お金の使い方

久々に「この人、お金の使い方わかってる…」と感嘆した記事を読みました。

従業員を解雇せず、助成金も使わず、震災前の2倍の売り上げを実現! 南三陸の「アストロ・テック」に見た、地方の町工場の底力 |
 greenz.jp http://greenz.jp/2015/10/02/loom/

助成金をいれない。それどころか、「時間がかかると思うけど機材は購入させてほしい」とタダで機材を手配した人に頼むという、それだけ聞いたら何を言っているのかわからない話。
しかも、大災害のあとで、被害の甚大な地域で、多分私は簡単に想像ができない絶望感というか、とんでもない状況にある立場で。

精密機械を作っていた会社がアパレルに転向するというだけでも大決断だけど、そこでも自社の力を存分に発揮してクオリティの高いものを作ってしまうくだりだけでもすごいのだけど、お金が人に与える影響というものをすごくよく分かっていて、お金より仕事を大切にしているブレのなさがすごい。
ただ仕事がしたかった、1000円でも2000円でも稼ぎたかったっていうのが、それだけひどい状況の中にあって正しく動いているのが、まさに敬服という以外言葉がない。

もし自分がひどい目にあって、誰かが助けてくれようとする。
その時、心がねじれてしまったら、その手助けを拒んだり、あるいはそこからむしり取ってやろうと思ったりする。だって助けてやろうという人たちは何も困らずのうのうと暮らしているんだから。……そう思う人がいたとしても当然だと思う。
事実そういう人も山ほどいたと思う。
復興のためのお金がどう流れているのか、疑念の目で見ている人たちは、つまりそういうねじれた考え方を自らもする可能性があるからこそそういう思いで見ていると思う。
それに実際ずいぶんお金は変な方向へ飛び散っている事を聞いたりもする。

そんな中で、毅然と自分でお金を負担して立ち直る人は、やはりその前からずっとそういう生き方をして、そういう知恵や体験を積み重ねてきたのだと思う。

以前書いた「エクストリーム起業とお金の話2 人の金に頼るとあなたは弱る」で、他人のお金に頼ると自分の力を失い、自分の力を失ったらどれだけいいビジネスを作っても他人にいいように転がされる事になるというようなことを書いた。私を買おうとした男のはなしだ。

お金は、心の動きを縛る。
それが良い意味で使えるのが、この会社の人だ。
自腹で買った機械だから、使う時も丁寧に扱うし、メンテナンスもしっかりやる。人からもらったものだとどうしても手を抜いてしまう。その抜いた手の分だけ仕事のクオリティは下がる。
それをはっきり理解して、すごく大変な時期であっても「買う」と言える。
これはもう、一流の仕事人にしかない覚悟というか、姿勢なんだろうなと。

これを参考にする事は出来ても、実際自分が津波にさらわれた跡地でそれができるかと言ったら、どうだろうか。
できないかもしれない。そんなこと、考えられないかもしれない。

お金を払う事でより多くを得る事が出来る人が時々いるという。
それって、この人の事なんだろうなと。

そのより多くを得るというのは、単純に金銭的な事なのかと思っていたけれど、そうじゃなくて、もっといい仕事ができるようになるとか、それによって人間の尊厳が保たれるとか、そのおまけでお金もちゃんと入ってくるとか、そういう流れになっていて、ほんとにもう真似できない立派な姿勢で、少しでもその気概と覚悟と姿勢を真似たいと思いました。

もともとこのままではいけないという意識が震災前からあったという事も、きっと大きな支えになっていたのかもしれない。
ずっと問題を抱え続けて、その解決の糸口をずっと探し続けているという事は、最悪な事態でひとつのツールをくれる事があるという可能性も示唆しているような気がする。

よくピンチはチャンスというけれど、私はその言い回しがあまり好きじゃない。ピンチはピンチだ、間違えるな!
でも唯一、ほんのわずか、そのピンチをチャンスにする事が出来る人がいるとしたら、この「常に問題意識を抱えてその解決法をそこはかとなく探し続けている人」なのかもしれない。
常に問題意識を持つというのは、相当精神的にストレスに強くないとやっていけない。常に悩んでいる人を前向きに評価してくれる人も正直少ない。特にうまくいっているときほど「なんでそんな嫌な事考えているの」と言われる。新しいチャレンジをしようとすると、いまうまくいっているのになぜ問題を増やすの、と言われる。
そんな状態に耐えられる人はそんなに多くない。

でもそういう人が、ピンチをすかさずチャンスにひっくり返す。
そして小さな額のお金や、お金にまつわる苦労も、自分たちの力にしてしまう。

マイナスこそが力になり、仕事の力を高める事が最終的にお金を生み出す。
お金が最終地点ではなく、通過点でしかない。
そして、ちゃんとその人はゴールにいくのだろう。

すごいなあ。見習うってレベルじゃない、この態度を少しでもマネできたら。

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