写真作家高橋伸哉氏の最新プリセット
こんにちは。杉本です。
今年も高橋伸哉氏(以下いつも通り伸哉さんと書きます)の新作のプリセットが完成しました。相変わらず日本中を動き回っている伸哉さんの裏でスタッフが人知れず奔走するというのはあるあるなのですが、僕の場合は個展などの関係者と違いプリセット制作が主な仕事です。現場で関わるスタッフと違い、最も移動距離と消費カロリーが小さいであろう地味なデスクワークに終始するというのがバックヤードでの役割ですが、今回も長きに渡る戦いに決着がついたのでプリセットを販売します。後述しますが、今までの制作工程と違う箇所も多いので自分でも新鮮なアプローチになりました。念の為断っておきますが、僕自身もフォトグラファーとしての活動があるので、というかそっちが主だった仕事ですのでプリセット制作は基本的にここだけです。というわけで今回も例に漏れずプリセットの説明書のようなものを書いていきす。
新しいCINEMAシリーズ
今回の制作は僕が自分のプリセットを見直すことから始まりました。仕事で撮影するシーンが多岐に渡り始め、従来のプリセットのみでは対応できない環境が増えたことに起因します。そのため、今までとは全く違ったアプローチで汎用性と色の個性を求める必要がありました。半年ほど掛けてやっと、90点くらいまで来たな…と思った矢先に伸哉さんから、新しいシネマシリーズが欲しいと連絡がありました。この間の良さに強烈な才能を感じます。矢先にというか二日後に来ました。なぜこの人はこんなにもタイミングがいいのだろうと心底不思議に思うと同時に、今ならシネマシリーズを確実に進化させることができるなという感触もありました。いろいろ拘りやコンセプトの違いがあるのでそれらと合わせて書き記していきます。
では紹介していきます。
CINEMA-LN
CINEMA-LNはCINEMA-Lowを進化させたものです。コントラストの浅さが特徴的だったプリセットです。しかし、伸哉さんが以前よりも展示や個展、写真集などでプリントする機会が爆発的に増え、かつ僕がそれを目にする機会も増えたことで、もっとプリント性能にフォーカスしてみようというコンセプトで再構築したプリセットです。Low特有の浅さは残しつつ、より表情豊かに進化しました。新しいコントラストと色調のバランスを楽しんで頂けると思います。少し明るさが増すので気になる方は露光量の調整やシャドウを下げてコントラストを強調してあげてください。さっぱりしているのでとても使いやすいです。
CINEMA-MN
CINEMA-MNはCINEMA-Middleをベースに改良したものです。以前のものよりシャドウ部のキレがよくスッキリした印象になりつつも、撮影した写真が備えるコントラストを尊重してくれるバランスに優れたプリセットです。最も透明感にフォーカスしたプリセットです。ホワイトバランスや色被り補正、カラーグレーディングとも相性が良く広い可変領域を持つプリセットです。
今回も全てのプリセットにおいて、露光量とホワイトバランスの設定を組み込んでおりませんので使用時には必ずご自身の撮影設定に伴って露光量とホワイトバランスを調整してください。
CINEMA-PN
CINEMA-PNはCINEMA-Prideの派生プリセットです。前回はコントラストを高める印象でしたが、今回のものはもう少し色味とコントラストに幅があり、極端さを小さくして調整を容易にしてあります。
CINEMAシリーズの中では構成が最もシビアだった分、調整に難儀しました。
中間調のヒストグラムが浮き上がるようにしてあるので、プリセットを当てた後に、基本補正を調整してあげるとかなりの範囲をカバーできると思います。
一方で、当てて終わりという概念とは一番遠いプリセットなので、皆さんがご自身の写真に合わせて調整や練習に使えると思います。また濃度を薄めて使用する場合とも相性がいいと思います。質感がはっきりした印象になるように仕上げてありますので写真の構成要素が多い引きの写真のような場面で使いやすいと思います。
CINEMA-Mellow
CINEMA-Mellowは僕が販売しているプリセットであるMellowを伸哉さん用に作り直したものです。販売した時にプレゼントしたのですが、気に入って頂けたようでそれを今回伸哉さんのようなポートレートによりマッチするように組み替えました。特有の色が乗るのでいつでもどこでも使えるというよりはある程度相性の部分はあると考えています。しかし淡い雰囲気は今までのプリセット群の基礎構成とは違い、これはこれで遊べるプリセットになっていると思います。僕自身は気に入っています。こういう、優しいけどシャドウの暗さがしっかり残る写真というのは好きです。こちらも基本補正のみで調整が簡易に行えるようにしてあります。
NEW-ONE
NEW-ONEはベースのない完全新作プリセットです。僕が半年掛けて制作したプリセットがこれです。この手法をCINEMAシリーズと融合したものが先に述べたものです。このプリセットは僕の従来の制作手法からすると革新的で、写真に大きな変化をもたらしました。汎用性と色の個性のバランスを突き詰め、それでいてカバーできる色の幅と明るさの幅を意識したものになっています。今回伸哉さんに最初に見せたのもこのプリセットです。少しだけ使用に独特の注意が必要です。
