編集者になって分かった『逃げ恥』の3つの好きなところとすごいところ
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編集者になって分かった『逃げ恥』の3つの好きなところとすごいところ

こんにちは。
チャット小説アプリpeep編集部の緒方ユウヤです。
普段は高円寺でフラフラしています。

今年の3月に「チャット小説編集者が綴る、読まれる作品の書き方 【チャット小説って?編】」という大風呂敷を広げたのですが、「読まれる作品の書き方」については僕の方が知りたいですし、なんなら「2019年3月時点のお前に何が分かるんだよ、なあ」と軽く叱責したい気持ちすらあり、続きは書けていません。

ただ、日々作家さんとやりとりをさせていただいたり、チャット小説を楽しむ中で、チャット小説ならではのストロングポイントについて確信できてきたこともあるので、その辺りについてはまた時期を改めて書きたいなと思っています。



今家でドラマ『逃げ恥』の再放送を観ています。
ご存知の方も多いと思いますがあらすじを。

職ナシ彼氏ナシの主人公・森山みくりが、恋愛経験の無い独身サラリーマン・津崎平匡(ひらまさ)と、あることがきっかけで 「仕事としての結婚」 をすることに。
夫=雇用主、妻=従業員の雇用関係で恋愛感情を持たないはずが、同じ屋根の下で暮らすうち、徐々にお互いを意識し出す妄想女子とウブ男… はたして契約結婚の行方は !? (公式HPより)

僕は編集者になる前から、過去に3周するくらいドラマ『逃げ恥』が大好きです。
編集者になって初めて観た今回の4周目なんですが、「なんでこんなに好きなのか」や「設定のすごさ」がうっすら分かったので言語化してみたく久しぶりに筆を執りました。
ちなみに「良いところ」を挙げ出したらキリがないので、特に「好きだなーすごいなー」と思ったことを書こうと思います。



1.コンプレックスの肯定 

本作は、みくりさん(ガッキー)が自身を「小賢(こざか)しい」と自己認識しており、全11話通して回想シーンや平匡さん(星野源)とのやり取りの中で、何度も(またやってしまった…)と内省する”フリ”があります。彼女は「小賢しい」という(作中何度も登場する言葉を借りるなら)”呪い”にがんじがらめになっているんですね。
キャラクターに”欠損”や”コンプレックス”を付与するのはエンタメフィクションとしては当たり前のことです。

しかし『逃げ恥』のすごいところは最終話。

無事、フリーターながら一歩踏み出し、自身で企画・推進した神社のイベントを成功させたみくりさんは、平匡さんの横で

「私の”小賢しさ”も、役に立つことがあるんですねぇ…」
としみじみ呟くんです。

すると隣の平匡さんが

「え?僕はみくりさんのことを小賢しいと思ったことなんて一度もありませんよ…?」
って不思議そうに言うんですね。


はい、ここ。これです。This is it。涙腺崩壊。
涙水道代があるとしたら8000円です。

すなわち、「長い間コンプレックスだと思っていたことを他者に認めてもらうカタルシス」です。これ、もしかしたら経験された方もいらっしゃると思いますが、最高じゃないですか?

水野敬也さんの『LOVE理論』という恋愛哲学書のあとがきにも同じようなエピソードが描かれていました。
容姿に自信の無い水野さんが大学の頃、付き合った彼女とTSUTAYAでデートしていた時に、「ねぇ!この人敬也くんに似てる!」と言って『タイタニック』のVHSを持ってきて水野さんは店内で泣き崩れてしまったという内容です。これも同じ論理ですね。
このあとがきも読むたびに涙水道代が半端ないことになります。

僕はよく作家さんに”-100が0になる”という表現をすることがあります。
それは「自身のコンプレックスが他者にとっては、なんてことないって言ってもらえた時の感動」のことで、僕は一番強い感動の種類だと思っています。

誰にだってコンプレックスやマイノリティな部分はあるが、それを優しく表現し、肯定する。
『逃げ恥』にはその強い包容力が随所に見られますが、その際たるシーンがこのクライマックスです。

作中、先述したみくりの”フリ”は、最終話まで一度も平匡さんの前では描かれないんですね。
だからこそ感動が最大になる。
脚本の妙です。
このシーンが今まで観たドラマの中で一番好きです。

2.設定大喜利に参加しない

作品作りもビジネスも、企画の大半は「大喜利」だと思います。
本作は「派遣をクビになった25歳の女の子。家事代行として向かった先にいたのは…?」という大喜利が可能です。

僕も作品を作家さんと作る際には、この大喜利から始めることが多いです。回答としては、
・イケメン王子様
・幼なじみ
・学生時代好きだった先生
などなど考えられるでしょうか。

そういった大喜利回答を考えるのも好きですし、こういったベタな展開も好きなんですが、本作は「普通の大人しいITエンジニア(ドンッ!)」という回答なんです。
つまり、設定大喜利に不参加しているんです。

企画段階で先に「契約結婚」という強いおもしろ設定があり(そもそもこの設定を見つけた時点で半分は勝ちだと思います)、このテーマを描きたかったからヒーローは普通の人になったという経緯だったのかもしれませんが、真相は分かりません(加えて対象年齢が高い社会派ラブコメだということもありますね)。

また、「普通の男女の恋愛」は、”お金持ち”、”イケメン”などの分かりやすいモテ要素が初めからないので、好きになるきっかけを醸成するのが難しいです。
そんな中、本作は”助けてもらった”、”甘い言葉で告白された”などの「好きになった瞬間」にフィーチャーしないのもすごいと思いました。

「二人が契約結婚による生活の中で、良いところを見つけながら徐々に惹かれあっていく」様が描きながら、「みくりさんと平匡さんだけじゃなく、誰だってみんな良いところがあるよ」という視聴者を全肯定する優しさが感じられるんですよね。そこが大好きです。

3.ガッキーめちゃんこ可愛い

ガッキーめちゃんこ可愛い



この3つが僕がドラマ『逃げ恥』を好きな理由です。
言語化できてすっきりしました。

最後に。
今年も作家の皆様や、お仕事で関わってくださった皆様には大変感謝しております。

来年は30年連続にはなりますが、「圧倒的飛躍の年」にしたいと思いますので、変わらぬお付き合いのほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

涙水道代ってなんですか?



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緒方ユウヤ

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嘘でしょ!?
taskey Inc. peep編集部所属。国内で最も多くチャット小説を編集しています。熊本出身の90年組。音楽好き。 twitter:https://twitter.com/ogata_yuya_