想を述べた。男性陣はあの女、なんだよとこぼした。しかし女性陣はあの人格好いいよねと話をした。あの女は僕らには持っていないものを持っていたのは確かな事であった。シドニーの夜だった。

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