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【パイオニア】ロータスブリーチデッキガイド

 こんにちは、トレカフリマアプリ「Magi」所属、magi prosの細川 侑也です。
 『テーロス還魂記』が本日発売し、いよいよ来週はグランプリ名古屋とプレイヤーズツアー名古屋。いずれのフォーマットもパイオニアということで、『テーロス還魂記』でマジック全体の熱が上がっている中、ひときわパイオニアは盛り上がっています。
 そんなわけで、本日解説するのはパイオニアのデッキ。
 『テーロス還魂記』で《死の国からの脱出》を手に入れたことで生まれたロータスブリーチについて解説していきます。
 このデッキを使用して1/19のパイオニアチャレンジで予選ラウンドを7-0で通過しました。
 この時の模様を配信しておりました。内容ははアーカイブでも確認できますので、ご興味のある方はご覧ください。⇒【アーカイブ】

1.パイオニア環境のおさらい

 まずは『テーロス還魂記』が加入してからのパイオニア環境について、ざっとおさらいしていこう。
 ロータスブリーチが読みたい方は目次から2へ進んでほしい。
 
 パイオニアはとにかく単色デッキが強い環境だ。


■黒単アグロ
4:《ロークスワイン城/Castle Locthwain》
4:《変わり谷/Mutavault》
15:《沼/Swamp》
1:《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》
4:《血に染まりし勇者/Bloodsoaked Champion》
4:《戦慄の放浪者/Dread Wanderer》
4:《漆黒軍の騎士/Knight of the Ebon Legion》
4:《残忍な騎士/Murderous Rider》
3:《悪ふざけの名人、ランクル/Rankle, Master of Pranks》
4:《屑鉄場のたかり屋/Scrapheap Scrounger》
2:《騒乱の落とし子/Spawn of Mayhem》
4:《思考囲い/Thoughtseize》
4:《致命的な一押し/Fatal Push》
1:《闇の掌握/Grasp of Darkness》
2:《究極の価格/Ultimate Price》

サイドボード
2:《霊気圏の収集艇/Aethersphere Harvester》
4:《強迫/Duress》
2:《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet》
2:《虚空の力線/Leyline of the Void》
1:《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope》
4:《自傷疵/Self-Inflicted Wound》

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■Chonky Red
2:《エンバレス城/Castle Embereth》
16:《山/Mountain》
4:《変わり谷/Mutavault》
4:《ラムナプの遺跡/Ramunap Ruins》
2:《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance》
4:《砕骨の巨人/Bonecrusher Giant》
4:《栄光をもたらすもの/Glorybringer》
4:《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster》
3:《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ/Kari Zev, Skyship Raider》
3:《暴れ回るフェロキドン/Rampaging Ferocidon》
4:《損魂魔道士/Soul-Scar Mage》
2:《朱地洞の族長、トーブラン/Torbran, Thane of Red Fell》
4:《稲妻の一撃/Lightning Strike》
4:《乱撃斬/Wild Slash》

サイドボード
2:《チャンドラの敗北/Chandra's Defeat》
4:《大歓楽の幻霊/Eidolon of the Great Revel》
2:《丸焼き/Fry》
2:《溶岩コイル/Lava Coil》
1:《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》
1:《再燃するフェニックス/Rekindling Phoenix》
3:《トーモッドの墓所/Tormod's Crypt》

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■緑単タッチ黒
4:《花盛りの湿地/Blooming Marsh》
9:《森/Forest》
4:《ラノワールの荒原/Llanowar Wastes》
4:《草むした墓/Overgrown Tomb》
4:《エルフの神秘家/Elvish Mystic》
3:《原初の飢え、ガルタ/Ghalta, Primal Hunger》
4:《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》
4:《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast》
2:《不屈の神ロナス/Rhonas the Indomitable》
4:《朽ちゆくレギサウルス/Rotting Regisaur》
4:《屑鉄場のたかり屋/Scrapheap Scrounger》
4:《鉄葉のチャンピオン/Steel Leaf Champion》
3:《狩猟の統率者、スーラク/Surrak, the Hunt Caller》
3:《キランの真意号/Heart of Kiran》
4:《グレートヘンジ/The Great Henge》

