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映画評「るろうに剣心 最終章 The Beginning」

※それなりにネタバレします。

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まずは野暮なツッコミですけど、「最終章 The Beginning」って、分かり辛すぎる。
「晩酌ランチセット」みたいな。
「おわりのはじまり」もしくは、「はじまりのおわり」ってことが言いたいことはわかるけど。
・・・例えが微妙でした。思いつかなかったのです。

これにて、映画「るろうに剣心」は終了(のはず)。

第一作「るろうに剣心」
第二作「るろうに剣心 京都大火編」
第三作「るろうに剣心 伝説の最期編」
第四作「るろうに剣心 最終章 The Final」
そして、
第五作・本作が「るろうに剣心 最終章 The Beginning」

不殺を誓った、明治を生きる緋村剣心シリーズは第一作から第四作まで。
今作では、幕末に時を戻し、人斬りだったころの、「緋村抜刀斎」を描く・・・。

第一作〜第四作までのシリーズと、私が相性がそんなに良くなかったのは以前言及しました。
なので、当然のごとく観ることは決めてたのですが、本作も期待はしていなかったのですが・・・。

意外にも、と言うと失礼ですが、はっきりと面白い!

冒頭より、佐藤健演じる緋村が、人斬りモードで、バリッバリに敵を斬り殺しまくる!
レイティング回避のためなんでしょうが、血が赤じゃなくて黒色になっていて、余計に残忍。
走り回ってグサッ!飛び跳ねてズサッ!天井にも床にも血がドバーッ!

こうなるとはっきり分かるのですが、映画「るろうに剣心」シリーズに足りなかったのは、「血」だったのでした。

逆刃刀(さかばとう/通常と刃と「ミネ」が逆になってる刀)で、殺さないように敵を制圧していくのが「緋村剣心」の面白いところですが、どうしても実写にしてみると、無理があるところが多かった。
たまに逆刃刀が敵にあたっても、ぺちっとなるだけで、おもちゃの刀にしかみえないのがどうもね・・・。

でも今回は遠慮なし!
第一作から四作まで、お預けを食らわせ続けられたからこそ、真剣勝負(物理的な意味・精神的な意味両軸で)でのチャンバラが映えまくる。
アクロバティックチャンバラ×血しぶき。圧倒的緊張感の命のやり取り、最高です。

あと、幕末好きには大好物展開多数。

高橋一生演じる桂小五郎もニヒルで良いし、何より新選組の面々の存在感が素晴らしい。
特に名乗らずともなんとなくわかる、でかい顔の近藤勇、不良っぽい土方歳三、美少年風な沖田総司、等々。
過剰なまでにステレオタイプ化された新選組の面々が、おそろいのコスチュームとおなじみの「誠」の隊旗をかかげながら、堂々と道の真ん中でふんぞり返る。

良いですねえ・・・この世の春を謳歌する、絶頂期の新選組。
でも、江口洋介演じる斎藤一は、、、、ちょっと老け過ぎである。

時代に翻弄され、蝕まれていく緋村。
血みどろの生活の中で出会った、謎の女性・巴(有村架純)。
勃発する池田屋事件!緋村抜刀斎VS新選組!うぉぉぉぉぉ!

緋村抜刀斎と沖田総司(村上虹郎)の一騎打ちが始まったりして、燃えるぜ!

やばい!
「X-MEN」シリーズの「ローガン」のように、奇跡的な名作が誕生するかもしらん!

と思っていたが、一騎打ち最高潮のそのとき、沖田総司が突如として咳き込みだす。
その唐突さたるや、気道に麺類でも詰まらせたのかと思うほどで、そのうちに血まで吐き出し、尻切れトンボにチャンバラは終了。

ええ・・・。
解釈の違いかもだけど、沖田総司って、背景でちょっと咳き込んでるくらいがちょうど良いんじゃないか・・・いきなり血を吐いて終了って、そりゃないでしょう。

ここから、物語のテンションがぐっと落ちていく。
徐々に、高橋一生も新選組も物語から退場していき、言っちゃえば「龍馬伝」的な面白さが終了。
そして「るろうに剣心」としての要素が濃くなっていくと、途端にもたついてしまう。

なにせ、佐藤健演じる主人公・緋村抜刀斎が暗い。
原作では、「理想に燃えつつも現実に疲れている」という状態だったので、熱さもあればユーモアもあった。
でも、本作だと、「人斬りに疲れまくっている」状態。ていうか、ほとんど鬱病である。
それが悪いとは言わないが、暗すぎて生気がないから、ユーモアがなくて、観ていてつまらない。

ヒロイン・巴(ともえ)も暗い。
有村架純は見事に演じていて、それは原作からそのまま飛び出してきたような巴なのですが、口数も少なければ声も小さい。原作のように、周囲の連中がコミカルにツッコミ役に回ることもないので、ひたすらに暗い。

中盤以降は、この暗い男と暗い女が、暗ーい話をすることが増え、そうなると・・・もう真っ暗である。あと、口調も異常にスローリー。

巴「あなたは・・・・最近、、、、、よく・・・・・・・・笑うように、、、、なり、ましたね・・・・」

佐藤健、目を過剰に細めながら、

「君との・・・・・生活が ーーーーーーーーーーー 、俺に・・・・しあわせーーーーー幸せを、教えて・・・くれたんだ ーーーーーーーーーー ・・・・・。
俺は ーーーーーーーーーーー 、ぜったい・・・・、ぜったいに、・・・・君を、、、守る。
君だけ・・・・君だけは ーーーーーーーーーーー ・・・・何が、あっても・・・、、、、斬ることは、ない ーーーーーーーーーーー ・・・・ 」

遅い。はよしゃべれや。

本作の敵役にあたる、隠密集団「闇乃武 (やみのぶ)」

これはもう、この映画シリーズおなじみの感じで、つまりは「プロフェッショナル集団にはみえない、コスプレ不良」な出で立ち。

ラスト、緋村抜刀斎の全員ぶっ殺しモードが見られると思ったら、そこは肩透かし。
期待していたような大規模アクションは展開されない。
計略にハマってやる気を失い、かつ怪我だらけで本気を出せない、手負いの緋村。
そんな佐藤健が、細い目をして色々と呟きながら、場当たり的に的と戦ってるうちに、何となく終わってしまうという・・・。

まぁとかなんとか言ってますが。

中盤から終盤にかけては、「いつもの『るろうに剣心』」てことで、相変わらず自分とは合わなかっただけ。
オープニングから中盤までの盛り上がり・ワクワクは、随一!
ただの幕末&新選組好きが刺激されただけだとしても、ここだけでも大いに価値はあった。

「るろうに剣心」を観に行ったのに、あんまり「るろうに剣心」が関係ないところのほうが面白いってのは、非常に皮肉なもんである。

というわけで、これを前菜にして、10月の「燃えよ剣」を楽しみに待ちましょう。

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