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空中庭園幻想の行方・世界の塔と地球外建築

大阪の梅田スカイビル。
夜行バスで着いたのは、ちょうどそこ。

予定まで時間があったので、なんとなく空中庭園という名前の展望台に行ってみた。

そこが、想像以上でした。

ぱっと見はデートスポットアピールばかり、ハート型の南京錠だの、ふたりの名前を「永遠に」プレスした金属製プレートだの安っぽい演出がそこかしこにあるんだけど、本質はそこではない。

展望台は非常にコンパクトで、屋外にも出られる。
シースルーエレベーターや、鉄骨感が素敵なエスカレーターハブーブ(アラビア語でスーダンの砂塵嵐という意味らしい)というアプローチも面白い。
入館料大人800円。

しかし、一番素敵なのは、常設展示パネルと思しき「空中庭園幻想の行方・世界の塔と地球外建築」です。

世界の塔、各地にあるタワーや古代遺跡に建築計画のみで頓挫したものまで、詩的なタイトルとともに写真パネルがぐるりと円形の展望台の内側に貼られている。

タージマハル、エンパイアステートビル、サクラダファミリア、第三インターナショナル記念塔…

それぞれ「空の○○」みたいなタイトルがあり、空の階段とか空の祭りとか空の坂道とか、ふわふわしてくる。

後ろの方は、突然地球外建築計画になる。

宇宙へでて、月へ行く。

円形の宇宙ステーションを浮かべ、そこを中継基地に月へ行く計画のブループリントが、10枚ほどのパネルで展開される。

そもそも、この空中庭園はその円形宇宙ステーションを模しているらしい。

22年前の最も進んだ宇宙科学への夢。
それはそのまま時を止め、実際の宇宙科学はまた違う形になっていき、地球の我々は22年前には想像もしなかったスマホを片手にそれを見る。

それは、ゆるやかにゆるやかに廃墟になっていくような時間のながれを無言で伝えてくる。

デートスポットに、記念撮影に、と一生懸命に入館料を稼ぐための施策とはうらはらの優しい衰退。

いずれ廃墟になる予感。

それこそが、この「空中庭園幻想の行方・世界の塔と地球外建築」という常設展示が伝えてくる美しいノスタルジアだ。

最後のパネルはこれだ。
空の都市。
希望と想像力を持って生きよう!

当時世界でも類を見ない建築であった梅田スカイビルの空中庭園の誇り高い訓示。
我々がそれをこの空中庭園でもって体現したように、若者よ、君等はその先の地球外建築まで成し遂げよ。希望と想像力を持って!
この建築物に関わった人たちのスピリットがエーテルのように昇り立つささやかな展示。

おもわぬ不思議空間を体験できる空中庭園。

時期的に下の広場に盆踊りの舞台が組まれていて、下から円形の展望台を臨むと変な気分になった。
一緒に見た友人が「UFOでも呼びそうな盆踊りだな」とつぶやいていた。


ああ、あと笑えたのが、トイレの外国人向け注意表示が、大変アクロバティックだったこと。

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つよく生きていきたい。