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花の都とヴァン・ヴィノ

「何をしているのです」
 男はそう訊いてくる。肚を括ってる、と答えたいができない――喉がロクに動かない、周りの景色や背と尻を預けた木と同じようにカラカラ。
 フードを脱ぎ覗き込んでくる男の顔、その向こうで空が白み始めてる。ああ、肚というのはまだしもカッコつけた表現で、諦めをつけてたってのがより正確。俺は死ぬ。流れ流れて根無し草のまま、胃も頭も空にして、じき昼の熱気だけに満たされるこの荒野で。木が墓標代わりになるだけありがたいと思「うッ」
 せっかくの墓標が離れていく――何かが俺の身体を宙に引っ張り上げる。
「連れていくのですか、司祭様?」
 女の声がする。男の手の中、指の隙間。丸が八つ。
「彼は『この木』に身を委ねた。縁があったということでしょう」
 男が空を見上げる。俺もつられる。
 何か、金色の光。
 クモの糸だ。木の梢からどこか彼方へ張られた糸が、夜露と朝日の淡い光を捕まえている。
「行きましょうか」

【続く】

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