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『フィールド・オブ・ドリームス』 お父さん映画の決定版。これから父親になる人におすすめ。

評価 ☆☆



あらすじ
アイオワ州でトウモロコシの農業をしているレイ・キンセラだが、仕事はあまりうまくいっていない。しかも、若い頃に父親との確執を残したまま、実家を離れたことを後悔の念していた。そんな彼が、ある日トウモロコシ畑の中で不思議な声を聞く。



父親になること、父性愛に関する映画なのかもしれない。重松清の小説に『流星ワゴン』があって裏表紙にこんな文章が書かれていた。



「そして――自分と同い年の父親に出逢った。時空を越えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか――?」まさにこの通りの映画である。



1989年公開の『フィールド・オブ・ドリームス』は野球ファンのための映画ではない。原作はウィリアム・パトリック・キンセラ。僕は何度も読み直したが、小説の方はどちらかというと、J・D・サリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」のキンセラヴァージョンみたいな感じだ。もともと、サリンジャーの小説「ライ麦畑でつかまえて」の原題は「キャッチャー・イン・ザ・ライ」つまり「ライ麦畑のキャッチャー」を意味している。野球のキャッチャーのことだし、野球に関係しているんだけどね。



監督はフィル・アルデン・ロビンソン。この監督はこの作品以降あまり面白い作品を出せないでいる。ほぼ一発屋的である。 ケヴィン・コスナー、エイミー・マディガン、レイ・リオッタらが出演している。



『フィールド・オブ・ドリームス』は、シューレス・ジョーを始めとする、伝説と語り継がれる往年の野球選手たちが甦るというお話。映画の大半はノスタルジックだから、ノスタルジックという視点以外でこの映画を捉えるのは難しい。だから、この映画はかなり観客を選ぶことになる。



でも、物語は面白くて、父と子に集約されていく。原作にはないこのシーンはすばらしく良い。




ただし、これは偶然の産物であって意図されたものではない気もする。偶然出来た良作である。ただ、こういうのが意外としぶとい。自然に作り上げらられたものは作為的に作られたものよりも面白いことが多いから。意外とどこかで再評価されるかもしれない。



いずれにしても、父親であるひと、これから父親になるひとには、絶対に観て欲しい映画でもある。



追記



この映画を最近振り返ってみると、1960年代の古き良きアメリカのノスタルジィ色がかなり強いことがわかる。その意味では「野球を通したポリティカル映画」ともいえる。分析すると長くなるけどね。そもそも、農場を野球場に変えるというエピソードは、第一次産業の衰退と第三次産業の隆盛を意味していたりする。それほど、80年から90年にかけてのアメリカは衰退していたのだろう。



それってちょっと考えると「昭和の時代は良かった」と次々制作されている日本映画の近況と似てるのでは? 正直、いまの邦画は、あの頃はよかった的ノスタルジックもの、入れ替わりもの、高校生恋愛もの、ヤクザな世界を描いたもの、が多すぎる。結構うんざりである。



初出 「西参道シネマブログ」 2005-03-03



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