サイドボード
3:《致命的な一押し/Fatal Push》
1:《害悪な掌握/Noxious Grasp》
2:《漁る軟泥/Scavenging Ooze》
3:《自傷疵/Self-Inflicted Wound》
2:《形成師の聖域/Shapers' Sanctuary》
4:《思考囲い/Thoughtseize》

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 その理由で最も大きいのは、多色化することのリスクの高さだ。《神聖なる泉》などのショックランド、《水没した地下墓地》をはじめとしたチェックランドと土地は揃っているように見えるが、ほぼ無条件でアンタップインできる土地はショックランドの他に、《尖塔断の運河》などのカラデシュランドしかない。しかも、カラデシュランドは対抗色しか存在しないため、友好色は2色だったとしても、決して出やすいわけではない。

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 しかも、その一方で単色デッキは最強の土地、《変わり谷》を使うことができる。『ドミナリア』で登場したトリプルシンボルの3マナクリーチャーシリーズも強く、結局2色にするよりも単色にしてしまった方がデッキパワーが高くなるのだ。

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 例えば黒単アグロを見てほしい。単色デッキということで色事故のリスクはほとんどないにもかかわらず、入っている特殊地形は《変わり谷》と《ロークスワイン城》と、マナフラッド対策がばっちりだ。
 入っているカードを見ても、手札破壊に殴るクリーチャー、除去とほぼ万全だ。サイドボードもしっかり揃っている。
 
 単色デッキがなぜ強いかというのを、黒単アグロは体現している。


 さて、そんな単色アグロ~ミッドレンジ環境をぶち壊さんとばかりに近頃頭角を現し、今ではすっかりトップメタへと上り詰めたデッキが、5色白日ニヴ再誕だ。


■5色白日ニヴ再誕
1:《血の墓所/Blood Crypt》
2:《植物の聖域/Botanical Sanctum》
1:《繁殖池/Breeding Pool》
4:《寓話の小道/Fabled Passage》
1:《森/Forest》
1:《開拓地の野営地/Frontier Bivouac》
2:《神無き祭殿/Godless Shrine》
1:《島/Island》
1:《山/Mountain》
1:《遊牧民の前哨地/Nomad Outpost》
1:《草むした墓/Overgrown Tomb》
1:《平地/Plains》
1:《砂草原の城塞/Sandsteppe Citadel》
1:《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
1:《沼/Swamp》
2:《寺院の庭/Temple Garden》
1:《欺瞞の神殿/Temple of Deceit》
1:《豊潤の神殿/Temple of Plenty》
2:《湿った墓/Watery Grave》
3:《ニヴ=ミゼット再誕/Niv-Mizzet Reborn》
3:《楽園のドルイド/Paradise Druid》
3:《包囲サイ/Siege Rhino》
4:《森の女人像/Sylvan Caryatid》
1:《狼の友、トルシミール/Tolsimir, Friend to Wolves》
2:《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature's Wrath》
4:《白日の下に/Bring to Light》
4:《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》
1:《木端+微塵/Cut+Ribbons》
1:《発見+発散/Discovery+Dispersal》
1:《戦慄掘り/Dreadbore》
1:《至高の評決/Supreme Verdict》
1:《漂流自我/Unmoored Ego》
2:《突然の衰微/Abrupt Decay》
1:《コラガンの命令/Kolaghan's Command》
1:《完全なる終わり/Utter End》
1:《ケイヤの誓い/Oath of Kaya》

サイドボード
1:《ヴィズコーパの血男爵/Blood Baron of Vizkopa》
2:《冥府の報い/Infernal Reckoning》
2:《神秘の論争/Mystical Dispute》
1:《探索する獣/Questing Beast》
1:《ラクドスの復活/Rakdos's Return》
2:《安らかなる眠り/Rest in Peace》
1:《殺戮遊戯/Slaughter Games》
1:《陽光の輝き/Solar Blaze》
1:《龍爪のスーラク/Surrak Dragonclaw》
1:《思考のひずみ/Thought Distortion》
2:《思考消去/Thought Erasure》

