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国際信州学院大学の件と、心のハッキング

ネタや釣りという類のものですが、一方でこれは一種のフェイクニュースであり、フェイクニュースの怖さみたいのを感じます。ここではその賛否についてではなく、その現象について見てみます。

目次
・善意のリツイート・巧妙なフェイク?
・心のハッキング
・正義感はスーパーユーザー権限
・拡散の重さ
・フェイクニュースは善良な市民によって広められる
・問われるメディアリテラシー

善意のリツイート

ここまで拡散した理由の一つが、元のツイートを見た人が善意によってリツイートをしたからでしょう。内容への賛同や、あるいはドタキャンする人への懲罰的な感情が後押しとなってリツートボタンを押させたのだと思います。

そこにはフェイクニュースを拡散させたいというような悪意はなく、単純にお店を助けたい、というような善意によって動かされています。もちろん、中にはネタと分かって確信犯的に行った人もゼロではないと思いますが。

この善意によるツイートは何も悪いことではありません。こうしたツイートが社会を変えたり、大きな影響を持ったりすることはあります。こうした声をあげることは民主主義の根本であり、声を通じて社会をより良くしていけるはずです。

巧妙なフェイク?

国際信州学院大学のWebサイトは確かによく作られていますが、ところどころにネタが散りばめてあります。歴史がちょっとふざけていたり、教員も変な研究だったりします。

そして、「国際信州学院大学」のキーワードで検索すると4月の時点で既に架空の大学である情報がいくつか散見されます。現在はこの話題の方が多くなっていますが、話題になる前でも十分、ネタであるということは少し調べれば出てきたと思われます。

心のハッキング

このようにちょっと調べればネタだと分かることでも、多くの人がそれをせず(=ファクトチェック)に拡散させてしまいました。何故しなかったと言えば、ネットリテラシーが低いから、の一言でも片付けられますが、もう少し深く見てみます。

ポイントは「善意」でしょう。ここには義憤といった怒りも含まれます。こうした感情は時に冷静さを失わせる要素でもあります。

つまり心をハッキングし、正常な判断をバイパスし任意の行為を実行させてしまうのです。

正義感はスーパーユーザー権限

何故こうした攻撃が成功するかと言うと、信念・正義感に基づく行為はスーパーユーザー権限で実行されるからでしょう。スーパーユーザー、最上位の権限で実行されるというのは比喩ですが、「自分が正しいと思う行為」に対して自分の中では意義を異議を唱えないでしょう。なぜなら「正しい」と決まっているのですから。

そうして、正義感に駆られてリツイートボタンを押してしまうのです。

拡散の重さ

一方で心がハッキングされたから仕方ありません、というわけにもいかないです。ボタン一つでリツイートできますが、その行為の重さや責任を改めて見つめる必要があります。

良くも悪くもその行為一つで社会を変えうるのです。社会の閉塞を打破する力添えすることもあれば、悪事に加担することもあるのです。いずれにせよ、ボタン一つでできますが、その大きな責任をユーザーは負っているのです。

フェイクニュースは善良な市民によって広められる

今回はネタで大きな実害はなかったですが、これが悪意を持ったもっと巧妙に作られたフェイクニュースであれば、様々な実害が出ていた恐れがあります。

フェイクニュースといえば、権力者や某国の陰謀など大掛かりなイメージがありますが、この事件で見てわかるようにそれを広めるのは何でもない善良な市民だったりします。

問われるメディアリテラシー

人々の心は容易にハッキングされます。かつて一部の人間しか手にできなったメディアという武器は、今や市民の手にあります。今回の事件によって、その武器の使い方について問いただされたのではないでしょうか。

Photo by Jerónimo Bernot on Unsplash

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