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読書記録

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2020年5月の記事一覧

【読書記録】クヌルプ

普段、ヘッセの詩集はよく読むけれども、小説は何年振りかに読んだ。もしかしたら十年振りくらいかもしれない。ヘッセの小説は『デミアン』が一番好きだ。あの長い、心の旅としか言いようのない暗く、真夜中の一番底を歩き続けるような物語には、苦悩する人達が多く現れた。この『クヌルプ』には、苦悩していると呼べるのは(いや、語られていないだけで誰でも苦悩はしているのだが)クヌルプのみかもしれない。ただ、基本的に三人称で語られるこの物語の中で、クヌルプの苦悩は彼の台詞でしか描写されることはない。

【読書記録】心の青あざ

フランソワーズ・サガンの小説を初めて読んだのは大学生の頃、二十歳前だったように思う。『悲しみよ こんにちは』を読み、私はそこに描かれている「少女」に驚いた。あまりにも「その通り」だったので。『悲しみよ こんにちは』で、サガンは「少女」と言う生き物の持つ潔癖性、純真さ、悲劇性(悲劇を好むところ)、それらが不運にも強烈にあらわれた時に生まれる実際の「悲劇」について書いたように思う。あの小説は主人公が「少女」でなければ生まれなかったし、主人公が「少女」であるからこそのストーリーだっ