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「個にして全体」坐禅の「只管打坐」とは

以前「今この瞬間の豊かさ」と題して、ただ何かに取り組むことについて書きました。
https://note.mu/zen_akano/n/n78c0f2424ef2?magazine_key=m0e90afa0d44a

これは「個にして全体」という感覚につながります。

禅では、すべてのものがつながっている、すべてが一つと捉えています。
たとえば身体をコントロールすると考えるのではなく、「私」を捨て、心と身体の調和を目指します。
何も支配せず、すべてを受け入れるのです。

勝ち負けにこだわず、ただ今この瞬間に没頭することで、気づきが生まれます。
スポーツでは、この気づきが「無心のプレー」への入り口になります。

初心者のための禅講座で、無心になった経験について、参加者の方々と話しました。

トランペットを演奏する方は、次のように話していました。

練習しているときは自分が練習していますが、
自分という意識がない状態で演奏していて、
空間の中に自分がいるという感覚になることがまれにあります。
トランペット、お客さんも含めて、空間全部が一体になっている感じです。
無意識になっているとき、よい演奏ができて、最高の経験です。

次のような経験をシェアされた方もいらっしゃいました。

仕事で、プロジェクト皆でチームワークよく活動しているときに参加者が一つになり、「自分が」ではなく「みんなで」という感覚になりました。
やっていて楽しく、チームとしてやりたかったことができて、「やってよかった」と思いました。

私も、メルマガや雑誌の原稿を書くときに似たようなことがあります。
一生懸命にアイディアを探して書くときもありますが、
パソコンに手が触れた瞬間にアイディアがおりてきたときは、
気がつくと30分くらいで原稿用紙を10枚書けています。
自分が書いているというより、アイディアが手を動かしてくれている感覚です。

このときは、スタバで原稿を書いていても雑音がすべて消えて、静かな中でただ書いているという感じです。
皆さんも似たような経験をされているのではないでしょうか。

すべてが一つという捉え方がある一方で、
主体と客体、精神と物体、善と悪などに分ける、
二元論的な捉え方もあります。

西洋では、人間の心身についても、ボディという箱にスピリットやソウルやマインドが入っていると捉えられています。
そのため、西洋のコーチングやメンタルトレーニングでは、基本的にボディをマインドでコントロールすると考えます。

英語も二元的で、主語を明確にします。
境界を明確にしすぎると、時として葛藤や分断につながり、戦いになることがあります。

これに対して日本語は、主語があいまいなことも多くあります。
主語を明確にしないため、日本や日本語では「私たちは」という表現をよく耳にします。
つながりを感じる文化です。
和を重んじるとも言えるかもしれません。

ただ、主語を明確にしないため、個が埋没して、依存し合ってしまう可能性があります。
これは問題が起きたときの責任があいまいになっていまうということにもつながっていると言われます。

日本では古くから、「八百万の神」(やおよろずのかみ)と言うように、すべてのものに命があるとします。
山、田、台所、米粒など、あらゆるものに命や神が宿っていると考えて、大事にします。

個ばかりだと分断してしまうということで、西洋でも禅が注目されています。
アメリカでの禅のセミナーでは、そのことを肌で感じます。

どちらがいいということではありません。
どちらかに偏りすぎると、バランスがとれなくなってしまいます。

最近は、「坐禅」をトレーニングに取り入れるアスリートが増えています。
とても嬉しいことですが、正しい方法で取り組まなければ、まったく効果が出ないことがあります。

スポーツ選手のメンタルトレーニングに坐禅を取り入れると、よく「坐禅するとどんな効果があるのですか」と聞かれます。
坐禅することで、平常心を維持できて集中力が高まり、自分の状態に気づけるということにつながります。

ただ、これは坐禅してみて気がつくことです。
これを目的に坐禅をするのではありません。
目的を持った坐禅は自分を捨てることができておらず、本来の坐禅ではありません。

禅宗である曹洞宗の開祖 道元は、中国から「只管打坐」(しかんたざ)の禅を伝えました。
「只管打坐」とは「ただ坐る」ということです。
目的や「我」を手放すのが坐禅なのです。

頭で理解しようとする選手は、結果がすぐに表れないと坐禅を止めてしまいますが、数回、坐禅をすれば効果を感じられるというものではありません。
坐禅の本当の効果を体感するには、時間がかかります。

禅は頭で理解するものではなく、体験が教えてくれるものです。
ただ坐禅を組む体験を積むことで、「個にして全体」という境地に至ることができるのです。

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