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2020年11月の記事一覧
〘異聞・阿修羅王/結3〙須彌山
切っ先を突き付けた摩伽(まか)と、突き付けられた須羅(しゅり)は、微動だにせず、ただ睨み合った。
「フッ……このおれに教えてやるなどと、相変わらず口の利き方を知らぬ奴よ」
須羅の方は笑みさえ浮かべており、本当の意味で『睨み合って』いる訳ではない。だが、場の空気としては間違ってもいない。
「……良かろう。おれも乾闥婆(けんだっぱ)に免じて、聞いてやるとしよう」
譲歩の姿勢を
〘異聞・阿修羅王/結2〙隠し事
つい、と演舞の型のように、須羅(しゅり)は爪先を摩伽(まか)に向けた。
「お前にもわかっておろう? この須彌山(しゅみせん)に限界が来ていることは……」
摩伽の片眉が反応する。
「限界が来ているから破壊し、消し去れと言うか……? そのようなことを言うておったら、何もかもを、そうせねばならぬではないか」
「壊れたものは直す、出来なくば新たに作る、人と違い、肉体が劣化すれば代替
〘異聞・阿修羅王/結1〙真の力
※異聞・阿修羅王32 の次話ですが、時系列的には 序1・序2 の続きになります。
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右手に持つは日を司る日輪刀。
左手に持つは月を司る月光刀。
左右に腕を大きく広げた阿修羅王──須羅(しゅり)独特の構え。
その不思議なまでの美しさ、艶やかさに、これまで幾度となく見て来たインドラ──摩伽(まか)でさえ、思わず心の中で唸った。同時に、今
〘異聞・阿修羅王32〙夢の続き
寝所を出たインドラは、何かに導かれるように謁見の間に向かっていた。
「む……?」
入り口に佇む影を認める。
「……乾闥婆(けんだっぱ)か……?」
「……インドラ様……!?」
呼びかけられ、乾闥婆の方が驚きに目を見張った。
「如何した? 今時分にこのようなところで……」
「インドラ様こそ……」
控えた乾闥婆を見下ろしたものの、すぐに視線を謁見の間に移す。
「……
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(2021年10月25日最終更新/更新休止中)
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〘異聞・阿修羅王31〙乾闥婆王と阿修羅王
躊躇うように、乾闥婆(けんだっぱ)が視線を落とした。
「……お主、申していたな。自分では雅楽(がら)に平穏な幸せをやれぬ、と……。私はあの時、それは謙遜か、もしくは、雅楽との婚儀を断る口実と思うておった。だが、今、この時に臨んで思うは……お主、あの時、既にこうなることを識っておったのだな……?」
阿修羅は答えなかった。
「……お主は、一体、何を負うている……?」
再び視線
〘異聞・阿修羅王30〙雅楽
月が翳った刻。
「…………!」
暗闇の中で、突然インドラは目を開けた。
天井を凝視した眼(まなこ)が、何かを確認するように、様子を窺うように、やがてゆっくりと四方を巡り出す。
「…………」
しばらくすると、舎脂(しゃし)を起こさぬよう、そっと腕を離し、静かに寝台から立ち上がった。
「……何ぞ、ございましたか……?」
振り向くと、半身を起こした舎脂が不安気な表情を
〘異聞・阿修羅王29〙月翳
誰にも知られることのない地に、阿修羅たちはひっそりといた。
潜んでいるとは言え、無論、ただじっとしている訳ではなく、一族を挙げて須彌山や人界に目を配り、魔族や災に目を光らせている。見知った者と顔を合わせないよう、神出鬼没を貫いているだけなのだ。
「王……戻りましてございます」
「ご苦労だった。問題はなかったか?」
見回りから戻った羅刹(らせつ)に頷き、経過を訊ねる。
「
〘異聞・阿修羅王28〙予見2
その日、インドラに呼ばれた毘沙門天(びしゃもんてん)は、ひとり善見城(ぜんけんじょう)を訪れた。
今まで以上に、魔族の穴の出現に注意すること、増えている地鳴りで人界に大きな被害が生じぬよう気を配ること、などを命じられ、退室した時である。
「……多聞(たもん)様……?」
普段、呼ばれることのない名で呼ばれ、毘沙門天の足が止まった。振り返ったそこには、驚いた顔の舎脂(しゃし)が