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20020618 タイムマシン

 タイムマシン$${^{*1}}$$は可能か。タイムマシンという発想は時計からだろう$${^{*2}}$$。「時を遡る」とは時計の針を手で戻すことが出来るということから出てきた発想だろうから、時計が発明される前にそんなことを考えた人は誰もいなかったに違いない。

 新しい概念というのはそんなに簡単に創出されない。大抵の人は考え方、見方を少しだけしか変えることしかできない。これが沢山積み重なって新しい概念が出来上がっていく。そんなに簡単にはできないのである。タイムマシンというのは漫画でも出てくる$${^{*3}}$$くらい現代の人々にとって判りやすい概念であるが、何もないところから突然「時を遡る」という考えは出てこないだろう。

 一旦「時を遡る」という新しい概念が創出され、しかもその概念が判りやすければ、それを現実にしてみたいと思うのは普通の感覚である。過去に戻って人生を修正してみたい、絶滅した生物を採取してみたいなどと色々やってみたくなる。しかしそんなことは可能だろうか。恐らく無理だろう。ここで「時を遡る」というのは「今、現在」から「過去の時刻」に戻ることである。

 時刻とは何か。もともと時刻とは太陽の位置や星の位置のこと$${^{*4}}$$である。太陽が真上に来れば昼、というのが時刻である。それを基にして時計の針が規則正しく動いて時を刻んでいる$${^{*5}}$$。

 太陽や星の位置を含めて全ての世界のものの状態をかつてあったように戻すことが出来れば、「時を遡った」ことになるだろう。それでは「その状態になるまでの時間」が経過しているので、厳密に時間が戻ったことにならないのではないかと言われそうだ。だが世界中全ての物が「かつてあった状態」になっているのだからその状態になるまでの「時間」は誰にも測ることは出来ない。つまり厳密に過去に戻れた訳である。

 こんなことが出来るか、と言えば出来ないだろう。こつこつと大量のエネルギーと時間とをかければ自分の周り半径1mぐらいの範囲で実現すること可能かと思えるかもしれないが、よく見ると机の上にある埃を構成する原子の配列が少しずれていたりして「かつてあった状態」になっていないものなのである。それを全世界に展開するのだから無理に決まっている。

 「光の速度は有限で一定$${^{*6}}$$」という前提を使ってタイムマシンは可能である$${^{*7}}$$という結論を導きだしている説明がある。例えばテレビジョンの映像を光より速く動く乗り物で遠ざかりながら見れば、少し前の時刻に画面に写っていた映像の光に追いつくことが出来るので「過去を直接見ることができる」という。現実には光より速く動けるかどうか誰もやったことがないので判らないが、もしそれが仮に出来たとしてもあまり嬉しくはない。ビデオで録画して見ればそんなに速く動かなくても「過去」が見られるからである。そんな乗り物はタイムマシンでも何でもない。

 タイムマシンが欲しい人にとって、そんな「過去に放たれた光」はどうでもよい。「かつてあった状態」に自分の身を置きたいのである。$${^{*8}}$$の着順が決定してから投票締め切り前の状態に戻りたいのである。

 5分前でもいいから過去に戻りたいと言う人がいるかもしれない。しかし100万分の1秒前でも「かつてあった状態」に世界を戻すことが出来る機械があれば、それで事足りる。少しの時間でも戻れば、何度もスイッチを入れて何万年でも戻ることが出来るからである。100万分の1秒なら簡単かと言えばそうではない。そもそも全世界を戻す方法が判らない。光より速く動いても$${^{*9}}$$駄目である。やっぱりタイムマシン$${^{*10}}$$は無理なのだろう。

*1 20010517 タイムトンネル
*2 20011113 クロノ
*3 ドラえもん ワールド
*4 20020217 正確な時刻
*5 パンフレット-国際原子時・協定世界時とうるう秒
*6 TACラボ(高校生のためのアインシュタインの特殊相対性理論)
*7 タイムマシンは簡単だ!
*8 JRAホームページ
*9 マイクロクエーサー
*10 小室哲哉(前編) | 音楽偉人伝 第7回 - 音楽ナタリー

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