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 《白日の下に》から《ニヴ=ミゼット再誕》を出し、圧倒的なアドバンテージ量で相手を押し潰すデッキ。混色カードや1枚差しが非常に多く、回していてとても楽しいデッキだ。

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 一見するとよくわからないデッキに見えるが、実は5色ニヴはとてもシンプル。その正体は除去コントロールだ。
 序盤を除去でしのいで、マナクリーチャーのバックアップを受けて早いターンに《白日の下に》で《ニヴ=ミゼット再誕》に辿り着き、リソースを回復する。
 そしてこのデッキは、多くのミッドレンジを粉砕する。デッキに都合7枚の《ニヴ=ミゼット再誕》が入っているため、いくら赤単が《反逆の先導者、チャンドラ》でリソースを獲得しようと関係ない。それを上回る圧倒的アドバンテージから、七色のカードで相手を押し潰してしまえる。
 ミッドレンジ界の頂点でありながら、5色ゆえにサイドボードも豊富だ。《漂流自我》や《殺戮遊戯》を、《白日の下に》から打てるため、コンボにも体制がある。

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 5色であるメリットを余すことなく活用しているデッキだ。
 明確に不利と言えるマッチも少なく、現環境の最強デッキの一角と言って良い。


 そして除去コントロールが台頭すれば、対抗馬として現れるのはコントロール。直近のパイオニアチャレンジを制したのはこちら。


■青白コントロール
3:《アーデンベイル城/Castle Ardenvale》
1:《ヴァントレス城/Castle Vantress》
3:《廃墟の地/Field of Ruin》
4:《氷河の城砦/Glacial Fortress》
4:《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
3:《灌漑農地/Irrigated Farmland》
6:《島/Island》
2:《平地/Plains》
1:《太陽の勇者、エルズペス/Elspeth, Sun’s Champion》
1:《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》
3:《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria》
4:《至高の評決/Supreme Verdict》
4:《アゾリウスの魔除け/Azorius Charm》
3:《検閲/Censor》
2:《時を越えた探索/Dig Through Time》
2:《ドビンの拒否権/Dovin’s Veto》
3:《天才の片鱗/Glimmer of Genius》
4:《選択/Opt》
4:《悪意ある妨害/Sinister Sabotage》
1:《スフィンクスの啓示/Sphinx’s Revelation》
1:《中略/Syncopate》
1:《排斥/Cast Out》

サイドボード
2:《ドビンの拒否権/Dovin’s Veto》
3:《霊気の疾風/Aether Gust》
1:《霊異種/AEtherling》
1:《罪人への急襲/Descend upon the Sinful》
3:《夢さらい/Dream Trawler》
2:《安らかなる眠り/Rest in Peace》
3:《即時却下/Summary Dismissal》

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 いくら5色ニヴが無限のリソースを稼ぐデッキといえど、それはあくまで《ニヴ=ミゼット再誕》が着地したらの話だ。それならば《ニヴ=ミゼット再誕》そのものを打ち消してしまえば良い。

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 青白コントロールには通常、打ち消し呪文が6~7枚ほど採用されており、これは《ニヴ=ミゼット再誕》と《白日の下に》の総数とほぼ変わらない。加えてドロー呪文が潤沢にある青白コントロールと違い、5色ニヴ側はリソース確保を《白日の下に》と《ニヴ=ミゼット再誕》に頼り切ってしまっているため、最初の何枚かを打ち消されてしまうと、すぐにガス欠を起こしてしまう。
 単色アグロにも《至高の評決》がある青白コントロールは、今後増えてくる可能性が高いデッキだ。

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 これだけ環境的に優位性がありながらもなかなか勝ち切ることがなかった理由は、強力な青いビートダウンが2つ、環境に存在するからだ。


