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【39】「何を書けば読まれるのか」を解き明かす。

以前から、ライター志望の方から
「なにを書いたら読まれるのか」
との相談をもらうことがあった。


最初はあまり真剣に取り合わなかった。
むしろ「ライター志望の方だったら、書きたいことがありすぎて困るくらいでは」と思っていた。

しかし、よく話を聞くと、もう少し深刻なようだ。

つまり、ライター志望の方で「なにを書いたらよいかわからない」方の悩みはこうだ。


「読みやすい文章」は書ける。
だが「読まれる文章」を書けない。

つまり「メディアの要望に応じて書く」技術面はクリアしている。綺麗にまとまった文章は書ける。

だが「自分で企画して書いて、拡散される」という注文に応えられない、というのだ。


そんなことまでライターなのか、大変だ、とは思う。

確かに、雑誌やマスメディア全盛の時代までは、「こういうコラムを書いてくれ」という注文に答えられればよかった。

だが現在は、webメディアの要求はすっかり変わってしまった。

求められているのは下のツイートのような反応を生み出せる
「話題を提供し、ファンを生み出せる書き手」だ。

「うまい文章」や「わかりやすい文章」の書き手ではない。
「秀逸な問題提起」と「ユニークな思考」をもって、ファンを生み出せる書き手だ。


したがって、書き手のスキルで何が一番重要なのか、と問われたら、間違いなく「何を書けば読まれるのかを、見抜くスキル」と私は回答する。

「わかりやすく書ける文章術」など、二の次、三の次でよいのだ。


実際、修辞学者の野内良三は、「内容が良ければ、書き方はあまり問題にならない」と述べている。

文章は「面白くて、ためになる」ことをもって最上とする。
「面白い」は芸術文の目標、「ためになる」は実用文の目標と言えないことはない。
いずれにしても、内容がものをいう。
つまり、内容がよければ書き方(文章の出来ばえ)はあまり問題にならない。

逆に、それを体得していないと、「無駄な努力」を繰り返す羽目になる。


たとえば、人気ブロガーなどが、「思ったことを書けばいいんです」などと言っていることを真に受けて、本当に思ったことを書くだけに終始した結果、誰にも読まれない。


なぜだろうか。
実は「ぼくの思ったこと」は考えうる限り、最悪のコンテンツだからだ。

元電通のクリエイターだった田中泰延は、「自分の内面を語る人はつまらない」という。

ランチなんか一緒に行くと、急に不機嫌そうに「あたしブロッコリーすっごく嫌い」と告白を始める者もいる。食べなきゃいいではないか。だれも口をこじ開けてブロッコリーを入れたりはしない。

これらの人間に共通する特徴を、できるだけ遠回しにソフトに表現すると、「つまらない人間」ということになる。

つまらない人間とはなにか。それは自分の内面を語る人である。少しでもおもしろく感じる人というのは、その人の外部にあることを語っているのである。

これは、私のメディアを運営した感覚とも一致する。
独りよがりの記事は読まれないのだ。


ただ、学校教育では独りよがりの文章でも許される。
例えば「感想文を書け」という宿題が出るが、これは「私の言うことを聞いて!」の典型的な例だ。

したがって、多くの人は「読まれる文章を書く訓練」を受けたことがない。

だから「なにを書いたら読まれるのかわからない」との悩みは、本質なのだ。

多くのwebマーケターも「なにを書いたら読まれるか」を知らない

一方で、ライターだけではなくwebマーケティングを専門とする方も
「コンテンツ作成」に疎い人は多い。


最近では「コンテンツマーケティング」という言葉が生み出されたが、うまく実践できている会社が非常に少ないのは、webマーケターの殆どが
「良いコンテンツとはなにか」を知らず、
「ウケるコンテンツ」を自分で作れないからだ。

