七円玉

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読書と生活に関する雑感、仏教を勉強して考えたことを書きます|よりガチな内容はブログで https://taki-s.hatenablog.com/|旧姓ずんだもち

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    作ってみたい料理レシピ乃至作ったもの

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    仏教関連を、ブログよりライトなものとして、ここに仕分けしました。特に初期仏教、大乗仏教、法華経、日蓮が中心です

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    読んだ本の紹介と引用による小品。人文書中心

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日蓮の「竜の口の法難」をどう解するか

ツイートまとめ 文永8年(1271年)9月12日、日蓮(1222-82)が夕刻に鎌倉で捕縛され、郊外の竜の口に連行され、深夜に斬首の危機に遭った難、「竜の口の法難(龍口法難)」について 奇跡とか神格化なのか 私はこれを、妙法に帰依した人間としての振る舞いの極地、象徴的な出来事として拝察しています。 処刑の際に「光り物」が出たことと、難を逃れたのが日蓮の人としての振る舞いによるのだと解釈することは、矛盾しないと考えています。江の島の方から「光り物」が出た事実を語ること自体は

    • 胸臆に憤悱す。日蓮「立正安国論」冒頭から

      ツイートのまとめ ロシアのウクライナ侵攻には、憤り、悔しさ、悲しみ、色んな感情が入り乱れて、ザワついてます。日蓮の「立正安国論」の冒頭を反芻しながら、自分はこの事態にどう向き合うのか、生き方を問いたい。こういう時はたとえ陳腐であっても、借り物より自分の言葉を紡ぎたい こういうのは即時性が大切なのでメモする。「立正安国論」は主人と旅人の対話形式ですが、冒頭、客が主人の所へ来て、この災難のありさまはなんだ? なぜこんなことに? なぜ? なぜ? と畳みかける語りです。そして「主人

      • 仏教史料を読む:日蓮直筆書状(ツイキャス配信、2021.3)

        今年の三月から勉強の整理のために #研究お雑談 と称してツイキャスで配信を始めました。主に仏教史料や論文を読む企画です。ここに過去回のメモを記録します。配信中のコメントを加筆・修正しました。 今日のメニュー①日蓮書状「聖人御難事」の直筆一部 ②抜粋の校訂、現代語訳 ③学説の比較 「聖人御難事」について日蓮撰、1279年、弘安二年十月一日、熱原の法難の渦中、弟子一同に宛て、鎌倉の四条金吾のもとに置くように指示。 書状の背景、熱原の法難についてはブログの「Jacqueline

        • 800年前、疫病流行る鎌倉時代を生きた人たち②

          続篇としての今回は、コロナ禍、疫病と直接関係ないように見えるかもしれませんが、鎌倉時代を生きた日蓮(一二二二~八二)の手紙は、人々の嘆きや苦しみを扱っている点で、普遍性があります。光日尼(こうにちあま)という女性門下に宛てた手紙「光日房御書」を紹介したい。 光日尼は、すでに夫を亡くしていましたが、武士である弥四郎(やしろう)という息子がいました。しかしその弥四郎も、戦闘か何かで亡くなります。 その訃報を受けて日蓮が書いた手紙には、生前の弥四郎の言動が克明に記され、今でもあり

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          ノーマン「歴史の効用と楽しみ」との出あい

          社会人になって間もない頃、出張が続き、職場の席が暖まらない毎日を送っていた。電車や新幹線、飛行機のお供には、いつも数冊の本があった。出張先では必ず、ホテル近くの書店を探し、本を買って帰った。 老若男女のライフヒストリーを取材し、記事にする仕事であったが、三百人ほどとお会いしてきた。数時間の取材後はどっと疲れて、ホテルの外で夕食をとる気力はなく、だいたいは館内のレストランでとった。 そんなお疲れの移動時間には、ライトな新書を好んで読んだ。中でも、新幹線の席で読んだ津野田興一『

          ノーマン「歴史の効用と楽しみ」との出あい

          法華経に説かれる誓願と日蓮による継承

          以前書いたものの、引っ込めていましたが、衆目に晒しておいたほうがよいと思い、ここに再掲します。 noteの更新も滞っていまし、この記事を書いてから久しいのですが、標題の探求はちびちびと進んではいるので、また各論が書ければと思います。 私は以前、大乗仏教における誓願の意義を、「決意」と「誓い」の違いとは何か? という問いを立てて話したことがあります。ここでは特に法華経に説かれる誓願と、日蓮がそれをどう継承したのかについて、ざっくりとですが考えてみます。以下は、私の信仰的解釈を

          法華経に説かれる誓願と日蓮による継承

          一日四時間は散歩する人に感化される

          アメリカの作家・ソロー(1817-62)は、一日に四時間以上は散歩をしないと気がおかしくなると、エッセイ「歩く(Walking)」で記している。 さらに「私は元気を回復したくなると、どこよりも暗い森や、どこよりも樹木が多く、果てしなく広い、しかも町の人間にとってはこのうえなく陰気な沼地を求めてさまよい歩く」(飯田実訳)との一節に出あった。 まじかよ、とこの短編に引き込まれ、半ばから、もう散歩するしかないとまで思い始めた。 夕食後、家を出る前に風呂を沸かしておき、サコッシュ

          一日四時間は散歩する人に感化される

          フェイスブックの居心地考:世間体と社会性のはざま

          久方ぶりにフェイスブック(Facebook)を開いてみると、周囲の投稿が沈黙していました。一斉にパタッという感じです。 以前の私には、いろいろと投稿していた時期がありました。 その頃も、周囲の多数は、いいねを付けるだけで自分で投稿する人は稀でした。次の日、会社でリア友に会うと「あの投稿よかったね」と言われ、ならいいねくらい押せよと思ったり。 ツイッターで呟きが一つもないアカウントは怪しいものですが、実名のフェイスブックではよくあることです。 そういう、人の投稿ばかりをウォ