■URエンソウル
4:《ダークスティールの城塞/Darksteel Citadel》
1:《島/Island》
2:《変わり谷/Mutavault》
4:《シヴの浅瀬/Shivan Reef》
4:《産業の塔/Spire of Industry》
4:《尖塔断の運河/Spirebluff Canal》
3:《蒸気孔/Steam Vents》
3:《ボーマットの急使/Bomat Courier》
1:《湖に潜む者、エムリー/Emry, Lurker of the Loch》
4:《ジンジャーブルート/Gingerbrute》
1:《搭載歩行機械/Hangarback Walker》
1:《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent》
2:《ギラプールの希望/Hope of Ghirapur》
4:《技量ある活性師/Skilled Animator》
4:《石とぐろの海蛇/Stonecoil Serpent》
2:《王家の跡継ぎ/The Royal Scions》
4:《爆片破/Shrapnel Blast》
4:《乱撃斬/Wild Slash》
4:《幽霊火の刃/Ghostfire Blade》
4:《アーティファクトの魂込め/Ensoul Artifact》

サイドボード
1:《搭載歩行機械/Hangarback Walker》
1:《削剥/Abrade》
1:《霊気の疾風/Aether Gust》
2:《霊気圏の収集艇/Aethersphere Harvester》
1:《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance》
2:《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》
2:《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》
3:《頑固な否認/Stubborn Denial》
1:《アンティキティー戦争/The Antiquities War》
1:《飛行機械の諜報網/Thopter Spy Network》

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■UWスピリット
4:《氷河の城砦/Glacial Fortress》
4:《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
7:《島/Island》
1:《マナの合流点/Mana Confluence》
2:《変わり谷/Mutavault》
3:《平地/Plains》
2:《港町/Port Town》
4:《厚かましい借り手/Brazen Borrower》
4:《天穹の鷲/Empyrean Eagle》
4:《霊廟の放浪者/Mausoleum Wanderer》
3:《ネベルガストの伝令/Nebelgast Herald》
4:《鎖鳴らし/Rattlechains》
3:《無私の霊魂/Selfless Spirit》
4:《幽体の船乗り/Spectral Sailor》
4:《呪文捕らえ/Spell Queller》
4:《至高の幻影/Supreme Phantom》
3:《執着的探訪/Curious Obsession》

サイドボード
2:《石の宣告/Declaration in Stone》
2:《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》
2:《ドビンの拒否権/Dovin’s Veto》
3:《神秘の論争/Mystical Dispute》
3:《安らかなる眠り/Rest in Peace》
3:《残骸の漂着/Settle the Wreckage》

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 単色アグロを殺すデッキを殺すデッキ。メタゲームの産物で生まれた2種の青いビートダウンデッキだ。
 ちなみにどちらも2色ながら《変わり谷》を採用している。

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 この2つのデッキはどちらも似た性質を持っている。単色ビートダウン・ミッドレンジを苦手とし、コントロールに対して相性が良い。
 どちらも打ち消しを擁するアグロながらブン回った時の速度は単色を上回ることすらある。とてもパワフルなデッキだ。
 いずれのデッキも特にChonky Redに対しては厳しい戦いを強いられる。それでも地力の高さから使用者が多く、それゆえに青白コントロールは勝ちづらいフィールドになっている。


 以上が、現環境の簡単なおさらいだ。

2.ロータスブリーチとは

さて、上記のおさらいで一つだけ紹介しなかったのが、コンボデッキについてだ。

 パイオニア環境には、とにかくコンボデッキが少ない。『テーロス還魂記』の《太陽冠のヘリオッド》が多くのコンボを生み出す可能性を秘めているものの、現在まだリストは固まっていない。
 ゴルガリ魂剥ぎはコンボとビートダウンの中間に位置するデッキだ。純粋なコンボデッキではない。

 このコンボデッキ不在の状況こそが、現在のミッドレンジ環境を作り上げているとも言える。現環境のパイオニアにおいて、クリーチャー戦に目を向けることにほとんど裏目が存在しないからだ。
 必然的に少し重く、質の良いクリーチャーが使われるようになっていく。Chonky Redの《栄光をもたらすもの》がその良い例だ。

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 一つだけパイオニアに存在していたコンボデッキは、《睡蓮の原野》と《演劇の舞台》を主軸に据えたロータスコンボだ。

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《熟読》を《二倍詠唱》でコピーし、《見えざる糸》と合わせてライブラリーを引き切る。最終的には《願いのフェイ》か《発展+発破》で勝利するというデッキである。

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 そして今回のロータスブリーチは、このロータスコンボの進化系だ。