一つ目は、このプリセットはパラメータの都合上明るさが浮き上がります。元々アンダーに撮影された写真ならいいのですが、明るいなと感じる場合は露光量を下げる、コントラストを上げるなどして調整してください。基本的には露光量の調整でいいと思います。次に、色味もあっさりしています。ですから、適用した写真の中で目立って欲しい色があればHSLスライダーなどを使って特定の色の彩度を上げたり下げたりして調整してください。僕はもうプリセットは「当てて終わり」の時代は超えたと考えています。下地として使用しそこから自分の写真とのマッチング、落とし所を見極めるまでがプリセットの果たすべき課題だと思っていますので、ぜひ取り組んでみてください。非常に使いやすいと思います。
一律に濃くしたい場合は自然な彩度の調整でも良いと思います。特にプリントが前提の写真では濃さを気持ち多めに載せても機能すると思います。
もちろん部分補正と併用して頂いても問題ありません。基本補正の動ける幅も大きくとってありますので初心者でも安心して使える構造にしてあります。
NEW-ONE-HiContrast
こちらはNEW-ONEをベースにコントラストを高い位置に設定したものです。シャドウをしっかり引き締めることでハイライトの気配も強めてくれます。元々のコンセプトとしては、NEW-ONEより多少調整量が増えても良いからもう少し絵力の強いものにしようと思っていたのですが、いざ作ってみたら想像を超えて使いやすくなりました。元々ハイライトが強い場合には、強調され過ぎてしまうことがあるので、その場合には個別に調整してください。色数が少ない写真では彩度が落ちすぎるケースがあります。その場合は彩度や自然な彩度でフォローしてください。以前にも言いましたが、僕個人は写真をデータと呼ぶのはあまり好きではありません。しかし一方で写真がデジタルで表示される瞬間が訪れる以上、写真は物理的にはデータであるという側面を持つのも間違いのない事実です。故に必ず品質の問題が付き纏います。プリントで見せるからアナログでしょと思う方もいるかもしれませんが、出力工程で必ずと言って良いほどデジタルである瞬間は訪れるので、それならば写真のデータとしての状態を守りつつ最高の状態で出力したいという願いを込めて制作しました。NEW-ONEシリーズは完全に新しいシリーズですが、僕自身はすでに通常の撮影や仕事の撮影、納品及び印刷などで多用しています。さまざまなカメラメーカーのレビューやスマートフォンで撮影した写真にも適用できることは確認済みですので新作とはいえ、安心して使っていただけるかと思います。
特別なプリセット
ここまでが今回の新作で僕が制作したものになります。そして今回特別に、伸哉さん本人が作ったプリセットがもう一つあります。
虹龍-CINEMA-Original
虹龍-CINEMA-Originalはインパクトの強い作りになっています。少しレトロな雰囲気にもなりつつ色味ははっきりしていて、コントラストの方に幅があるような構成です。
僕はプリセット制作において、超理詰めで物事を考えていくタイプです。伸哉さんは逆に超では済まない次元の感覚派なので、この作りになった経緯はわからないのですが、実際に使用してみるとコントラストと色調のバランスが絶妙なところに落とし込まれています。写真に触れてきた数が違うので、感覚派と言いつつも経験に裏付けされた技術なのだと思います。散々プリセットを作ってきたからわかりますが、偶然ではここには落とし込めないです。濃さとコントラストをバランスさせるのは非常に難しいので、そういった側面から見ても面白いプリセットになっています。命名も伸哉さん自ら行ってくれました。
また、現行のLightroomにはプリセットの適用量を選べる項目がありますのでそれらの機能と合わせて使うことでより高いパフォーマンスを発揮できると思います伸哉さん初の自作プリセットですので、ぜひ試してみてください。
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今回のプリセットも非常に使いやすい作りにしているのですが、今までのものとの最も大きな違いで言えば、伸哉さんが紙媒体やプリントで活躍する機会が増え、焦点をリアルに合わせたことだと考えています。デジタルベースで写真を扱う際はもちろん、プリントする時にもある程度簡易な調整でいけるというのは今までにない発想でした。テストプリントも50枚ほどしたのですが、どれも色の破綻や肌の諧調の破綻などは起こさず、綺麗に出力することができました。写真をデジタルのみで終わらせないという伸哉さんの写真作家としての活動にフォーカスしたプリセットですが、通常のSNSでの使用でも抜群に使いやすいのは間違いないと思いますので、皆様もぜひ使ってみてください。
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