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20000824 シーモンキー

 シーモンキー$${^{*1}}$$には特許がある。「子供の大科学$${^{*2}}$$」という本に書いてあった。アメリカで特許番号3673986$${^{*3}}$$として登録されている。シーモンキーとは塩水に棲むエビに似たプランクトンの一種で成長すると1、2cmぐらいの体長になる。卵は乾燥させて保存することが出来るので袋に詰めれば簡単に流通させることが出来る。というより一度乾燥させないと孵化しないらしい。乾燥卵を塩水に浸けると1日でシーモンキーが出てくる。植物の種のような卵である。広告には卵の中から半身が魚となった赤ん坊がニコッと笑っていたり$${^{*4}}$$、王冠をかぶったシーモンキーがシーモンキーの女王と談笑している絵$${^{*5}}$$が描かれていて子供の想像を必要以上にかき立てていた。
 私も絵の通りの生き物が出てくるものだとずっと思っていた。シーモンキーは小学生の月々の小遣いでは少し届かない値段だったので想像のシーモンキーのみが頭の中でグルグル回っていた。

 それにしてもシーモンキーとは巧く名前を付けたものだ。どう見ても猿には見えないのに「モンキー」と名付けることが出来たのは凄いことである。ネーミングというのは商品を売るためには重要なことであるのがこれで十分判る。同じものが熱帯魚の餌として売られているが、これは通称ブラインシュリンプといわれている。この名前では子供心を揺さぶることは出来ない。

 特許と言ってもシーモンキー自体の作り方ではない。発明の要点はシーモンキー飼育用薬剤のパッケージが二つに別れている点で、第一のパッケージにはシーモンキーの乾燥卵、パッケージを開けるまで卵を湿気らせないための乾燥剤、水道水の塩素除去剤、塩などが入っている。第一のパッケージの中身を水道水に入れるとシーモンキーの生活に適した水になると同時に卵が水の中に入れられ孵化の準備が開始される。第二のパッケージにはシーモンキーを育てるための餌と殆ど無色透明のシーモンキーを観察しやすくするために水に色を付ける染料が入っている。第二のパッケージは第一のパッケージを水に溶かしてから1日経過した後に入れる。
 第一のパッケージの中身を溶かしてから1日経っているので、第二のパッケージの中身を水に溶かそうとした時には既にシーモンキーが孵化しているのだが、小さくて透明なので第二のパッケージの中身を溶かすまでは孵化したことに気付かない。

 ここからが凄い点で第二のパッケージの中身を溶かすと水に色が付いてシーモンキーが見えてくる。何も知らず説明書通り第二のパッケージの中身を溶かした人はそれを溶かした瞬間にシーモンキーが出てきたように見えるのである。

 シーモンキーはアメリカのソルトレーク$${^{*6}}$$が原産らしい。日本にもシーモンキーと同じ仲間のエビが昔からいる。こちらは田圃に発生するエビなので淡水産である。ホウネンエビ$${^{*7}}$$という。これが大発生した年は豊年になると言うことで「豊年エビ」という名前が付いた。シーモンキーと同様に卵は乾燥させることができる。しかし日本ではだれも商品化することを思いつかなかった。

*1 The Amazing Live Sea-Monkeys
*2 子供の大科学 謎の生物シーモンキー
*3 Patent US3673986 - METHOD AND MATERIALS USED FOR HATCHING BRINE SHRIMP
*4 Sea Monkeys Ocean Zoo
*5 SEA-MONKEYS… brine shrimp beasties in a bowl
*6 Brine Shrimp and Ecology of Great Salt Lake
*7 20000619 カブトエビ

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