■ロータスブリーチ
4:《植物の聖域/Botanical Sanctum》
1:《森/Forest》
1:《島/Island》
4:《睡蓮の原野/Lotus Field》
4:《マナの合流点/Mana Confluence》
4:《神秘の神殿/Temple of Mystery》
4:《演劇の舞台/Thespian’s Stage》
2:《ヤヴィマヤの沿岸/Yavimaya Coast》
1:《タッサの神託者/Thassa’s Oracle》
4:《砂時計の侍臣/Vizier of Tumbling Sands》
4:《樹上の草食獣/Arboreal Grazer》
4:《見えざる糸/Hidden Strings》
4:《熟読/Pore Over the Pages》
4:《巧みな軍略/Strategic Planning》
4:《森の占術/Sylvan Scrying》
3:《時を越えた探索/Dig Through Time》
4:《慢性的な水害/Chronic Flooding》
4:《死の国からの脱出/Underworld Breach》

サイドボード
1:《爆発域/Blast Zone》
2:《濃霧/Fog》
1:《神秘を操る者、ジェイス/Jace, Wielder of Mysteries》
3:《神秘の論争/Mystical Dispute》
3:《漸増爆弾/Ratchet Bomb》
2:《一瞬/Blink of an Eye》
3:《自然への回帰/Return to Nature》

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 《睡蓮の原野》を出してそれを《演劇の舞台》でコピーすることで、5ターン目に2枚の《睡蓮の原野》を用意する。

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 この状態で《見えざる糸》を打って《睡蓮の原野》を2枚アンタップすると、4マナが増える。《熟読》を打つと1マナが増える。この状況を作り上げて、マナを増やしていく。これが以前までのロータスコンボの動きであり、それはこのデッキにも採用されている。

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 だが、このコンボは止まる可能性が多分にある。《熟読》はデッキに4枚しか入っていないし、最終的に大量のマナのために《見えざる糸》も必要になるため、ドローを連鎖させながらもマナを増やし続けなければならない。一度ウィンコンディションになったものの、ループが簡単に止まってしまうのが、以前までのロータスコンボだった。
 しかしこのロータスブリーチは違う。そう、デッキ名の「ブリーチ」部分である《死の国からの脱出》によって変わった。

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 《熟読》で手札を増やして最終的に《見えざる糸》で大量のマナを増やす必要がなくなったのだ。《見えざる糸》も《熟読》も、《死の国からの脱出》があれば墓地を3枚追放するだけで好きなだけ打てるようになったからだ。
 《死の国からの脱出》さえ引けば勝利に変わったのだ。

 そして墓地を肥やすカードとして《慢性的な水害》を見つけたことで、このデッキは最終的に《睡蓮の原野》を引かなくても勝利できるようになった。

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3.ロータスブリーチの魅力

 このデッキの魅力は何といっても、パイオニアの現環境にとてもあっているということだ。
 
 環境で最も早いデッキは黒単アグロか緑単タッチ黒のどちらかだろう。それに次ぐ速度を持つのはChonky Redと、環境の速度は遅い。ミッドレンジ環境だ。
 緑単タッチ黒以外のどのデッキもクリーチャー戦を意識しており、除去を1スロット以上は確保している。良質なクリーチャーと除去を擁するデッキが多く、これが環境の2つの青いビートダウンを押さえつけているのだ。

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 もちろん、質の良いクリーチャーと除去を苦手とする赤単アグロのような高速デッキも存在できない。
 青いビートダウンと高速アグロを苦手とするコンボデッキにとって、今のこの状況は望ましいことこの上ない。

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 また、このデッキは対メイン戦においての勝率がとにかく高い。
 コンボデッキの中でも、クリーチャーを使用するコンボや、置物が重要なコンボの場合、対戦相手の妨害を受けてしまう。前者は各種除去で触られ、後者は《突然の衰微》などに遭う。

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 しかし、ロータスブリーチで核となるのは土地であり、しかもそれは呪禁が付いている。対戦相手に触られようがないのだ。《死の国からの脱出》はエンチャントであり、これを破壊される可能性はあるが、このカードに極度に依存したコンボというわけでもない。

