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20011130 Mononcle

 十数年前に「Mononcle$${^{*1}}$$」という月刊雑誌があった。モノンクルと読む。確か十数号で廃刊になった。フランス語で「僕のおじさん」という意味である。

 この雑誌は伊丹十三$${^{*2}}$$が責任編集になっていた。雑誌に登場する人で記憶にあるのは栗本慎一郎$${^{*3}}$$、岸田秀$${^{*4}}$$、南伸坊$${^{*5}}$$、ますむらひろし$${^{*6}}$$、寺山修司$${^{*7}}$$などであった。

 連載企画で寺山修司$${^{*8}}$$が主催していた「びっくり!東京」というのがあった。読者参加型の企画だった。最初は読者が自分で考えて投稿した企画が掲載されていた。記憶にあるのは東京都内で自分を捜して欲しい、という企画であった。記事にはその読者の顔写真が掲載されており、この記事を読んだ人がその人を街で見かけたら肩をたたいて「びっくり!東京」とささやいて欲しいというのだ。叩いてくれた人には1000円を進呈してくれたようだ。どう言うつもりでこの企画を考えたのか説明があった様な気がするが、すっかり忘れてしまった。何れにしろ寺山修司らしさ一杯の企画であった。

 連載何回目かの記事から寺山修司が読者に10万円を進呈するというものになった。記事に暗号が書かれており、その暗号を解いて指示してある日時にその場所に行けば10万円が貰えるのである。当時、私は東京に住んでいた。暗号はかなり難しく毎号解けなかったのだが、ある月の記事の暗号はすぐ解けたので指示された場所に当日向かった。

 場所は営団地下鉄半蔵門線永田町駅$${^{*9}}$$ホームだった。当時、半蔵門線はここ迄しか開通していなかった。指定された時間に到着する車両は10万円を狙うモノンクル読者でごった返していた。

 指定の時間になるとホームで停車していた地下鉄の車両内の一人がビラを捲きはじめた。第2の暗号があったのだ。10万円を狙っている人々はそのビラを手に入れようと殺到した。私も一枚手に入れた。そこにはある本の何頁かに書かれている文字を拾うと10万円の場所が判ると書いてある。本屋を探して駆け込んだ。その第2の暗号を解くと世田谷区の岡本にある聖ドミニコ学園$${^{*10}}$$の近くの「八の橋$${^{*11}}$$」にあるというのだ。最寄りの駅は東急田園都市線の用賀$${^{*12}}$$であった。半蔵門線と田園都市線とは相互乗り入れをしている。そのまま地下鉄に乗っていれば用賀に行けたのであるが、第2の暗号を解くまでそんなことは判らない。とにかく地下鉄に乗って用賀に向かった。

 用賀から聖ドミニコ学園まではタクシーを使った。タクシーは勿体なかったが、10万円が手にはいるならばタクシー代は問題ない。タクシーを降りてから走りながら、川を探した。「六の橋$${^{*13}}$$」など数字の入った橋があったので目的とする橋は近いと悟った。

 とうとう見つけた。人だかりが見えた瞬間、10万円の夢が破れた。10万円は先着1名様だったからである。20番目ぐらいの到着だったらしい。雑誌編集の人に集合記念写真を撮影してもらい、この号の企画は終了した。写真は雑誌に掲載された。

 今ならインターネットを使って不特定多数が参加する宝探しゲームが簡単に出来る。web上の宝探しゲームというのも沢山あるのだろう。

*1 モノンクル | クロニクルズ | 書籍 | 朝日出版社
*2 伊丹十三記念館 伊丹十三という人物 → 伊丹十三とは
*3 Homopants.com Prof.Kurimoto's Web
*4 岸田秀研究室ホームページ
*5 いいまち 日本再発見
*6 ごろなお通信
*7 昭和精吾/寺山修司の世界
*8 TERAYAMA WORLD
*9 東京都千代田区永田町2丁目付近
*10 聖ドミニコ学園
*11 東京都世田谷区岡本1丁目付近
*12 東京都世田谷区用賀4丁目付近
*13 東京都世田谷区岡本1丁目付近

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