獅子文六『コーヒーと恋愛』を考察する
こんばんは。もう、原稿を書いているあいだはTLを見ないことにしますっ。心がしょげちゃうので。大体観測するに、文章がまとまりを帯びてくるとバッシングも落ち着いてくる気がします。なので、最終的に確認作業としてご反応をみるのが精神衛生上よいのかな、ということですね。そのほうが集中力が途切れずフロー状態に入り続けやすい。
そしてご無沙汰しており、申し訳ございません。今回は獅子文六『コーヒーと恋愛』に基づいて演者バイアスを考察していこうと思います。できるかな…。今日も燃える気満々です。
お茶の間と演者バイアス
さて今回は、意外と着目されていない演者バイアスについて考察をしていきます(いま勝手にそう呼びました)。例えば、何かこう主人公であるモエ子の周辺から繰り広げられるドタバタ劇は日常離れしている気がします。物凄く歳下であり後輩で伴侶のベンちゃんとの掛け合いや、突然2人に裂け目を入れる若手女優アンナから巻き起こされる生活革命。
例えば顕著なのは、このタイトルにある「恋愛」というワードを見ただけで反応してしまい対象を穿ってしまうバイアスについて。そもそも人間には「直感」で適宜判断を下すことで脳処理のリソースを省略する機能が備わっており、それを「ヒューリスティック」と呼んでいます。そうした人に付与されている判別の仕方でもって、情報を処理していく。この連鎖から噂は広がるのですが、それについては高村光太郎のある詩とともにまた別述いたします。
昭和の時代—私は平成生まれなので昭和のことは伝聞を通してしか知りませんが、テレビの向こうはもっと何処か現在みたいに負のイメージをまとっていなかった気がするのですね。ビートたけしや萩本欽一、ドリフターズなどがアイドルやタレントを巻き込んでお茶の間を席巻していた時代には、何処か聖性がありました。「ハレ」を象徴するシンボルとして佇んでいたように思います。
現代においてテレビやお茶の間—別の言い方をすると芸能的なものと「繋がりがあるだけで」、「人を陥れることに躊躇がない」、「息をするように嘘を吐く」、「汚い世界に染まりきっている」などの極端なバイアスが見受けられます。果たして本当にそうなのでしょうか?
演者バイアスを腑分けする
私自身がまず別に取り立てて目立っているわけでもなく、相変わらずただの市井の人間なのですが実を言うと私自身、演者の方の深いお話を聞くまではバイアスを持ち無駄に怖がっていました。九州の郊外に住む田舎者でしたので、ステレオタイプで「芸能人はロボットみたいだ」と恐れていたんですね。
実際に接する機会を持つ話を聞くと、ロボットやサイコパスなんてとんでもない、同じただ一人の人間なのですね。自分と何も変わらない。それは勿論、芸があり、オーラがあり、格の違いはあるけれども、きちんと感情が生きている。好悪もあるし、損得や経済だけで動いているのではない。そう強く感じたのです。人の心がある。
では何故バイアスが働くのか?マスコミなどの報道は大きいと思います。どこの組織にも大なり小なり暗部はあるわけで、その仄暗い部分がフォーカスされやすい。もうひとつ深く感じたのは、未知の回路であることです。例えば人によっては「精神疾患」について知識や経験がない場合、極端に怖がります。そして怖がることによって心の病を持っている人はその接し方に怖がり、暴れることがある。普通に接すれば、普通に返報してくれるのです。下手に怖がるから上手くいかない。これは演者にも同じことが言えて、その世界が余りに未知であるがゆえに、どこかクリーンではない印象を持つ。これも陰謀論の一種だと思うんですね。でも実際は濃淡があります。界隈や業界と言っても十把一絡げにはできない。つまり自分が持つ無数のバイアスに常に自覚的でなくてはならないんですね。
逆に言えば、私はどんな人でも(どんな肩書の人でも)好きな気持ちを持って接することができるのは、自分自身のそうした思考の構造を腑分けし、考察することにより他者をも貫いて虚心坦懐に眼差す心掛けができそうな気がするからなのです。
この「虚心坦懐」というワードは汎用性が高いと感じていて、社会の抱える問題解決に役立つ考え方というか心構えのように感じています。だから例えば『コーヒーと恋愛』を読んでいる人がいてもそれは、単にラブコメ要素を欲している恋愛至上主義者なのではなく、このように考察をされることもあることは、最後まで記事を読んでいかないとなかなか分かりづらい気がするのですね。
その意味でもリテラシーについて思いを馳せますし、判断がつかないことや根拠の乏しいことに関しては言及を留保する意味でヒューリスティックを制御するだけでも、全体的な治安が良くなるのではないか、という提案でした。
実はまだ『コーヒーと恋愛』は未了なのです。今から少し、読み進めていきたいと思います。それでは、失礼いたします。