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 だからこそ、このデッキはメイン戦において、想像だにしない妨害を受けることがほとんどない。墓地対策も《漁る軟泥》のような墓地対策は全く効果がない。それこそ、《虚空の力線》や《安らかなる眠り》のような墓地対策しか意味をなさないのだ。

安らかなる眠り

 メタゲーム的に立ち位置に恵まれ、またコンボデッキとしても優れている。これがロータスブリーチの魅力だ。


3.各種カード解説

《死の国からの脱出》

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 現代に蘇った《ヨーグモスの意志》にして、その本家より強いかもしれないカード。
 一度使った呪文が再び墓地に行くというのは、これまでの《ヨーグモスの意志》系カードにはなかった大きな特徴。そのおかげでこのデッキは成り立っている。

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 複数枚引いた場合にも「とりあえず《巧みな軍略》を打ってみるか」といった軽い気持ちで1枚を消化できるし、たった1枚でゲームを終わらせられるため、これまでのロータスコンボが手札破壊や打ち消し呪文に弱かったという弱点を消してくれている。打たれたら即敗北する呪文が4枚加わったようなものだからだ。
 いつでも引きたいため当然4枚。


《慢性的な水害》

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 一度貼りさえすれば0マナで毎ターン墓地を3枚肥やしてくれる優れもの。エンチャントのため触られにくいのもポイント。
 土地と《慢性的な水害》と《死の国からの脱出》でキープするだけで4ターン目に勝てる可能性が高く、そう聞くとこのデッキの凄まじさが伝わるだろう。(3ターン目と4ターン目に3枚ずつ掘り、4ターン目時点で3ドローしているため、先手なら16枚の中に《見えざる糸》があれば勝利)
 《時を越えた探索》を序盤に打つためにもこのカードは重宝する。《巧みな軍略》でもなかなか打ちづらい《時を越えた探索》も、《慢性的な水害》なら4ターン目に2マナで打つことも可能だ。

時を越えた探索


 コンボパーツであり、《時を越えた探索》のコストも軽くする便利なこのカードも、当然4枚。


《森の占術》

森の占術

 《睡蓮の原野》に依存しない構成になったことで抜くことも検討したが、やはり《死の国からの脱出》と《慢性的な水害》と《見えざる糸》が揃って勝つパターンばかりではなかった。
 というか、ドローがほとんど入っていないこのデッキでは、簡単に手札に揃うことがまずない。代わりにドロースペルを入れてコンボを引き込みに行く構成にすることも考えたが、《熟読》は使っていて非常に強いと感じた。
 そのため、《睡蓮の原野》の着地を安定させるべく、最終的には4枚に。


《巧みな軍略》

巧みな軍略

 墓地を2枚肥やせるドロー手段はそれだけで貴重だ。
 4枚から動かそうと考えたことは1度もないし、これからもないだろう。


《熟読》

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 コンボパーツが揃わなかったり、《死の国からの脱出》が引けていない場合に、《睡蓮の原野》と《演劇の舞台》下で活躍する。

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 思いの外上記のケースになることが多く、特に《死の国からの脱出》しかないという状況が多かった。マリガン後に《見えざる糸》を戻すことが多いし、《巧みな軍略》でも《死の国からの脱出》をまず取るからだ。
 そのため、《死の国からの脱出》と非常にかみ合うカードがほしく、その中で《熟読》は最高の相方だった。
 単なる3ドローではなく1枚捨てるというおまけが非常に強い。2枚の《睡蓮の原野》から《死の国からの脱出》を打って勝つゲームが非常に多く、サイド後は墓地対策を置いて減速してきた相手に悠々と《熟読》を重ねて勝利する。
 文句なく4枚だ。


《見えざる糸》

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 《睡蓮の原野》との組み合わせでマナが増え、最終的にはコンボパーツになる。
 ちなみに対戦相手の土地をタップさせられるため、打ち消しを構えている相手にはとりあえず使ってみることもできる。ただしソーサリーなので、相手のターンには使えない。
 コンボパーツなので4枚。


