『千と千尋』15分ごと区切る②
では前回のつづきから、いきます。
前回、映画には”時間の法則”があることを話しました。
そこで、『千と千尋の神隠し』はどんな物語なのかを調べてみよう、 となったのです。
なので今日、その法則に『千と千尋の神隠し』を当てはめ、この物語の構造を見ていきます。
〈時間分析〉
10分目 …「主人公の満たされない日常」が描かれる
千尋は、両親を置いて、街をふらついています。主人公の満たされない日常、しっかり描かれてます。
15分目 …物語の基本コンセプトの提示
消えかかっている千尋をハクが助けています。これも、はまってる。この物語、千尋はハクに助けられっぱなしです。ハクも千尋に助けられますが、それ以上にハクは千尋を助けている。詳しい内容は、後の回で触れます。
30分目 …転換点1
釜爺とりんの助けにより、湯屋の中へ入っていく。30分目は、「転換点1」です。千尋はこの狭い戸を抜けて、湯屋の中へ入ってく。そして、ここから千尋は“お礼”を言うようになります。これは千尋の中で変化があったということ。よって、転換点と言えるでしょう。
45分目…「状況の変化」と「15分目の伏線を受ける」
ハクが「お母さんとお父さんに会わせてあげる」と千にささやくこのシーン、45分目です。千尋はこのとき生理になってて、子どもから大人へと体が変化します。←(状況の変化)それと、「15分目の伏線」も拾ってます。15分目のシーン、こんな二人のやり取りがありました。
千尋「お父さんとお母さんは、どこ。豚なんかになってないよね。」
ハク「今は無理だが必ず会えるよ」
そして45分目。
ハク「お父さんとお母さんに会わせてあげる」
です。拾ってますね。宮崎さん、さすがです。
60分目…折り返し地点
お腐れ神を大湯へ案内。60分目は、前半と後半を分ける役目があります。これも、見事ですね。無気力で臆病だった千尋が、ここを境にみるみる成長していきます。それまでは、誰かの助けを受けてきた千尋ですが、これを機に自信をつけたのか彼女の行動に覇気が出ます。ここが転換点となっているのは明らかでしょう。
75分目…取り返しのつかない行動をする
怪物化したカオナシと対面し、千尋は出された砂金を断る。で、千尋が砂金を断ったことにより、カオナシ動揺→ 2名、食われます。これは取り返しのつかない行動です。
90分目…自分の力で解決しようと動き出す
ハクを助けるため銭婆婆のところへ行くと決意。ラストスパートに入りました。90分目で千尋は、ハクを助けるため銭婆婆のとこへ行くと決め、自分が引き入れたかおなしと向き合おうとします。うん、うん、しっかり映画の文法にはまってます。
そしてLAST
千尋、両親を人間の姿に戻すことに成功します。ラストでは、主人公が日常に帰るのか、異世界に残るのかが分かれます。これは、完全に日常に変えるサイン。
〈おわりに〉
以上、時間分析でした。
『千と千尋の神隠し』は、きちんと娯楽映画の基本に沿った時間構成がされてましたね。私たちが、この映画を飽きずに見れるのは、この映画が基本構造の上に成り立っていたからだと予想できます。宮崎さんは、かなり綿密に「時間」を構成したのが伺えるでしょう。
で、今回の目的は、『千と千尋の神隠し』はどんな物語なのかを探ることでした。どうだったでしょうか、おわかりいただけたでしょうか。
「いや、わかんねーよっ」て声が聞こえてきそう。はい、結局私もよく分からりませんでした。はは。(ごめん)でもね、まあ、それもそのはずなんです。調べによりますと、この物語、当初の予定とだいぶ内容が違うんです。これ、宮崎さんが描きたかった物語と異なるんです。ほんとは、湯バードを軸に話を展開していくつもりだったが、時間が足りなくなり、何の気なしに登場させたカオナシを物語のキーパーソンとしたんだってさ。
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