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〜寝物語に読んどくれ〜

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【目次】→ https://note.mu/yuurin/n/n89cdf4cc04d4   不思議系小説モドキ
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【寝物語に読んどくれ~目次】

 
 
 
【マガジン】

☆月待ちの宵
 〜草の章〜 〜花の章〜 ~樹の章~
☆一夜に咲く永遠の花
 〔前編〕〔後編〕
☆DOLL
 〜表面〜 〜裏面〜 〜底辺1〜 〜底辺2〜
☆ラストノートが消えるまで

*****

☆薔薇の下で~Under the Rose奇譚~〔全13話〕
【マガジン】
 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩
 ⑪ ⑫ ⑬
 
 
 
*****
 
 
 
【その他

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ラストノートが消えるまで

ラストノートが消えるまで

 
 
 
最後の匂いを
あなたにあげる



 香水に、それほど詳しいわけじゃない。

 せいぜい、トップノート、ミドルノート、ラストノートと変化することを知ってるくらいだ。

 トップノートは、香水をつけて20分程度。

 ミドルノートはトップノートの後、2時間程度。

 ラストノートは、さらにその後、半日程度。

 ものによっては、24時間以上香るものもあるらしいから、つけた人間の持つ匂い

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月待ちの宵~樹(いつき)の章~

月待ちの宵~樹(いつき)の章~

 
 
 
〔草の章〕〔花の章〕
 
 
 
~月待ちの宵~
 
 

 遥か昔から
全てを見つめて来た

私から見える範囲のすべてを

 


 
 もう何年、何十年、何百年……いや、何千年かも知れない時を過ごして来たのか。

 それすらも、私の記憶には留まっていなかった。同じようでいて、毎日、毎時間、毎分、毎秒、違う景色を見続けて。

 ただ、気に留めていたのは、いつも大体同じ場所にいる花(

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DOLL〜底辺2〜

DOLL〜底辺2〜

 
 
 
私の罪は赦されない
赦されなくていい
 
私がされたことが罪ではなく
私がしたことが罪だと言うのなら
 
神にも誰にも
赦されなくて構わない
 
 
 

 
 

 幸せ、と言うものは、こんなにも儚く一瞬で消え去ってしまう。妹がいなくなり、母がいなくなり、父がいなくなり──。

 私は天涯孤独の身となり、ひとり彷徨って浮浪児になりかかっていた。そんな私を拾った金持ちの夫婦──養父母

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DOLL〜底辺1〜

DOLL〜底辺1〜

 
 
 
はじまりは──?
 
不幸は煤のようにこびりつくのに
幸は吹けば霞んで行く砂のようで
 
 
 


 
 
 ここに来た時、私は20歳。

 家族がいなくなった私を拾い、数年間養ってくれた金持ちの夫妻が亡くなったのを機に全てを清算し、ひとりで旅に出たのだ。養父母が残してくれた金も底をつくと言う頃、働き口を探していたところに、このサロンのオーナー代理だと言う男に声をかけられた。どうや

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DOLL〜裏面(ウラメン)〜

DOLL〜裏面(ウラメン)〜

 
 
 
どこからか聞こえる
 
誰かが私のことを呼ぶ声が
 
 
 


 
 
 私の一番古い記憶は微かだ。でも、とても優しい笑顔。女の人と──。それが誰なのかはわからないけれど、私の家族だった人なのかも知れない。

 

 気づいた時には既に、私はここでこうしていた。豪華で広い部屋の中、周りには私と同じくらいの女の子たちが、ただ黙って座っている。皆、綺麗な子ばかりで、私が何故ここにいるの

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DOLL〜表面(オモテメン)〜

DOLL〜表面(オモテメン)〜

 
 
 
きみを救い出してあげたかった。
 
こんな牢獄のような場所から
輝く陽の光の下(もと)へ──。
 
 

 

 
 父亡き後、何くれとなく世話をしてくれていた男爵に連れられ、郊外に佇む豪奢なその館を訪れたのは秋の入り口の頃。

 貴族や金持ちが夜な夜な集う秘密のサロン。仮面をつけていても見目麗しいとわかる男たちにアテンドされる館内、抑えた照明の妖しい雰囲気が纏わり付く。

 ぼくは

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一夜に咲く永遠の花〔後編〕

一夜に咲く永遠の花〔後編〕

 
 
 
 ひとりで店を切り盛りするようになった鷹征は、忙しいながらも平穏な毎日を送っていた。
 ひと月かふた月に一度は、売り上げからいくばくかの金を持って長尾夫妻を訪ねている。ふたりは「金などいらない」と言っているが、鷹征が訪ねて来る事自体は喜んでくれていた。
 

 
 いつものように夫妻の住まいを訪ねる途中、長尾はひとりの娘が数人の男に囲まれている場面に遭遇した。
 当たり前に助けに入る

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一夜に咲く永遠の花〔前編〕

一夜に咲く永遠の花〔前編〕

〔さりげなくご協力戴いた方々〕
☆鶏三昧さん
☆ゆき坊さん
☆雨水太郎さん
※何の協力かは文末参照
 〔 ↓ ごめんなさい、すっごい下の方w〕
 
 
 
*****
 
 
 
 祭の季節ではなくとも、参道近くに連なる出店。月行事がある日の昼間は、人が賑やかに行き交う。
 
 そこは不思議な空間。
 神社と寺──そのふたつが、背中合わせに佇む場。
 

 
「オヤジ、10隻くれ」
 一軒の屋台

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月待ちの宵〜花の章〜

月待ちの宵〜花の章〜

 
 
 
~月待ちの宵花~
 
 
 
「……ここは……?」

 男は辺りを見回した。

 気がついたら、知らぬ場所に立っていたのだ。一面、美しい花が咲き乱れている、この場所に。

 例えるなら『楽園』か、それとも──。

「……極楽……?ここはあの世なのか?とうとう私は死んだのだろうか……?」

 それにしては花畑以外に何もない。誰もいない。ただ、こんなに近くに、と思うほどに大きな月だけが見下

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月待ちの宵〜草(くさ)の章〜

月待ちの宵〜草(くさ)の章〜

 
 
 
~月待ちの宵草~
 
 
 
「……ここは……?」

 女は気づくと、宵の草原(くさはら)に立っていた。

 見上げるまでもなく、目の前には見事な月。こんなに大きく、美しい月は見たことがない、と思うほどに。むしろ紛い物ではないか、と疑うほどに。

「……何で私、こんなところへ……」

 自宅の部屋で、ついさっきまで亡くなった夫を偲んでいたはずなのに、と思いながら首を傾げる。

「……こ

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