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【42】「ライター業でまっとうに稼いでいきたい人」が読むべき話。

ライター業は気楽そうに見えますが、実際には全く気楽ではありません。

それはライター業が本質的にマネタイズが難しく、コントロールできない領域が大きいからです。


したがって、今回の『ライターの教科書』の中心は「ライターが文章で稼ぐ方法」です。

「ライター業」をいかに真っ当に経営していくか、何が今後最も稼げそうなのか、巷で言われる『稼げる』は本当なのかを明らかにします。


三十年前、「文章で稼ぐ道」は狭き門だった。

さて、2020年6月現在「文章で稼ぐ」方法は、webサイトが普及する30年前に比べて、大きく増えています。


逆に、30年前であれば、真の意味で「文章で稼ぐ」方法は、作家になるしか道はありませんでした。

しかし「市場で価格がつく文章」を書ける人は、ごくわずか。「売れないバンドマン」「売れない画家」と同様に、「売れない作家」は貧乏の代名詞でもありました。


もちろん「作家でなくても、文章で食べていきたい」という人もいました。

しかし、結局は新聞社や出版社に入る、などの極めて限られた選択肢しかなく、狭き門であることは代わりありません。

それ以外の選択肢はフリーライター・記者などになり「媒体から仕事をもらいながら食いつなぐ」という選択肢が残るのみ。


もちろん中には雑誌を創刊したり、売れっ子になり頭角を現す人もいました。

しかし、文字情報の流通を「紙」で行わなければならない時代では、莫大な流通コストを担える新聞社、出版社が文章の流通をほぼ独占しており「文章で稼ぐ」は多くの人にとって、現実的な選択肢ではなかったのです。


インターネットは「文章の流通に関する独占」を壊した

ところが90年代の半ばからの「インターネット」の普及が、状況を大きく変えました。

物理的な媒体を介さない通信手段が「情報の流通」を極めて低コストにしたからです。

電話などの音声コミュニケーションは即座に、メール、メッセンジャー、SNSなどのテキストコミュニケーションに代わりました。


そして何より変わったのは「すぐ調べる」ことが可能になった点です。

一昔前まで、調べ物は「紙媒体」の制約の影響で非常にハードルが高く、辞書を引いたり、書店・図書館で本や雑誌を調べたりと、非常に手間がかかりました。
(もちろん「人に聞く」という選択肢を取る人も多かったでしょうが、同様に手間はかかります。)


ところが、インターネットは調べ物を究極に簡単にしました。
特にGoogleの登場以降、調べ物といえば「まず検索」となったのです。

そして「検索」の主体は「テキスト」です。


「webには動画や写真もあるじゃない」という方もいるかも知れませんが、見たい動画や写真を探すときにも出発点は「テキスト」です

現在のところ、脳内のイメージを直接抽出して、言語を解することなくwebを探索する技術は一般化されていないため、現在でも「テキストを制する者はwebを制する」と言っても良いくらいです。


この「テキスト主体のweb」が、最初に莫大な富をもたらした先は、前述したGoogleと、そしてAmazonでした。

Googleは「Googleでの検索結果」と「検索キーワードに対応した広告」を連動させたリスティングという広告形態を生み出し、Amazonは「Amazonの商品をwebで紹介し、買ってもらえたら、売上の一部を分けますよ」という形で「成果報酬型広告(アフィリエイト)」を生み出しました。

彼らは「テキスト情報」を欲しい人に「流通」させることで、インターネットを制したのです。
後発のデジタル広告プラットフォームもそれに追従しました。


これが紙媒体メディアの凋落の大きな要因であることは言うまでもありません。
テキスト情報の流通経路を独占し、大きな富を得ていた新聞や出版社は、こうして力を失いました。


誰でも文章で稼げる世界の誕生

ところがGoogleやAmazonにもできないことがあります。
それは「コンテンツを生み出すこと」です。


新聞社や出版社は文章の流通を担うと同時に、コンテンツメーカーとしての役割も担っていましたから、「コンテンツメイキング」も独占していました。
だから「ライター」として稼げる口も少なかった。


しかしGoogleやAmazonは、web上ではあくまでも情報の「整理」と「流通」の役割しか持ちません。

したがって、「コンテンツメイキング」そのものは世界の誰かに任されているのです。


では、いったい誰がコンテンツを作るのか。
ご存知の通り「誰でも」です。

こうして現在は誰でも「コンテンツメーカー」としてGoogleやAmazonと組むことで、広告収益が得られる世の中となりました。


実際、多くの方が知るとおり、少し前までは個人サイトを運営し、「文章」のコンテンツを生み出すことで、
「アフィリエイト」
「アドセンス」
で、月に数万円〜数十万円といった収益を上げることは、十分に可能でした。

「会社辞めてプロブロガーとして生きる」という人々の出現も、このような状況を反映した結果だと言えるでしょう。
「誰でも文章を書くだけで稼げる」のは、大変なインパクトだったのです。


