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本当に「有名な曲」がないと集客できないのかどうかという話

日々(主に夜間)にTwitterでホゲホゲ言ってるんですが珍しく反応があったツイートがありまして。

どこか忘れましたがプロの吹奏楽団の演奏会のプログラミングを見て「高校生みたいだな」って感じたのがきっかけだと思うんですけど、実際に演奏会に行く側としては「有名な曲」「知ってる曲」がプログラムにあったほうが安心、という面はあると思うんですよね。プロの仕事(企画の仕事)として、そういうのに寄せていく、知っている曲をプロの演奏で聴いてもらうとかいうのも価値があると思います。

が。

あまりにもそういう演奏会が多くないか、という気がします。吹奏楽なんて日々世界中でアホみたいに新作が生まれている超ホットな現場なのに「日本で売れている曲」「知られている曲」「コンクールでよく演奏される曲」・・・ていう感じのプログラムばっかりだと、「なんかおかしいぞ」と思わなくもない。もし企画の時点で企画担当が「こういうプログラミングにしないと集客できない」って考えてプログラミングしてるんだとしたら・・・そもそも流行ってる曲以外、企画担当が知らないんだとしたら・・・これはプロ楽団の企画担当としては相当ヤバイ(しょぼい)ですよね。

逆に同じプロでもこういう楽団があります。毎回選曲が「流行なんて知るか、良いと思ったものをコンセプトに沿って出していくだけじゃい」みたいなスタンスで、僕も応援している名古屋アカデミックウインズ。6月の演奏会はこんな感じです。

「作曲賞受賞曲」というしばりで、日本でも知られている古い名曲から、まだ知らない人のほうが圧倒的に多いであろう最近の曲までズラリと並んでいます。これをマニアックと呼ぶのはちょっと違うなと思っていて、彼らは曲を知るための努力をしていて、曲を知らない人はその努力をしていない、というだけの話で。なかなか曲をたくさん聴く時間が取れない人に「ちゃんと賞レースで勝ち残ったこんな素敵な作品があるんだよ、流行ってないけど」という感じで新しい世界を見せていく。これもまた、「有名曲をプロの演奏で聴かせる」のと同じで、プロの仕事の一つではないかな、と思います。どちらが優れているとかではなくて。

ただ、別に知らない曲とか日本初演とかそういうのを並べただけで集客出来るわけではないので、肝心なのは「知らない曲を聴きに行くのは不安」という不安を払拭することです。何が不安なのかっていうと「時間を無駄にするかも」っていう不安ですね。時間は返ってこないけど、どんな曲かもわからない曲を聴きに行く不安。

映画とかだとわかりやすいですけど、予告も何も見ないでフラッと映画館でそれを見るってのはもう映画マニアというかその空間が好きとか時間の使い方としてそういう域に達している人なので、だいたいの人はポスター、チラシ、あらすじに加えて予告動画を見てから見に行くかどうか決めるんじゃないでしょうか。

映画の場合はポスターだけでもビジュアルで「こんな感じの映画かな?」なんて雰囲気がつかめて(それが間違っていたとしても)、足を運んだりすることもあるし、同じ映画が色んな場所で長い期間上映されることもあるのでクチコミも映画館に足を運ぶ要因になりますよね。何にせよ「こんな感じなのかな」「この続きが見たいな」「この前後が見たいな」ってのを先に見せておくのは必須項目となっているわけです。それが「時間を奪う」ための術だったりするんでしょうね。知らんけど。

で吹奏楽の演奏会に話を戻すと、予告動画、まずないです。ポスターとかチラシに乗っているのは曲名と作曲家名、バンドのプロフィールと指揮者のプロフィール・・・だいたいの場合は曲目解説もないですね。「曲目解説は現場でプログラム(パンフレット)をもらって初めて読むもの」みたいな謎の常識があるように思います。

これ、ダメですよね。まず行かないですよ。バンドのファンの人とか上記の映画のように「そういう時間の使い方をする人」でない限り。だって「時間を無駄にするかも」という不安をまったく払拭できていないから。

なので練習風景でもいいし他に公開されている他団体の演奏でもいいですけど、事前に「こんな曲やで」「これをうちはこう料理するで」みたいな情報をしっかりを発信しないと、ただ闇雲に「きてやー」といったりチラシをアホみたいにばら撒いたり、何度もリツイートしたりしてもさほど効果ないですよね。

映画は同じ趣味娯楽エンタメの分野で、同じく「時間を奪う産業」で、しかも消費する時間もだいたい同じくらい(2時間くらい)なので、映画の広報宣伝はめちゃめちゃ参考になります。

企画する側が曲を知らないから有名曲や流行曲ばかりになるのはプロとしては論外なので放っておけばいいんですけど(そのうち解散するだろ)、そうでない場合で、なおかつあまり知られていない作品を演奏する時や、あまり知られていない指揮者、客演奏者、ソリスト、などがいる場合には、それを事前に「チラ見せ」したりして興味を惹いてみるのは良い手だと思います。短すぎても伝わらないのですが予告もそれはそれで時間を奪うので塩梅が難しいところではあるんですけど。

せっかくYou TubeがあるんだしFacebookやTwitterにも動画埋め込み出来るので、そういう作品や演者のPVみたいなものはちゃんと作っていく前提で企画を進めていかないと、いつまで経っても「プロ吹奏楽団の演奏会がガラガラで寂しい」っていう状況は変わらないんじゃないかなあと思います。

「続けていればいずれ皆うちのバンド聴きに来てくれるだろう」ってのはただの妄想で、現実には時間に追われている人が多いという認識は持っておいて然るべきでしょうね。何をやるにしても今は「個人の可処分時間をどう(自分たちのために)確保してもらうか」「時間のリソースをどうやって自分たちに割いてもらうか」というのを考えていかないと、何も変わらないんじゃないかなあと思います。強固なファンがついているバンドでさえ、サボっていたら、すぐには気づかないくらいのスピードでファンが徐々に去って行き、気づいたときには手遅れになりかねません。頑張ろう。頑張ろうプロ。

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ONSAの屋号で個人事業主として吹奏楽や管楽器打楽器を中心に、情報サイト「Wind Band Press」、楽譜出版の「Golden Hearts Publications」、セレクトショップ「WBP Plus」などクラシック音楽関連の事業を行なっています。
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