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『ラヂオの時間』 『カメラを止めるな』はこれのパクリではない。これはラジオ局版『ダイ・ハード』だ(監督本人談)。

評価 ☆☆



あらすじ
ラジオ局「ラジオ弁天」でラジオドラマ『運命の女』のリハーサルが行われる。シナリオが採用されたのは主婦、鈴木みやこ。初めて採用された脚本に感激しながらスタジオで立ち会っていた。物語は「熱海のパチンコ店で働くパート主婦である律子が村の漁師、寅造と運命的な出会いを果たす」というものだった。



またまた以前、書いた原稿でお茶を濁してしまいます。三谷幸喜監督の『ラヂオの時間』。この作品は、1997年に公開された作品で、唐沢寿明や鈴木京香などが出演。ラジオドラマをとりまくコークスクリューコメディ。



三谷幸喜はいま一番、日本で有名な劇作家である。これまでにも舞台、テレビドラマ、映画などで次々とヒット作を書き上げ、脚本家としての評価も高い。その彼が、ついに監督としてデビューを飾った。



彼の書き上げる作品は、密室劇が多い。今回の『ラヂオの時間も』限定された空間内で物語が展開している。ラジオ局内に2時間のラジオドラマを生放送でオンエアすることになり、スタジオにキャストとスタッフが集められる。ラジオドラマのタイトルは「運命の女」。熱海に住む平凡な主婦が、漁師である男と出会い、夫と男の間で揺れ動くというメロドラマである。いや、であった。



放送直前に物語の設定が、ひとりのわがままな女優の要望によって変えられてしまったのだ。平凡な主婦が女弁護士に、舞台は熱海からニューヨーク、さらにシカゴに変更された。バタバタと原稿に変更が加えられつつ、ラジオドラマが始まった。ところがスタッフたちは次々と矛盾点に気づく。



その都度、ストーリーを変えていくのだが、矛盾点はどんどん増えていく。本当に物語はエンディングを迎えることができるのだろうか? つじつまがあわなくなる度にあたふたするスタッフたちの様子がとてもコミカルだ。



「これはラジオ局版『ダイ・ハード』だ」と三谷監督自身が語っているが、確かにその通りかもしれない。『ダイ・ハード』も『ラヂオの時間』も、次々と襲いかかる難題を、さまざまなアイデアと勇気ある行動で解決してゆくという点は共通している。



違うのは予算と、殺人シーンがあるかないか。『ラヂオの時間』は『ダイ・ハード』に匹敵する面白さを秘めている。予算がなくても、こんな素晴しい映画ができるのだ。このことを三谷幸喜は『ラヂオの時間』で観客に教えてくれた。十分にオススメできるエンターティメント作品だ。



以上だ。これが、公開当初の評価である。



いまも評価は変わっていない。もともと舞台用に書かれた脚本を映画化したらしい。演出はお世辞にも上手いとはいえないけれど(「じゃ、お前やってみろ」って言わないで下さいね)、でも、お話が面白いのでどんどん引き込まれてしまう。



映画は描かれないもの、映像に映らないものをいかに映ったように見せるか(あるいは想像させるか)が、ポイントになる。その意味で『ラヂオの時間』は想像するスペクタクル映画。完成度は低いけれど、『大怪獣東京に現わる』も意味としては同じだ。こっちも、それなりに面白いです。怪獣映画が好きな人はどうぞ。怪獣は出ないけどね。



追記



『カメラを止めるな』が、この『ラヂオの時間』のパクリという指摘がある。そういうひとは『ダイ・ハード』とビリー・ワイルダー監督のコメディ作品群(『お熱いのがお好き』など)を観るべきだ。自分の指摘が恥ずかしいことに気づくだろう。




続 追記



三谷幸喜監督はその後も何本も映画を撮影するようになった。映画監督としての彼の才能はあるのか? 彼は日本のビリー・ワイルダーとして評価されるようになるのか? 謎である。少なくとも近江俊郎監督と匹敵する素晴らしい監督であることは間違いないが。



初出 「西参道シネマブログ」 2005-08-01



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