マガジンのカバー画像

My Mythology ~新話de神話~

249
神話部投稿自分用倉庫。  ☆note神話部〖公式マガジン〗→ https://note.com/lentoy/m/me5e64a3aa3f1  ☆note神話部〖目次〗→ ◉部活… もっと読む
運営しているクリエイター

2020年11月の記事一覧

〘異聞・阿修羅王/結3〙須彌山

〘異聞・阿修羅王/結3〙須彌山

 
 
 
 切っ先を突き付けた摩伽(まか)と、突き付けられた須羅(しゅり)は、微動だにせず、ただ睨み合った。

「フッ……このおれに教えてやるなどと、相変わらず口の利き方を知らぬ奴よ」

 須羅の方は笑みさえ浮かべており、本当の意味で『睨み合って』いる訳ではない。だが、場の空気としては間違ってもいない。

「……良かろう。おれも乾闥婆(けんだっぱ)に免じて、聞いてやるとしよう」

 譲歩の姿勢を

もっとみる
〘異聞・阿修羅王/結2〙隠し事

〘異聞・阿修羅王/結2〙隠し事

 
 
 
 つい、と演舞の型のように、須羅(しゅり)は爪先を摩伽(まか)に向けた。

「お前にもわかっておろう? この須彌山(しゅみせん)に限界が来ていることは……」

 摩伽の片眉が反応する。

「限界が来ているから破壊し、消し去れと言うか……? そのようなことを言うておったら、何もかもを、そうせねばならぬではないか」

「壊れたものは直す、出来なくば新たに作る、人と違い、肉体が劣化すれば代替

もっとみる
〘異聞・阿修羅王/結1〙真の力

〘異聞・阿修羅王/結1〙真の力

※異聞・阿修羅王32 の次話ですが、時系列的には 序1・序2 の続きになります。
 

◼⿴⿻⿸◼⿴⿻⿸◼◼⿴⿻⿸◼⿴⿻⿸◼

 
 
 右手に持つは日を司る日輪刀。

 左手に持つは月を司る月光刀。

 左右に腕を大きく広げた阿修羅王──須羅(しゅり)独特の構え。

 その不思議なまでの美しさ、艶やかさに、これまで幾度となく見て来たインドラ──摩伽(まか)でさえ、思わず心の中で唸った。同時に、今

もっとみる
〘異聞・阿修羅王32〙夢の続き

〘異聞・阿修羅王32〙夢の続き

 
 
 
 寝所を出たインドラは、何かに導かれるように謁見の間に向かっていた。

「む……?」

 入り口に佇む影を認める。

「……乾闥婆(けんだっぱ)か……?」

「……インドラ様……!?」

 呼びかけられ、乾闥婆の方が驚きに目を見張った。

「如何した? 今時分にこのようなところで……」

「インドラ様こそ……」

 控えた乾闥婆を見下ろしたものの、すぐに視線を謁見の間に移す。

「……

もっとみる
☆note神話部☆~目次~☆

☆note神話部☆~目次~☆

(2021年10月25日最終更新/更新休止中)

※現在、こちらの目次は更新休止中です。
 ↓こちらの目次をご覧ください。↓
〖新・神話部目次〗
 ✭部活動の記録

 ✬個人活動の記録

【要項/お知らせ/業務連絡】◎部長 矢口れんと (2019年12月発足)
 神話部マガジン へッダー用画像

《神話部からのお知らせ》
※参加してくださる方はご一読願います。
 創部 参加要項・注意事項
 ◉no

もっとみる
〘異聞・阿修羅王31〙乾闥婆王と阿修羅王

〘異聞・阿修羅王31〙乾闥婆王と阿修羅王

 
 
 
 躊躇うように、乾闥婆(けんだっぱ)が視線を落とした。

「……お主、申していたな。自分では雅楽(がら)に平穏な幸せをやれぬ、と……。私はあの時、それは謙遜か、もしくは、雅楽との婚儀を断る口実と思うておった。だが、今、この時に臨んで思うは……お主、あの時、既にこうなることを識っておったのだな……?」

 阿修羅は答えなかった。

「……お主は、一体、何を負うている……?」

 再び視線

もっとみる
〘異聞・阿修羅王30〙雅楽

〘異聞・阿修羅王30〙雅楽

 
 
 
 月が翳った刻。

「…………!」

 暗闇の中で、突然インドラは目を開けた。

 天井を凝視した眼(まなこ)が、何かを確認するように、様子を窺うように、やがてゆっくりと四方を巡り出す。

「…………」

 しばらくすると、舎脂(しゃし)を起こさぬよう、そっと腕を離し、静かに寝台から立ち上がった。

「……何ぞ、ございましたか……?」

 振り向くと、半身を起こした舎脂が不安気な表情を

もっとみる
〘異聞・阿修羅王29〙月翳

〘異聞・阿修羅王29〙月翳

 
 
 
 誰にも知られることのない地に、阿修羅たちはひっそりといた。

 潜んでいるとは言え、無論、ただじっとしている訳ではなく、一族を挙げて須彌山や人界に目を配り、魔族や災に目を光らせている。見知った者と顔を合わせないよう、神出鬼没を貫いているだけなのだ。

「王……戻りましてございます」

「ご苦労だった。問題はなかったか?」

 見回りから戻った羅刹(らせつ)に頷き、経過を訊ねる。

もっとみる
〘異聞・阿修羅王28〙予見2

〘異聞・阿修羅王28〙予見2

 
 
 
 その日、インドラに呼ばれた毘沙門天(びしゃもんてん)は、ひとり善見城(ぜんけんじょう)を訪れた。

 今まで以上に、魔族の穴の出現に注意すること、増えている地鳴りで人界に大きな被害が生じぬよう気を配ること、などを命じられ、退室した時である。

「……多聞(たもん)様……?」

 普段、呼ばれることのない名で呼ばれ、毘沙門天の足が止まった。振り返ったそこには、驚いた顔の舎脂(しゃし)が

もっとみる