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☆ひとつぶやき短散詩文☆

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つぶやいたひとつぶやき短散文、詩くじり(散文詩)など
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記事一覧

『少女のころ』


置き去りにされても

永久(とわ)にしようと閉じ込めた
長すぎる少女の時を
儚さ抱(いだ)いて憂うのか


見果てぬ夢と知ってなお

刹那の瞬きに掻き消えた
短すぎた少女の頃を
それでも愛しく惜しむのか

『少年のころ』


置き去りにしても

夏と競って駆け抜けた
幻のような少年の頃を
それでも共に懐かしむのか


留まることをあきらめてなお

晩夏の空に焼きつくほど
鮮烈すぎた少年の時を
互いに黙して分かつのか

『夜の帳』

夜の帳がおりる頃
その際(きわ)に絡みつくきみの吐息

しっとりと忍び込む
露を含んだ宵の匂い

宙(そら)を宿す眼差しが
熱を帯びて見つめている

紡がれた濃紺のビロード
薄く織られて波打つヴェール

それは絹の光沢を放ちながら
やわらかい素肌に纏う衣(きぬ)が如

『罪を雪げず』

ちらちらと散る雪が
ふわふわと降り積もる
きみのつけた足跡を
少しずつ見えなくして

同じように覆い隠された
赦されないぼくの足跡は
白いブラインドの下で
責めないきみの眼差しに慄く

いっそ踏みつけられたまま
上塗りされさえしなければ

黒いシミにはなれたのに

『 raison d'etre 』
何故想う。
何故想っているかも判らぬままに。
いつ想う。
いつから想っているかも判らぬままに。
何想う。
何を想っているかも判らぬままに。
誰想う。
想う人は判っているのに。
足りないのか。
持て余しているのか。
必要なのか。
必要ないのか。

『パンドラの夢』

恋いくつ、なくしても
愛ひとつ、のこればいい

涙いくつ、おとしても
笑顔ひとつ、のこればいい

何をいくつ、てばなすも
心ひとつ、のこせばいい

心、待ち
心、得て
心、満ち
心、萎んで
心、泣く

待つ人を
待つ自分
待つ時間
待つ場所で
待つ心

待たされるだけ
待たされて

待つものは来ない

待たぬふりして
待つものは

今日か
明日か
明後日か

はたまた

我 夢の中のみか

雲の彼方
さがしてみても
きみはいない

あの空の空
心 彷徨せ
ひとり気づく

きみは ここに

きみはぼくの中に
いつも灯っている

地に生まれ
水 育みて
木 寄り添い
風にのる
火の力以て
天に還る

──いや。

天より生まれ
水 育みて
木 寄り添い
風にのる
火の力以て
地に還る

……だぁな。うん。

ふたり寝に
溶け合う鼓動
重ねても
かりそめの宿
かりやどの肌

長らく下書きに入ってる、中途半端なストーリーのイメージ(笑)

『扉』

扉を開けば、そこには闇の粒

そのひと粒ひと粒が流れてこぼれ落ち
弾けた先に広がって行く様を見ていた

果てのない闇

生まれ落ちた闇は
しかし、闇の中では姿も見えず

かと言って、消えもせず
ただ、そこに佇む気配だけ

その気配の強さとは裏腹に
闇色は扉の奥へと消えた

水色の雫は天のシロフォン

時に優しく
時に激しく

あらゆるものを鍵盤にして
きみもそのひとつになる

きみの肩を叩いた音は何の音?
きみが肩を落とす音

きみの頬を叩いた音は?
きみが涙をかくすヴェール

ならばこの手で拭おうか

混じり合って伝い落ちる
きみの水色の雫ごと

通勤列車の中で不思議な光景を見た。パッと見、女の子と見紛う様な色白華奢な男の子が、前に座る女の子の髪を一房ずつ捻っている。まるでアレンジするかのように。猫を撫でるように指をスルリと顎に滑らせるサマは、まるで一昔前の少女マンガのワンシーンのよう。この手は読んだことないけど(オチ)

月に還りたい


連れて行って、わたしを

あの故郷(ふるさと)へ


もう、ここにはいたくない

もう、ここで生きていたくない


わたしが還りたいのは

象牙色に輝く、あの場所


連れて行って、あなた

誰も知らない、この夜に


この身を

この心を


誘って