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じいさんが言うことにゃ

いえね、年末ということで臨時で入れて貰ってんですけど餅屋だけにあまりにも忙しくて昼休みもとれなくて空腹でカリカリしてるとこへ、釣銭が足りなくなって両替ついでに隣のゲーセンでさぼっ、一休みしてたら、よぼよぼのじいさんが話しかけてきて「自分は悪い陰陽師に呪いを掛けられた某国の王子で美人にキスして貰うと呪いが解ける」なんてことを素面で言いやがるんですが、信じる信じないは別として、美人として選択されたのはちょっと嬉しかったので、まぁ話位は聞いてやらんでもないと思いながらどういう呪いか聞いてみると、どうも年齢的なものでなく人種的なものらしく、じゃあどう転んでもじじいかよと思ったんですが、国に帰れば謝礼は弾むなんて言うので、ほっぺでいい?と聞くと、真顔でイヤとか言うので立ち去ろうとしたら泣いてすがるので、仕方なしに頬にキスすると、凄まじい煙が噴出して、慌てて飛びのけたところ、煙が晴れたら黒人のガタイのいい老人が立ってて、キラキラした目で私を凝視するので大変困ってるところなんです。今。いや、別にバイトが嫌だからじゃないですよほんと、忙しいのわかってますし両替したのも早く持って行きたいんですけど、何しろ頑強な黒い老人が放してくれないのですよ。いや、嘘じゃないって見に来て下さいよ、人だかりできてるからすぐわかりますって、ほんとに黒いんだから驚きですよ、私間近で黒人見たの初めてなんでドキドキですし店長。信じられないのはわかりますから、早く見に来て下さい、というか助けて下さいよまじでヤバイ感じになってきちゃったんで、あー陰陽師の末裔を名乗るサラリーマンが登場しましたよ、なんか両手にどっこしょとか持ってるし。え?それ陰陽師と違う?いや、でも。

あ、はい、そろそろ戻ります。すいません。

昔々、テキスポにて行われた800字お題小説に投稿したもの。
テーマは「ゲーセン・老人・空腹」

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