だから「コンテンツ大事だよね」と言ったところで、実践できない。

「マーケティングファネル」
「動線設計」
「ペルソナ」

といった概念的なことや

「検索回数」
「文章の長さ」
「てにをは」
「接続詞」

といった「文章術」のような部分には強いが
「どんな話題がよく読まれるか」がわからないのだから、当然だろう。


せいぜい
「キーワードプランナーで検索ニーズを調査しましょう」
「ヒアリングでユーザーニーズを把握しましょう」
という程度だ。

「◯◯が読まれますから、私が書いてバズらせますよ」
と言えない。

だから、webマーケターは一般的に「コンテンツ作成」よりも「検索ニーズ」や「文章術」を強調する。


しかし、誰もが知るように「書き方」が重要ではないわけではないが
「どんなコンテンツを作るか」のほうが遥かに重要なことは明らかだ。


実際、多くのブログ、オウンドメディアが埋もれているのは
「マーケティング技術が未熟」のではない。
「コンテンツを作れない」からだ。

記事を読んでも、「ふーん」で終わる。
記憶の片隅にも残らず、ファンにもならない。
検索エンジンから来て、去るだけ。
メディア名を憶えてもらえず「Googleの一部」だと思われる。

それでは「コンテンツマーケティング」など、夢のまた夢だ。


したがって、ライターだろうと、Youtuberだろうと、ブロガーだろうと、作家だろうと、映画監督だろうと、すべてのコンテンツメーカーは
「結局、見せ方や手法より内容だろ」
という、身も蓋もない事実を認識しなければならない。

すなわちコンテンツマーケティングは、「何が検索されるか」ではなく、「どうすれば読まれるか」でもなく、「何を書けば読まれるのか」という話から出発する。


コンテンツ作成の「理屈」。

ところが「コンテンツ作成」というと、尻込みをする人が多い。
なぜか、と問うと「再現性がない」という。「才能だ」という人もいる。

本当だろうか。



私はそうは思わない。コンテンツ作成は「理詰め」である程度可能だ。
事実、「スタジオジブリ」の代表である鈴木敏夫は、「アニメ制作は理屈がないとダメ」という。

鈴木さんは、日本のアニメが海外で認められにくい理由のひとつは、作品を感覚でつくっていて理屈でつくっていないからだとよく言います。海外では理屈でつくらないと通用しないのだそうです。

これには私も100%同意する。
記事も同様に、「理屈がないとダメ」だ。


ジョフ・コルヴァンが「究極の鍛錬」で述べたように、物事の上達には「改善が必要な要素を限定して認識」し、「練習を繰り返す」ことが必要だからだ。

究極の鍛錬では、業績を上げるのに改善が必要な要素を、鋭く限定し、認識することが求められ、意識しながらそうした要素を鍛え上げていく。

つまり、「優れたコンテンツ」を再現性を持って生み出すには

1.「優れたコンテンツを生み出す理屈」を設定する
2.「理屈に沿って」コンテンツを作り、反応を見て作品の出来を検証する。

の2つをしつこく回すしかない。


ではその「理屈」の具体例はあるのだろうか。

優れたコンテンツマーケターは、これをすでに理解している。
例えば、以下の記事が参考になるだろう。

最良のコンテンツマーケティング戦略とは? ビジネス成果に貢献する5つのTips(impress)

アンディ・クレストディナ氏が語る、成功する1%のコンテンツマーケーターが実践する5つのTipsを解説。伊東氏によるMozcon2019レポートの最終回

この記事で一番役に立つのは、アンディ・クレストディナが語る
「優れたコンテンツとは何か」
の部分だ。


彼の主張は長いが、要約すれば3つしかない。

1.時間をかけてでも、比較調査記事を作れ。
2.業界の中で頻繁に話題にあがるが、根拠となるデータがないテーマを調査して記事を作れ。
3.インフルエンサーの専門性と拡散力を利用して記事を作れ。

断っておくが、これは「彼が手掛けるサイトにおいて、再現性のある理屈」であり、これをそのまま真似をしてもうまく行かないだろう。


実際には書き手が試行錯誤しながら「自分自身の理屈を見つけること」が、コンテンツメイキングの核心だ。

「絶対に勝てる法則」はないが、「ある程度成功するパターンはある」。
それは、株取り引きと同じようなものと言っても良いかもしれない。


Books&Appsにおける「コンテンツメイキングの理屈」

では、参考として、我々が採用している「理屈」についてもご紹介する。
Books&Appsにおけるルールは以下の通り。

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