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1)幻の西武中央線ゾーン

 鷺ノ宮駅から徒歩数分のところに住んでいるのにも関わらず、どこに住んでいるのか聞かれると必ず「阿佐ヶ谷」と答える友人がいる。彼は大学時代から西武新宿線を最寄り駅に転々と引っ越しているのだが、そのたびに中央線の駅を「俺の駅」といってはばからない。僕はその「実際には西武線が近いんだけど、響きがいいのでので中央線の駅を思わず答えてしまう」エリアを「西武中央線」ゾーンと名付けた。「巨大な横浜駅」と同じ構図だ。(横浜市内であればみんな「横浜」って答える。)そこには架空の「西武中央線」が走っている。ここに居を構えたいと考えていた。
 いわゆる中央線文化に憧れがあるから、と言ってしまえば簡単だが他にも理由はある。妻との出会いが高円寺の居酒屋だったし、吉祥寺の高校に通っていたし、中学まで西武新宿線花小金井駅に住んでいたっていこともあるし、わりと西武中央線ゾーンには馴染みがある。なので、いざ家を探そうとなったときにこの吉祥寺と武蔵関を結んだ線の東側をターゲットに定めた。
 西船橋の社宅に住んでもう10年経つ。妻と結婚が決まって初めは代官山に二人で暮らして、1年間のニューヨークの海外研修にいった後、西船橋駅の社宅に住むことになった。最初は抵抗がなかったといえば嘘になる。なにせ、代官山→ニューヨークのクィーンズ→西船橋だ。都落ち感がある。住んでみるとよく分かるのだけれど、西船橋は乗降客こそかなりの量でそれなりに街は栄えてはいるが、東西線などの比較的新しい路線が開通してから発達した町なので、少しでも駅前から離れるとほとんどお店などはなくなってしまう。お隣の船橋駅をみるとこちらは古くからある駅なので街はずっと大きくて賑わっている。
 しかし住めば都とはよく言ったものでここで三人の子供に恵まれ10年経った。大企業の社宅が多いせいか小学校と中学校の評判は高かったし、都心へのアクセスもいい。なにより今は通勤漫画家として電車の中で漫画を描いたりしているがそれもすべて西船橋から出発する東西線があってこそだ。コストコだってららぽーと「tokyo」bayだってすぐそこにある。
 そこで西船橋の界隈でもいくつか物件をみたのだが…まあ一言でいうと「イメージより高いなあ。」という感じ。住んでいない人たちが思う「西船橋」という響き、「なんか終点で見たことある駅」の感じからすると高いのである。やっぱり。考えて見れが交通の便もいい、公立の小中学もいい、加えて折からの住宅価格の高騰もある。無理もない話だ。
 よって、幻の電車西武中央線がはしる、「西武阿佐ヶ谷駅」や、「西武西荻駅」あたりのエリアで土地を探すことにした。もちろん探してみると「イメージよりすんごく高い」のではあるけれど。

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