《時を越えた探索》

時を越えた探索

 《死の国からの脱出》に墓地を使うため、3枚に枚数を抑えている。
 コンボさえ揃えば墓地はたった3枚あれば良いが、現実的にそうもいかないのは既に話した通り。そうなると、《巧みな軍略》や《熟読》を《死の国からの脱出》で唱えて、コンボパーツを探しにいくことになる。
 そういった状況で《時を越えた探索》を引いた時に使えない状況が多々あり、4枚は多すぎると感じた。
 ただ、《慢性的な水害》を引いている時はいつでも引き込みたく、《死の国からの脱出》に辿り着くカードとしては《時を越えた探索》は非常に優秀。

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 現在は3枚だが、4枚目を入れたいと思う瞬間があるのも事実だ。


《砂時計の侍臣》

砂時計の侍臣

 《睡蓮の原野》に使用することで、1マナ増やして1ドローできるという優れたカード。クリーチャーではなく実質スペル。
 1マナ増えるというのが中々優れており、例えば4ターン目に《演劇の舞台》をセットし、このまま《睡蓮の原野》になると1マナしか余らずに《見えざる糸》が打てない、という状況から、《見えざる糸》を打つ1マナを捻出できたりする。このカードがあるとキルターンが縮まる場合があるのだ。
 墓地肥やしという意味でも非常に優秀だ。マナは増えるし、カードは引けるし、墓地に落ちる。4枚入れるべきカード。


《樹上の草食獣》

樹上の草食獣


 一時は解雇していたが、2ターン目に《睡蓮の原野》を設置した時の強さを考慮して、再び投入した。
 セットランド回数を増やしつつブロッカーとしての役割を果たせるというのは、唯一無二の性能。1マナであるという点も良い。アグロ系デッキには《樹上の草食獣》の有無が勝敗を分ける。
 このカードの枚数だけは、かなり迷っている。遊びスロットを作る際にまず削るのはここだ。


《タッサの神託者》

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 僅か2マナでゲームに勝てる破格のカード。これがなければ、勝利するのに更にマナがかかっていたため、《睡蓮の原野》なしでは決まらなかった。
 最終的に《見えざる糸》に使うマナを、代わりに《タッサの神託者》につぎ込んで勝つのだが、もしこれが《神秘を操る者、ジェイス》だとしたら、更に追加で2マナが必要になるため、そもそも《死の国からの脱出》+《慢性的な水害》+《見えざる糸》だけでは勝てないのだ。

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 ちなみに戦場に出た時の能力に誘発して除去されても、《慢性的な水害》を張っていれば信心があるため勝利できる。ライブラリーはなるべく0枚にしてから《タッサの神託者》を出すようにしよう。


《睡蓮の原野》/《演劇の舞台》

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 コンボパーツであるこの2種は4枚ずつ。
 《睡蓮の原野》はマリガンの原因にもなるカードなのだが、現状ではコンボに組み込むことがかなりプラスに作用していると考えている。
 この理由についてはこの後の項目で話そう。


《神秘の神殿》

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 コンボデッキの占術の価値は極めて高い。1マナが入っていないこのデッキでは開幕ターンに置きたいし、2ターン目にもそこそこ置けるタイミングがある。
 たとえば手札に《巧みな軍略》、《睡蓮の原野》とあるならば、2ターン目は《巧みな軍略》を打ちにアンタップインランドを置くのではなく、《神秘の神殿》でも良い。3ターン目の《睡蓮の原野》設置のタイミングではマナが余り、《巧みな軍略》はここで消化できるためだ。
 4枚から変えたいと思ったことはなかった。


《マナの合流点》

マナの合流点

 《睡蓮の原野》がない状態でも《死の国からの脱出》を打てるようにするために投入。そしてこれは非常に良かった。
 このデッキで食らうダメージの総数は《繁殖池》とほとんど変わらない。最初の2~3ターンしか呪文を使わないし、《睡蓮の原野》で生贄に捧げてしまうためだ。だから《マナの合流点》が痛いと感じたことはなかった。
 一方で、《尖塔断の運河》の印象は良くない。《睡蓮の原野》を引かずに4枚目の土地を置いてコンボを決めに行く瞬間があり、その際に《植物の聖域》と合わせて8枚タップインの要素があるのは危険と判断した。


4.デッキの基本となる2つの動き

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