「誰でも稼げる」が過去のものとなる

ところが2、3年ほど前から風向きが変わりました。
「ブログはオワコン」
「アフィリエイトは稼げない」
という言説が、少しずつネット上に流れ始めたのです。


例えば、こんな記事が2019年末に出ました。私はこのブログが好きだったので、それなりの衝撃を持って、この記事を見ました。

この著者の結論は「オワコンではない」としていますが、ブログの更新はすでに止まっています。

苦しい内情を赤裸々に書いていますが、費用対効果が合わなくなってきたのかもしれません。


実際、稼げなくなりブログを辞める人が増える中で、
「プロブロガーブーム」はすっかり下火になりました。

ではなぜ、彼らは稼げなくなったのでしょう。


GoogleのAIの限界

稼げなくなった人が増えた理由は大きく2つあります。

1つ目は「Googleのアルゴリズム変更」。
2つ目は「プロアフィリエイター」による市場の寡占化です。


まず1つ目の「Googleのアルゴリズム」の話からです。
最も影響が大きかったのは、ご存知、WELQ事件でしょう。

「炎上」が暴いたDeNA劣悪メディアの仕掛け(東洋経済)
なぜニセ情報が大量の読者を獲得したのか

DeNAは、同社が運営する医療健康情報サイトの「ウェルク(WELQ)」に掲載されているすべての記事をいったん非公開にすると11月29日21時に発表した。

人間の健康、あるいは生死にさえかかわるヘルスケア情報について、誤った情報を大量発信しているとして医師が運営するブログをはじめ、多方面からの非難を受け、DeNAは11月25日に「【お知らせ】「専門家による記事確認」および「記事内容に関する通報フォームの設置」について」という発表を行い、薬機法等法令違反に対する専門家による監修を依頼したと発表していた。

ウエルクが行ったことの本質は「Googleのハッキング」でした。

検索アルゴリズム、つまりAIの弱点をつくことで、大量のアクセスを獲得し、そこから広告料を得るというビジネスモデルが一時的に成功してしまったのです。


もちろん、Googleは直ぐに対処を行いました。
検索アルゴリズムの変更は、Googleとってはいとも容易い行為です。
WELQ、およびその類似行為を行っていたサイトの記事は、すぐに検索結果から除外されました。

ところが、それによる副作用もありました。
それは「記事の信頼性」に係る問題です。


AI研究者の新井紀子氏が「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」で述べたように、AIは本質的に「意味」を理解できません。できるのは統計的な処理だけです。

文章の意味はわからなくても、その文章に出てくる既知の単語とその組み合わせから統計的に推測して、正しそうな回答を導き出そうとしているのです。

そして、統計の元になるデータは、多くの人が日々Siriに話しかけることでどんどん大きくなり、それを用いて自律的に機械学習を重ねることで、その精度が上がっていく仕組みになっています。

ただし、その精度が100%になることはありません。確率と統計には、そもそもそんな機能がないからです。

AIには「正しい情報」を特定することはできない。単に「みんなが正しいだろうと思っていること」を表示するだけです。

ところが「記事の信頼性」というのはそのようなものではありません。
多くの人が「正しい」と思っていても、それが正しいという保証にはならないからです。


そこでGoogleは「信頼性」の担保のために何をしたか。

「記事の信頼性」を、「記事を発行しているサイトの信頼性」と「記事を書いた人の信頼性」に置き換えたのです。

「医療機関の発行している記事だから、信頼性が高い」
「医師の監修している記事だから、信頼性が高い」

いまのGoogleのAIは、そう判断するのです。


この良し悪しはともかく、アルゴリズム変更により「権威のないサイト」「権威のない人」のサイトは、検索の上位から除外されました。

その傾向は現在も続いており、同じ情報を発信していても「企業のサイト」は上位に、「個人のサイト」は下位に表示される傾向にあります。


その結果、当然のことながら「個人ブログ」はほぼ全滅しました。
個人ブログがアフィリエイトで稼げなくなったのは、GoogleのAIに、限界があるからです。

稼ぎたいなら、法人化をするなり、その道の専門家としてして名をあげるなりして「権威がある」ことを示す必要がありますが、これは「文章を書いて稼ぐ人」にとっては、大きな打撃となりました。


アフィリエイト広告市場の寡占化

2つ目は「アフィリエイト市場の寡占化」という事実です。


少し前に、私は何社か、アフィリエイトを生業とする企業のPRについて手伝いをしたことがあります。

彼らは確かに、アフィリエイトで大きく稼いでいました。そういう意味では今でもアフィリエイトは全く「オワコン」ではありません。


また、別の一般的な事例で言えば、最大級のアフィリエイトサイトの一つである「CAMP HACK」。
彼らはAmazon、楽天のアフィリエイトを用いて収益をあげていますが、その金額は月間数千万円にも登るそうです。


しかし、これを一介の「書き手」が生み出せるかと言うと、
「コンテンツのテーマ選定」
「コンテンツを生み出すスピード」
「コンテンツの質」
のどれをとっても、素人が一朝一夕に勝てるものではなく、相当にノウハウの貯まっている組織と勝負をするのはどう考えても分が悪いでしょう。


さらに、最近ではGoogle自身が「トラフィックを自社サービスに吸収してしまう」という現象もあります。

大逆風のExpediaに襲いかかるGoogleーー決算に書かれたGoogle Travelの追随
流入減として主要な役割を果たしていたGoogleを名指しで取り上げており、「Googleが自社プロダクト「Google Travel」などに検索のプライオリティーを置き始めている」と指摘しています。

こうした事実から、インターネット上で「誰でも文章を書いて稼げる」は、もはや過去のものです。

過去に「アドセンス」や「アフィリエイト」で稼いでいた人々の現在の主戦場はすでにYoutubeに移行しており、現在はYoutubeで熾烈な視聴回数稼ぎが行われています。


もう文章では稼げない? → そんなことはない

結論として「数年前、主流であった方法は、もはや使えない」となります。「もう文章では稼げない」と思う方も少なからずいるでしょう。

皆が「稼げるならYoutubeやろうかな……」と思うのも無理からぬ事です。

しかし現在、我々は新しい潮流を目の当たりにしています。

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インターネット上における 「生成AIの利活用」 「ライティング」 「webマーケティング」のためのノウハウを発信します。 詳細かつテクニカルな話が多いので、一般の方向けではありません。

ビジネスマガジン「Books&Apps」の創設者兼ライターの安達裕哉が、生成AIの利用、webメディア運営、マーケティング、SNS利活用の…

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