「本番になると実力の半分しか出ないんですよね」と言った後輩と僕との話

僕は高校大学と吹奏楽部に所属していて、それぞれ最上級生になったときに「同じ学年にそのパートの最上級生が僕しかいなかった」というトホホな理由でパートリーダーをやらせていただいてました。大学の時はクラリネットでしたけど僕より上手でしっかりしてる後輩は沢山いたので彼らに任せればいいじゃんと思ったのですがなかなか世の中うまくいかないものです。

ある時、僕らの学年の最後の定期演奏会に向けての練習だったのかなんなのか記憶は定かではないですが、おそらく本番が近い時期の、夜の合奏(隠微に聞こえますが文字通りの意味です)が終わった後、雑談混じりの居残り個人練習をしている時に、フルートの後輩がこんなことを言ってきました。

「僕、本番になると実力の半分しか出せないんですよね」

プロの方はどうか知りませんがアマチュアの方なら結構わかる感覚じゃないかと思います。本番ってどえらい緊張しますよね。ありえないミスも連発します。僕はソロを吹く時に緊張のあまりスラーでつながっていたメロデイを吹く箇所で指が固まってしまいロングトーンになってしまったことがあります(どんだけ)

で、その時僕が特に何の気なしに彼に返した言葉が、彼にとってとても印象的だった、という話を後になって聞きました。僕の返しはこうでした。

「だったら実力を今の2倍にすれば、本番になっても今の実力の100パーセントが出せるじゃん」

冷静になって読んでみると何言ってんだこいつって感じです。理数系はおろか国語も全くダメなのがよくわかる。

ここから得られる教訓のようなものとしては、実力を2倍にすることじゃなくて、この場合の悩みに対しての対策(指導)を極限までシンプルに落とし込む、というところにあるのではないかと思います。

僕の言った言葉は今でも自分でも意味不明ですが、何をしなければいけないのか、何をすればいいのかはシンプルです。「実力」のベースを上げるってことですよね。そのためにしなきゃならないことは練習です。それ以外ない。練習と一言で言っても様々な練習アプローチがあるので「どの練習」というわけではないですが、「実力の半分しか出ないのであればとにかく実力を2倍にベースアップさせる」というシンプルな答え。これを受けて何をどう練習するかは本人次第ですが、努力目標がシンプルなのでブレにくいです。

僕は「吹奏楽指導者」でもないですし「せんせい」でもないので何が正しいとかこうすべきとかそんなのどうでもいいのですが(それを居丈高に語るような資質はないからという意味で)、指導というのは個々の悩みや課題に対するソリューションの提案だと思うんですよね。(「バンド指導」というとバンド全体の音を聴いて、ここをあーしろこーしろって印象ですが、そこには個々の悩みや課題が存在しているので、そこを無視して通るのは難しい。なんとなくのバンド指導だったら何でもいいんでしょうけど)

だから人によってはシンプルではない答え(指導)をした方がよいかもしれないです。ケースバイケース。ただアマチュアの、特に学生の場合ですけど、そんなに複雑なことを限られた時間の中であれこれやる余裕はないです。(社会人バンドでも初心者の場合は下地がないので同じですね)なので、本人が課題を自覚しているのであれば、それをなるべくシンプルに考えられるような、バカでもわかりそうな目標みたいなのを作ってあげると、うまくハマることもあるんじゃないかな、と思います。逆に課題を自覚していない場合は下手にシンプル路線に走るよりは一旦深く掘り下げてみた方が良いとは思いますけど。

それにしても何が人の心に印象として残るかわからないので指導の際の言葉というのは注意しないといけないですね。桑原桑原。

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ONSAの屋号で個人事業主として吹奏楽や管楽器打楽器を中心に、情報サイト「Wind Band Press」、楽譜出版の「Golden Hearts Publications」、セレクトショップ「WBP Plus」などクラシック音楽関連の事業を行なっています。
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