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茶王

 「第三回戦のテーマを発表するわ!私の考えたテーマは……『食前茶・食中茶・食後茶』よ!」
 会場がざわめく。
 「うむむ、流石フランス料理の俊英、ジュリアンよ……茶そのものにこだわる我々とは違う発想で、料理コース全体における茶の立ち位置を問いかけてくるとは。やりおるわい」
 「しかし、三献の茶の故事の如く、食前・食中・食後における最適な茶は、茶の種類だけではなく、淹れ方、温度、器など、様々な要素が異なってくるでしょう。思いのほか難しく、選手のセンスが問われるテーマとなりそうです」

 「食前だの食後だの、酒の発想を茶に持ち込むのはどうかと思うぜ」
 陸夫は丸刈り頭を掻きながらぼやいた。
 「でも、テーマはテーマなんだから、考えていかないと二回戦の時みたいに、ティーバッグを幾つも組み合わせるなんて小細工では、到底無理だわ」
 「お困りのようだな、お嬢ちゃん」
  よく響く低い声。見上げると厳つい顔。
 「貴方は、花茶の剛蔵……さん」

(続く)

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