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コスメサイトによる刹那的な集客

化粧品やスキンケアに関する情報サイトの存在には、ブランド側から見ると、ポジティブとネガティブの両方の側面があると思います。知名度の低いちいさなブランドにとっては、より広く自社のブランドや製品の存在を知っていただくための、非常に強力な武器のひとつになります。しかしその一方で、多くの女性にとって、コスメに対する価値観やスタンスを大きく変えてしまったのではないかという思いもあります。
(そしてそれは、消費者側である女性たちだけではなく、コスメブランド側にとっても同様なのかも知れません。)

情報収集力がこの数年で格段に向上したことも関係しているのかも知れないですが、「数」を試したいとする方が増えてきていますし、実際にそれが可能な状況になって来ていることもあります。「お気に入りのブランドやアイテムを見つける」から「色々なブランドで色々なコスメを試したい」という嗜好に変化してきているのだと感じます。

その結果、少し高価なブランドのコスメを試した後でも、自分の肌に合いそうなコスメだと感じても、これをしばらく使ってみようかなという女性がいる一方で、「じゃ次はどれを試そうかな」という感じで、最後まで使わない、継続して使わない、という層が増えているということも起きています。

以前にワンショット消費という言葉が溢れましたが、これまでは手が届かなくて試せなかったブランドでも、取り扱いに注意して少しだけ体験的に使ってみて、満足したら残りの7~8割が残っている状態のものを売るというふうに、上手にサイクルを回している方もいるようです。

また、クチコミの評価そのものにも変化が起きました。もともとクチコミというのは、知り合い同士の間で起きていたものです。精通している人であったり、長く使っている人であったり、そういった人たちが発生源だったのです。しかし現在のクチコミが意味するものは、1回だけ使っただけの見ず知らずのユーザーが書いたレビューやクチコミ、そういう人たちが付けた評価を集計したものを意味するようになっています。

クチコミは、特定少数の信頼関係などの中でやり取りされるものから、不特定多数の中で共有される情報に変わり、常連さんやヘビーユーザーによる評価からスポットユーザーによる評価へと変わっていったのです。

もちろんコスメサイトが便利なのは紛れもない事実だと思います。コスメサイトが登場したことで、コスメブランドの多くは自社の製品をより多くの女性に知っていただく機会を得ることができましたし、消費者側である女性にとっても、より多くの良質なブランドと出逢うことができました。女性たちの率直な体験談やレビューが、ブランド各社の製品力を研磨したという側面もあると思います。

しかしその便利さが際立てば際立つほど、その歪みも大きなものになってきているのかも知れません。ダイバーシティ同様、ブランドや製品がそれぞれ「みんなが違う」という前提に立つ上、コスメサイトを始めレビューや評判を気にしすぎてしまうがゆえに、逆に個性が発揮されにくいという状態を引き起こしてしまっているのかも知れません。

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