アスパラを持って走る娘
雨が地面をたたきつける音が聞こえる。
竹富島に台風が近づいていたので、1日雨が降ったり止んだりしていた。3人の子どもたちとだらりと過ごしていた。
午後、雨が弱くなった頃、5歳の末っ子は何を思ったか庭でひとりで泥遊びをしていたらしい。息子たちが言うには、泥を窓になすりつけていたらしい。「らしい」と言うのは、もうわざわざ確認するのも億劫で、もう好きにしてくれと投げやりな気持ちがあったからだ。
私は、スキあらばスマホを見てしまうし、寝てしまうし、掃除や洗濯、家事はほぼ全て好きじゃないし、まあ自堕落な人間だ。母親が向いてなさすぎると思う。だらだらするのは好き。それなのに、だらだら生産性のない時間を過ごしていると気分が悪くなってくる。なんてめんどくさい性質だと思う。だらだらするなら気持ちよくだらだらすれば良いのに!!!
そんなこんなで、今日はひたすらだらけて過ごしていたが、気持ちが落ち込んでいった。
夕方、通販で頼んでいた鍋が届いた。取手が取れて、火やオーブンにかけられ、最近購入したお気に入りの大同電鍋に合わせて使える。食卓にそのまま出せて、蓋もついている。しかもデザインもかっこいい。
取手をカチャカチャつけたり外したりしていたら、だんだん気持ちが楽しくなってきて、子どもたちに「ほらほらー、ここに変哲のない入れ物があります。これを付けると、ハイ!鍋になりますー」とマジックのように踊りながら見せてみた。外じゃ絶対そんなことしないキャラですが、子どもたちの前だとつい調子に乗りがちなのだ。
そうしたら子どもたちは「おおおおお、すごい!」とサクラかと言いたくなるようなリアクションをとっていた。素直でかわいいな。好き。
このあたりからだんだん気持ちが晴れていった。やっぱり「動く」のは大切かも。北海道の叔母から、立派な産直のアスパラガスが届いた。ちょうど雨が止んでいたので、次男と末っ子を引き連れて外に出て、ご近所にお届けすることにした。
雨上がりの竹富島の道を、アスパラを両手で抱えて走る5歳児の姿は、見事なまでにトトロのめいちゃんだった。
「俺にも持たせて」と次男が言うと、「いや!!」と力を込めて抱え直し逃げ出した。
私たちの暮らす竹富島は、伝統的建造物保全地区になっていることもあり、地面がサンゴ砂だ。コンクリートではなく、砂地なのだ。転んでアスパラが地面に突き刺さったらどうしよう…と頭の中に地面から伸びるアスパラを思い浮かべながら子どもたちを追いかけたが、幸いにも刺さらなかった。よかった。
こうしてご近所さんにアスパラを渡して歩いた。「よかったらこれ持っていって!」といただき、なんやかんや増えて、次男は「取引みたいだね。竹富島の人は優しいね」と言っていた。
帰宅して、ふと見ると、庭の真ん中に末っ子の泥遊びの跡が残っていた。親の仇かというほど泥にまみれたビーチサンダルが横に落ちていた。それも微笑ましく思えた。
夜はアスパラにオリーブオイルを垂らして蒸し焼きにしたらご馳走ができあがった。
こうして振り返ると、なんの変哲もない雨の一日でも、子どもたちといるとなんと飽きないことかと気づかされる。そんなワンオペの土曜日。
ちなみに、明日もワンオペだ!!!
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