          フェイスブックの居心地考:世間体と社会性のはざま

          noteの魅力:書き言葉に込められた願い

          noteを始めて半年。やってみて気づいたことを、このお盆の時期に、いったん書物というメディアを通して考えた。すると、この言論空間の魅力を改めて確認できた。 * 映画が観れなくなった。久々に観たら、寒気や冷えを感じて、心身が不安定になった。 私はPTSD(心的外傷後ストレス障害)であるが、症状の一つのようだ。 文章の方が、進行速度を変えたり中断できるなど、自分でコントロールできていい。 かといって、事実は小説より奇なりという経験からだろうか、あまり小説も読まなくなった。主題

          noteの魅力:書き言葉に込められた願い

          日蓮「立正安国論」の基本情報をまとめてみた

          大地震、飢饉、疫病など、打ち続く災害を受けて書かれた「立正安国論(りっしょうあんこくろん)」は、鎌倉時代の仏教者・日蓮(にちれん、1222-82)の代表作として有名です。 そういう内容だけに、新型コロナウイルス感染拡大とともに、再読の機運が高まるだろうと思い、ここに基本情報をまとめてみました。 立正安国論とは文応元(1260)年、旧暦の7月16日、日蓮が三十九歳の時に鎌倉幕府の前執権・北条時頼(1227-63)に提出されました。当時、時頼は重病のため引退、出家し最明寺入道と

          日蓮「立正安国論」の基本情報をまとめてみた

          友情と「ブッダの教え」

          「善き友と共に生きることは、仏道修行の半ばではなく、すべてである」という仏教の創始者・釈尊(ブッダ)の言葉は有名であるが、友情について調べてみると、奥が深い。 釈尊が生きた古代インドで「友」は「ミトラ」といい、その抽象名詞を「マイトリー=友情」といった。そして、この「友情」は、慈悲の「慈=マイトリー」と同じである。つまり、慈悲という崇高な精神も、友だちの延長線上にあるということらしい。 友情という概念の成立について、仏教学者の増谷文雄はこう述べている。 ――古代インドの都市

          友情と「ブッダの教え」

          本屋の閉店を見てきた話

          生まれ育った地で一消費者として、物心ついてから二十年以上本屋に通い、数店舗の閉店を目にしてきた話を書こうと思う。 一つ目は大型スーパーにある小規模の書店。ここでは高校生の時に雑誌、漫画、学参等をよく立ち読みしていた。日常に溶け込んでいた。しかし周囲に競合店舗ができてから振るわなくなったことは、同じフロアで通っていた美容室から聞いていて、いつの間にかその書店は閉店していた。他のテナントが次々と撤退していくなかだったようだ。 スーパーにある書店に岩波文庫が立ち並ぶことが稀であ

          本屋の閉店を見てきた話

          リアル書店で買えた三冊

          Amazonの在庫がかなり品薄になっていて、お目当ての本が手に入らない。散髪の帰りに書店に寄った。お昼時、人はまばら、レジ前には飛沫除けの透明ビニール、小さい子を連れたお母さんが立ち読み、外はけっこう人が歩いている。 最近発売された3冊を買った。久々の書店で少々舞い上がって財布の紐が緩んでいた。 オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』(佐々木孝訳、岩波文庫) タイムリーな出版。訳者は本書の原稿が完成した後に急逝された。御子息による「訳者あとがきに代えて」を読んでみたが、訳者

          リアル書店で買えた三冊

          愛しい者。王と妃の会話から

          家に籠る日々。いろんな感情が起きますよね。ストレスから大切な人を傷つけてしまうといったことが増えていると聞きます。 非常事態だから無理もないとは思いつつ、愛することについて説かれた仏典の教えを見つけました。 ある日、古代インドのある王が、宮殿の見晴らしのよい所で外を眺めながら、王妃と話をしていた。 王は質問した。「王妃よ。世界であなた自身よりももっと愛しい者はあるだろうか?」 聡明で知られる王妃はこう答えた。「王様。わたしは、自分ほど愛しい者はありません」 王と王妃は意見が

          愛しい者。王と妃の会話から

          今の心はこんな感じ

          最近、この絵をよく思い出す。というかこの絵が、今の心境というか。 説明するまでもないですが、江戸時代後期の浮世絵師・葛飾北斎による「富嶽三十六景」の一つ、「神奈川沖浪裏」です。 為すすべがなく船にしがみ付く人たちなのか、それとも遠くにたたずむ富士山なのか、あるいは両方を行き来する。はたまた、その様を眺める感じ。 『北斎  富嶽三十六景』(日野原健司編、岩波文庫)で、三十六景と追加分十景の合計46作品が、各作品ごとに見開きオールカラー、次の見開きで解説という順に鑑賞できま

          今の心はこんな感じ

          密林とリアル書店の行き来

          皆さんにとってAmazonは、まず何屋さんでしょうか。私にとっては第一義的に「ネットの本屋さん」です。 軽く15年は使っていて、もちろん本以外も買いますし、囲い込みはすっかり完了。風呂やトイレと同じように日常に溶け込んでいます。 業界に関わる一人として、本はなるべくリアル書店で買うというのがモットーです。書店の、あの紙とインクの匂いが好きです(末期)。今日は私なりのAmazonの使い方から本をはじめとした買い物の正体とは何かについて書いてみます。 カートの使い方私は興味を

          密林とリアル書店の行き来